著作権重要判例要旨[トップに戻る]







モジュール管理ファイルの改変の翻案性が問題となった事例
「三次元作図ソフト無断改変事件」
平成190316日東京地方裁判所(平成17()23419 

【コメント】本件においては、次のような前提事実がありました。

「本件ソフトウェア」は、三次元な作図等に関する数多くのモジュールと、使用許諾されたモジュールを管理する「本件Dllファイル」とから成る。

本件ソフトウェアは、いくつかのモジュールをパッケージとした標準構成パッケージ製品の形で、又は個別に購入可能な各モジュールの形で販売されている(すべてのモジュールが使用可能な標準構成パッケージ製品はない)。

本件ソフトウェアは、その全体が各コンピュータのハードディスクにインストールされるが、本件ソフトウェアを使用するためには、複数のアルファベット又は数字から成るライセンスキーが必要であり、フローティング型の契約の場合、使用する複数のコンピュータを管理するサーバに当該ライセンスキーを入力することにより、使用許諾されたモジュール及び使用環境等が設定される。具体的には、本件Dllファイルは、本件ソフトウェアが使用される前に、毎回、License Use Managementと呼ばれるプログラム(LUMプログラム」)で設定されている使用許諾に関する情報を確認し、それを基に、許諾された範囲内でモジュールを使用可能にし、その使用環境を設定する機能を有している。

被告従業員は、所定のコンピュータにインストールされている本件ソフトウェアにつき、所定の改変方法により、本件Dllファイルを改変した(「本件改変行為」)。その結果、11台の各コンピュータで、すべてのモジュールを使用できるようになり、さらに、本件ソフトウェアを同時に使用できる状態となった。 


 [翻案権侵害該当性]
 
前提事実のとおり,本件ソフトウェアは,三次元な作図等に関する数多くのモジュールと,使用許諾されたモジュールを管理する本件Dllファイルとから成り,本件ソフトウェア中の本件Dllファイルが毎回LUMプログラムで設定されている使用許諾に関する情報を確認し,それを基に,許諾された範囲内でモジュールを使用可能にし,その使用環境を設定する機能を有していたところ,本件ソフトウェア中の本件Dllファイルにつき別紙改変方法に記載した方法により改変をした本件改変行為により,本件改変行為がされた11台の各コンピュータですべてのモジュールを使用でき,かつ,本件ソフトウェアを同時に使用できるようになったものであるから,本件改変行為は,本件ソフトウェア全体に対する翻案権侵害に当たると認められる。
 
[被告の主張に対する判断]
 
被告は,モジュールの管理・制限態様は,有か無かという二者択一であり,このような態様を変更する本件改変行為は,本件ソフトウェアの本質的特徴を根幹から変更するものとなるから,原著作物との同一性維持を要件とする翻案権の保護は及ばない旨主張する。
 
しかしながら,本件ソフトウェアは,本件改変行為の前後で,本件Dllファイルを除く数多くのモジュールの部分で共通であり,本件改変行為後も本件ソフトウェアの表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が本件ソフトウェアの表現上の本質的な特徴を直接感得することができると認められるから,被告の上記主張は理由がない。
 
(略)
 
被告は,本件改変行為は,本件D11ファイルのみに限定して改変を加えることによって,本件ソフトウェア自体の創作性に何ら変更を加えずそのまま使用することに意味が認められるものであり,単に新たな部分を追加しただけのものであるから,翻案には当たらない旨主張する。
 
しかしながら,著作物の一部に変更を加えることによって,当該変更部分だけの複製権侵害となるだけでなく,著作物全体の翻案権侵害となることがある。しかも,そのまま使用することに意味が認められるといっても,本件ソフトウェアは,前記のとおり,使用が制限された状態から使用が制限されない状態になったものであるから,実質的に見れば,その創作性に変更がないものとはいえない。したがって,本件改変行為は翻案権侵害に当たるものといわざるを得ず,被告の上記主張は理由がない。
 
被告は,多くのモジュールを1つのソフトウェアに収載し,かつ,これらのモジュールを顧客のニーズに応じて制限して販売するという全体的なソフトウェアの構造は,単にプログラムの構成方法の一類型にすぎず,表現に当たらないとか,このようなプログラムの構成方法及び製品の使用につき顧客が受ける許諾の内容に応じ制限して販売する手法は,広く一般的に行われている独自性のないもので,表現上の創作性があるとはいえないとか,モジュールを原告の意図に従って制限的に利用可能な環境についても,プログラムが表象する環境のうちの一類型を指摘するものにすぎないから,事実ないしアイデアにすぎない旨主張する。
 
確かに,製品設計や開発という1つの目的に利用可能な非常に多くのモジュールを1つのソフトウェアに収載し,かつ,これらのモジュールを顧客のニーズに応じて制限して販売するレベルで捉えれば,そのこと自体はアイデアにすぎないが,原告は,そのアイデアを具体化し,本件ソフトウェアを構成したものであるから,そのように具体化されたものを保護しても,著作権法では保護されないアイデア等を保護することにはならないから,被告の上記主張も,採用することができない。
 
[まとめ]
 
よって,本件改変行為は,本件ソフトウェア全体の翻案権侵害に該当するから,著作権法1121項及び2項に基づく請求第1項及び第2項の差止請求及び廃棄請求は理由があり,さらに,被告は,民法7151項により,本件改変行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。
 
[他の法律構成の可能性について]
 
なお,以上のとおり,本件ソフトウェア全体についての翻案権侵害が成立するが,本件ソフトウェアを構成する各モジュールを基準に考えれば,本件改変行為により,本件ソフトウェア中の使用許諾を受けていないモジュールにつき,ハードディスクへの複製行為があったと考えることも可能である。
 
すなわち,前提事実のとおり,本件ソフトウェアは,その全体が各コンピュータのハードディスクにインストールされるが,それは,飽くまで本件Dllファイル及びLUMプログラムにより使用が制限された状態でインストールされていたにずぎなかったところ,前提事実のとおり,本件改変行為により,使用許諾されていないモジュールは,使用が制限されない状態で各コンピュータのハードディスク内に存在することになったものである。
 
これを実質的に観察すれば,使用が制限された状態でインストールされていたモジュールをアンインストールし,使用が制限されない状態のモジュールを新たにコンピュータのハードディスクにインストールしたことと同視することができるから,本件改変行為により,本件ソフトウェア中の使用許諾を受けていないモジュールにつき,ハードディスクへの複製行為があったと考えることができる











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