著作権重要判例要旨[トップに戻る]







土地宝典の著作物性
「土地宝典事件」
平成200131日東京地方裁判所(平成17()16218 

 [地図の著作物性について]
 
本件土地宝典は,地図の一種であると解されるので,まず,地図の著作物性について検討する。
 
一般に,地図は,地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号によって,客観的に表現するものであるから,個性的表現の余地が少なく,文学,音楽,造形美術上の著作に比して,著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例である。しかし,地図において記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては,地図作成者の個性,学識,経験等が重要な役割を果たし得るものであるから,なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そこで,地図の著作物性は,記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して,判断すべきものである。
 
[本件土地宝典の著作物性について]
 
本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に沿って作成されるものであり,次のような特徴を備えている。
 
本件土地宝典は,公図を主要な素材の一つとするものではあるものの,地域の特徴に応じて,隣接する複数の公図を選択した上でこれらを接合して一葉内に収録し,より広範囲の地図として一覧性を高めて公図に記載された情報を表示するものであり,そのため,素材とされた公図の縮尺を変更し,また,複数の公図を接合する際に,公図上の誤情報があれば,必要な補正を施して,これを接合している。
 
(略)
 
本件土地宝典においては,素材とされた複数の公図が単に接合されているにとどまらず,公図記載の情報のうち,道路,水路,河川など公有地で民間取引の対象外となる土地やJRの鉄道敷地などについては,公図上の土地境界情報を記載せずに,白色ないし黒色等で一体的に連続して表示されている。また,本件土地宝典においては,地目や地積など登記簿に記載された情報の一部が取捨選択されて,地番についてはアラビア数字横書きで,地積については漢数字縦書きで,地目については独自の記号で表示されている。さらに,公共施設の位置情報など不動産物件調査の便に資する情報も適宜追加されて記載されている。
 
(略)
 
以上によれば,本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に従って,地域の特徴に応じて複数の公図を選択して接合し,広範囲の地図として一覧性を高め,接合の際に,公図上の誤情報について必要な補正を行って工夫を凝らし,また,記載すべき公図情報の取捨選択が行われ,現況に合わせて,公図上は単に分筆された土地として表示されている複数の土地をそれぞれ道路,水路,線路等としてわかりやすく表示し,さらに,各公共施設の所在情報や,各土地の不動産登記簿情報である地積や地目情報を追加表示をし,さらにまた,これらの情報の表現方法にも工夫が施されていると認められるから,その著作物性を肯定することができる
 
これに対して,被告は,次のように反論する。しかし,これらの主張はいずれも理由がない。
 
被告は,公図をまとめ,地目,地積等を表示するという形式は,明治初期に刊行された土地宝典において既に採用されており,本件土地宝典はその模倣ないし亜流にすぎないから,公図の二次的著作物といえるだけの創作性は認められないと主張する。
 
しかし,被告が本件土地宝典に先立って発行された土地宝典と本件土地宝典とで同一である旨指摘する点は,抽象的な編集方法ないし編集方針(アイディア)の共通性にすぎないというべきである。特定の地域を対象とする本件土地宝典とその余の土地宝典とで,その対象とする地域が異なる限り,そもそも地図の対象となる素材が異なるのであるから,抽象的な編集方法ないし編集方針が共通していたとしても,これにより本件土地宝典の創作性が否定されるものではない。…
 
(略)
 
被告は,本件土地宝典は,地目,地積等の情報は付加されているものの,その資料としての価値の大部分は,法務局備付けの公図をそのまま縮小した点にあり,したがって,本件土地宝典が,公図を接合し,各種情報を付加して作成されていても,それは,公図を変形,翻案して新たな地図として創作されたというまでには至っていないというべきであり,本件土地宝典は公図の二次的著作物とは認められない,と主張する。
 
しかし,本件土地宝典は,上記のとおり,複数の公図を選択し,これを接合してより広範囲の地図とし,その際に公図上の誤情報を補正したり,また,公図情報に加え,道路,水路,鉄道などの現況情報,公共施設の所在情報,地積,地目表示などの不動産登記簿情報を付加して作成されたものであり,不動産取引の前提となる物件調査に必要な民有地の情報を優先して取捨選択して表示したものである。そして,土地宝典といっても,その作成者により,その情報の取捨選択や表示方法に個性が存在することは前記のとおりであるから,本件土地宝典を公図の二次的著作物として保護すべきである。被告の主張は採用することができない。











相談してみる

ホームに戻る