著作権重要判例要旨[トップに戻る]







執筆者及び出版者の調査義務違反を認定した事例
「バーンスタイン翻訳台本無断引用事件」
平成130613日東京地方裁判所(平成12()20058/平成140411日東京高等裁判所(平成13()3677 

【コメント】本件は、米国の作曲家の著作に係る演劇台本を日本語に翻訳し、二次的著作物である翻訳台本につき著作権を取得したと主張する原告が、原告の許諾なく、原告の翻訳者としての氏名を表示せずに当該翻訳台本の一部を引用複製した被告らの行為は、原告が二次的著作物について有する複製権及び著作者人格権を侵害すると主張して、被告らに対して損害賠償の支払を求めた事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

原告は、かつて米国の作曲家レナード・バーンスタインが著作した英語版演劇台本「Young People's Concerts What Does Music Mean?」を翻訳し(邦題「ヤング・ピープルズ・コンサート・・音楽って何?」、以下「本件翻訳台本」)、二次的著作物である本件翻訳台本に係る著作権及び著作者人格権を取得した。

被告B(ノンフィクション作家)は、その書籍「絶対音感」(「本件書籍」)を執筆し、被告小学館は、同書籍を出版した。本件書籍の240頁から242頁に掛けて、本件翻訳台本の一部(以下「原告翻訳部分」という。)を掲載したが、掲載に際して原告の許諾は得ておらず、翻訳者として原告の氏名を表示しなかった。

被告Bは、本件書籍の執筆のための取材をしたが、その取材で知り合ったクリスタル・アーツ社の代表者であるCから、原告翻訳部分を含む本件翻訳台本を渡され、Cからは、原告翻訳部分を本件書籍へ利用することの了解を受けていた。しかし、Cは、本件翻訳台本の著作者である原告から、本件翻訳台本を第三者に利用させることの許諾権限を付与されたことはない 


【原審】

 
被告Bは,調査をすれば,本件翻訳台本を翻訳した者が原告であることを容易に知り得たにもかかわらず,調査を怠った結果,二次的著作物の著作者である原告の許諾を得ず,その氏名も表示せずに原告翻訳部分を掲載した。また,被告小学館は同様に,調査をすれば,二次的著作物の著作者が原告であることを容易に知り得たのにもかかわらず,これを怠って本件書籍を出版した。したがって,被告らには,本件翻訳台本の著作権者である原告の許諾を得ずに掲載したことについて,過失がある
 
この点,被告Bは,本件翻訳台本の本件書籍への掲載について,Cの了解を得ているから,過失がないと主張する。しかし,Cは,本件翻訳台本の掲載につき,許諾を与える権限を有していないことは明らかであるから,被告らが,Cに確認したり,Cから許諾を得たことをもって,過失がないとすることはできない
 
以上によれば,本件複製権の侵害につき被告らには過失があったというべきであり,被告らの上記行為は共同不法行為を構成する。
 
また,被告らが本件書籍に原告翻訳部分を掲載するに当たって原告の氏名を表示しなかったことは,原告の著作者人格権を侵害するものであり,この点についても被告らには過失があるといえるから,被告らの行為は,共同不法行為を構成する。

【控訴審】

 
控訴人Aは,本件書籍の執筆の過程で,Cに対する取材を行った際,偶然に,同人が代表者を努めるクリスタル・アーツ社が「ヤング・ピープルズ・コンサート」の日本語での公演を準備していることを知った。同控訴人は,Cから本件翻訳台本を見せてもらい,そこに記載された原告翻訳部分に感銘を受けたことから,Cに対し,同部分を資料として本件書籍に利用させてほしいと申し入れ,Cから了解を受けた。
 
Cは,本件翻訳台本の著作者である被控訴人から,本件翻訳台本を第三者に利用させることの許諾権限を付与されたことはなかった。
 
控訴人Aは,Cに本件翻訳台本の利用について許諾権限があるものと誤信しており,翻訳者が誰であるかを確認する必要性があるかどうかということについては思い至らなかったため,本件書籍の原稿執筆に当たり,原告翻訳部分の翻訳者が誰であるかについて,Cに確認するなどして調査したことはない。控訴人小学館も,本件書籍の発行に当たり,上記調査をしなかった
 
(略)
 
控訴人らは,Cないしクリスタル・アーツ社が本件翻訳台本を作成していると考えてもやむを得ない事情があるから,あえてそれ以上に翻訳者を調査する注意義務はなく,出所を明示しなかったことについて控訴人らに過失はない,と主張する。しかしながら,控訴人らは,バーンスタインによる原著作物を翻訳して本件翻訳台本を作成した者がいることに思いを至し,この点について調査をすれば,通常なら,容易に本件翻訳台本の翻訳者が原告であることを知り得たというべきである。そして,本件全証拠によっても,控訴人らが上記調査をすることを困難とするような事情があったと認めることはできないから,控訴人らは過失責任を免れないというべきである。
 
控訴人らの主張は採用することができない。











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