著作権重要判例要旨[トップに戻る]







出版者の注意義務(4)
「浮世絵春画デジタルワーク・出版事件」平成130920日東京地方裁判所(平成11()24998/平成141210日東京高等裁判所(平成13()5284 

【コメント】本件は、原告が、原告の作成に係る「ペーパーレイアウト」(浮世絵及び解説文の配列について記載したもの)に基づいて作成された浮世絵春画をデジタルワーク処理した写真及び解説文「浮世絵春画一千年史」(「本件著作物」、これが現実に出版された物が「本件出版物」)につき、被告両会社と出版契約を結び、被告次郎に収録写真のデジタルワーク処理を担当させたところ、被告ら3名が無断で本件著作物を改変したなどと主張して、上記被告らに対し、損害賠償等を求めた事案です。 

【原審】

 被告両会社は,被告次郎が原告に無断で本件著作物の改変を行ったことにつき,当初において同被告が改変を行うことに無権限で承諾を与え,改変後においても改変の事実をあえて原告に知らせることのないまま本件出版物を刊行したのであるから,被告次郎と共に共同不法行為者として,上記侵害行為により原告の被った精神的苦痛につき,責任を負うものというべきである。
 
この点に関し,被告両会社は,原告との間の合意によれば,本件出版物については印刷前の工程までのすべてを,原告のいう「甲野ブラザース」(原告及び被告次郎)が責任を持って行うことになっていたもので,本件出版物は,原告との間の上記合意に基づき,被告次郎のデジタル製版作業により編集制作されたものをそのまま出版したものであるから,被告両会社に責任はないと主張する。
 
しかしながら,本件出版物は,原告の単独著作物として企画され,上記認定のように,出版直前の平成113月になった段階でも,原告の単独著作物として出版契約書が取り交わされているのであり,被告両会社は,当然に同書が原告の単独著作物となるべきことを認識していた。そして,被告次郎が本件出版物を共同著作物のような体裁にしたい旨を言い出したのが,報酬の増額の件で紛争を生じた平成10年の12月ころからであることも被告両会社は認識していたのであるから,被告両会社は,遅くともカラーカンプを見た時点で,本件出版物が原告の作成したペーパーレイアウトの内容と異なっていることを認識していたものというべきである。したがって,このことを原告に確認することは,出版社としての職務というべきである。さらに,印刷に入る前に,その段階の版と,元の原稿に相違がないかどうかを確認すべきことは,出版社として当然のことであり,このことはどのような編集技術を用いるかにかかわらない。実際,本件においても,被告人類文化社は,文章部分の校正を行っているし,被告次郎の作業が終わってからは,被告人類文化社においてペーパーレイアウトを保管しているもので,かつ,被告次郎の下で刷り上がったカラーカンプを見ており,これとペーパーレイアウトを対照して,相違のある点を認識していたのであるから,単に被告次郎の下ででき上がったものを印刷すればよいのではなく,出版社として原稿と版の点検をすべきことは当然の責務として認識していたものと認められる。したがって,上記主張は単に責任逃れのためにする弁解といわざるを得ず,採用することができない。

【控訴審】

 
控訴人らは,本件出版物についての出版契約上,控訴人らは,印刷用CDRに基づき印刷,製本を行うだけで,それ以前の編集,色校については何らの義務も負わないから,原審被告Bが被控訴人の意思に反して本件ペーパーレイアウトを改変した内容の印刷用CDRを作成したとしても,そのことについて,控訴人らには何らの責任もない,と主張する。
 
しかしながら,前記引用に係る本件の事実関係についての原判決の認定のとおり,本件において,控訴人人類文化社の担当社員であるYは,原審被告Bから報酬の増額要求が入れられなければ仕事を辞めると告げられたことから,同人をなだめるため,被控訴人に無断で,原審被告Bにおいて本件出版物のレイアウトを自由にやってよい,一切を任せる旨を告げ,控訴人人類文化社の代表者のXもこのことを了承したこと,Y及びXは,原審被告Bが作成した印刷用CDRを市販のプリンターで印刷したカラーカンプを見て,その中に本件ペーパーレイアウトどおりでなく,原審被告Bが自分の判断で改変した部分があることを知ったことが認められるのであり,このような事実関係の下では,改変の事実を被控訴人に知らせるべき注意義務があったというべきである。控訴人らは,上記改変の事実を知りながら,故意にその事実を被控訴人に告げないままにしたのであるから,共同不法行為により被控訴人の著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害したものというべきである。











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