著作権重要判例要旨[トップに戻る]







出版者の注意義務(6)
「資格試験参考書籍表紙イラスト事件」平成160625日東京地方裁判所(平成15()4779 

【コメント】原告は、原告各イラストにつき、著作者として著作権を有し、一方、被告本間デザインは、被告各イラストを製作し、被告LECは、被告各イラストのいずれかを本件各書籍の表紙及び表紙カバーに使用して、本件各書籍を発行していました。本件において、原告は、被告各イラストが原告各イラストの複製物ないし翻案物であるとして、著作権ないし著作者人格権に基づき、被告らに対し、損害賠償金の支払い等を求めました。

 上記における認定事実によれば,被告LECは,被告各イラスト製作当時,被告各イラストが原告各イラストの著作権ないし著作者人格権を侵害するものであることを具体的に認識していたとは認められない。
 
しかしながら,被告LECは,書籍の編集,出版等を業としている株式会社であり,その編集,出版する書籍が他人の著作権や著作者人格権を侵害することのないよう注意を払う義務を負うものである。すなわち,書籍の編集,出版等に携わる者としては,自らが編集ないし出版等を行う著作物について,当該著作物が自らが著作した物であるか,あるいは既に著作権の保護期間の満了したことが明らかな歴史的著作物であるような場合を除き,第三者の著作権ないし著作者人格権を侵害する物に該当しないことを確認する義務を負うものというべきである。
 
本件において,原告各イラストが,受験用参考書の表紙カバーや大学生協ないし企業のポスター等に使用されていたこと,被告LECは,コンペを実施して被告本間デザインの提案するイラストを採用するか否か決定する立場にあったものであり,被告本間デザインに対し,イラストの製作について参考にした資料の提出を求める等必要な調査を行い得る立場にあったことに照らせば,被告LECにおいて注意義務を尽くせば,被告イラスト1と原告各イラストとの類似性について認識し得たものというべきである。
 
ところが,被告LECは,被告各イラスト製作について,被告本間デザインに対し,コンペ出品の条件としてレンタルポジは不可,著作権フリーのものは可,との条件を告げたに留まり,被告各イラストを書籍に使用するにあたって,第三者の著作権や著作者人格権を侵害することのないように注意を払ったことを窺わせる事実は一切認められない。
 
この点,被告LECは,美術の著作権について素人なのであるから,専門家である被告本間デザインに製作を委託した以上,被告LECには特段の事情がない限り,自らその編著,出版する書籍に使用するイラストが他人の著作権や著作者人格権を侵害することのないよう注意を払う義務を負うものではないし,そのような注意を払うことは不可能である旨主張する。しかしながら,書籍の編著,出版には,言語の著作物だけでなく,美術の著作物をも使用するのが通常であり,書籍の編著,出版を業とする被告LECが,美術の著作物について著作権等を侵害することのないよう注意を払う義務を負わないということはできない。特に,本件においては,前記のとおり,被告LECは,コンペを実施して被告本間デザインの提案するイラストを採用するか否か決定する立場にあったものであり,実際,被告本間デザインに対し,デザインの要望を述べるなどしているのであって,被告本間デザインに対し,イラストの製作について参考にした資料の提出を求める等必要な調査を行い得る立場にあったというべきである。











相談してみる

ホームに戻る