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出版許諾契約において発行部数の限定があったか否かが争われた事例
「『とんぼの本』日本民家の写真と紀行文出版許諾契約事件」
平成131130日東京地方裁判所(平成12()15312 

 原告と被告らの本件出版許諾契約において,出版部数について4000部に限定するとの合意はされていなかったと認定するのが相当である。その理由は次のとおりである。
 
原告とB(管理人注:被告日本アート・センターの編集担当者)とは本件出版許諾契約締結に至るまでに,2回面談をしているが,その面談の際に,本件写真の使用料については,十分に協議されていたにもかかわらず,発行部数の制限に関しては,全く協議されていなかった。また,被告日本アート・センターが本件出版許諾契約を締結するに当たって作成し,原告に交付した本件覚書には,原告著作物の使用料についての記載はあるが,本件書籍の発行部数についての記載は一切なかった
 
ところで,@被告新潮社は,「とんぼの本」のシリーズの一つとして,本件書籍の出版を企画したものであり,被告らにとって,本件書籍の発行部数に制限を付するか否かは重要な事項であるといって差し支えないこと,A本件出版許諾契約において,被告日本アート・センターの原告に対する本件著作物の使用料(最終的には合計1646500円)が,所定の発行部数に対するものであるか否かについても,同被告にとって極めて重要な事項であるといえることに照らすと,仮に,本件出版許諾契約において,原告の許諾した発行部数に限定が付されていた場合には,必ず,本件覚書やその他の書面に,その旨を記載するのが自然であるにもかかわらず,本件出版許諾契約においては,そのようなことは行われていない
 
被告新潮社と被告日本アート・センターとの間で締結された本件編集委託契約においては,被告新潮社は被告日本アート・センターに対し,本件書籍の編集業務費用として,本件書籍の発行部数を限定せずに,一定の金額を支払うこと,被告日本アート・センターは,原告に対して支払うべき原告著作物の使用料を被告新潮社から受領した編集業務費用から捻出することが明示的に記載されている。
 
したがって,被告新潮社と被告日本アート・センターとの間の上記契約締結後に,被告日本アート・センターと原告との間で,発行部数を4000部に限定した契約が締結されるということは不自然であるし,また,被告日本アート・センターが原告との間で,本件出版許諾契約において,被告日本アート・センターが原告に支払うことを約した使用料1646500円が本件書籍の4000部に対する対価であると解することも不合理である。
 
原告は本件書籍の出版後,Bに対して,増刷に備えて訂正箇所を通知しているのであるから,原告自身も増刷を前提としていたものと認められ,したがって,本件出版許諾契約において,発行部数に制限が付されていたものと解するのは不自然である。
 これに対して,原告は,本件出版許諾契約を締結した平成8924日に,Bに対して,本件書籍の発行部数を尋ねたところ,Bから4000部くらいである旨の回答を得た旨主張し,証拠には,上記主張に沿う部分も存する。
 
しかし,上記認定のとおり,原告とBとは本件出版許諾契約締結に至るまでに,2回にわたり面談をしているが,その面談の際には,本件写真の使用料についての具体的な金額が出ていたにもかかわらず,発行部数についての話題は一切されていないという経緯に照らすならば,契約締結の当日に,上記のような会話がされたからといって(その趣旨は必ずしも明らかでない。),既に合意されていた原告著作物の使用料が4000部に対するものに限定されたと解することはできない。この点の原告の主張は採用できない。
 
以上のとおり,本件出版許諾契約は,原告が,被告日本アート・センターから,原告著作物の使用料として,所定の金額(1646500円)の支払を受けることにより,被告新潮社に対して原告著作物を使用した書籍を、部数の限定なしに出版することを許諾するというものである。したがって,被告新潮社が原告著作物を使用して出版できる本件書籍の部数に制限が付されていたと解することはできない。











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