著作権重要判例要旨[トップに戻る]







同一性保持権に基づく差止請求の際の訴額
「ゲーム『三国志V』民事仮処分事件」
平成51207日東京高等裁判所(平成5()989 

 訴えを提起するに要する手数料の額の算出の基礎となる訴訟の目的の価額は、訴えをもって主張する利益によるものとされ(民事訴訟費用等に関する法律41項、民事訴訟法221項)、財産権上の請求でない請求(非財産権上の請求)に係る訴えについては、訴訟の目的の価額は95万円とみなされる(民事訴訟費用等に関する法律42項)。ここに、財産権上の請求とは、その請求が認容され、その内容が実現されることにより、原告が直接経済的利益を受けることを目的とするものをいう、と解するのが相当である。
 
著作権法20条の同一性保持権は、著作者人格権といわれるが、そもそも、「著作者人格権」というのは、著作権法が18条の公表権、19条の氏名表示権と20条の同一性保持権の三権を指称する単なる定義用語にすぎないものであり(同法17条)、その用語から直ちに、同一性保持権が生命権、名誉権等と同じく講学上いわれる人格権であるとして、それに基づく差止請求権を非財産権上の請求であると結論づけることはできないが、同一性保持権は、著作者がその思想又は感情を創作的に表現した著作物をその意に反して改変を受けない権利であるから、その権利は、名誉権あるいは思想・表現の自由権等に類する人格権であるということができる
 
そして、人格権は人格的属性をその対象とし、第三者の侵害からこれを保護することを内容とするものであって、経済的利益を受けることを直接の内容とする権利ではない。したがって、人格権に基づく差止請求によって原告が直接得る利益は、第三者による侵害から人格を保護し得た利益であり、特別の事情の認められない限り、これによって直接経済的利益を受けるということはできない
 
これを本件について見ると、原告は本件著作物の同一性保持権に基づいて被告プログラムの記憶媒体の製造、頒布の差止を請求することにより、本件著作物の改変を防いでその同一性を保持し、ユーザーをして原告がその思想・感情に基づき設定した登場人物の能力値の範囲内でゲームをさせるという利益を得るにすぎず、それを超えて直接経済的利益を得るという特別の事情は認められない。もっとも、前記の@によれば、原告の本訴請求が理由ありとされるときは、被告プログラムの記憶媒体の製造、頒布は、本件著作物の同一性保持権を侵害すると同時に原告の有する著作財産権の侵害を生ずる可能性があるといえるが、著作財産権と著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、かつ、法的保護の態様を異にするものであって、訴訟物を異にするから、著作財産権をも侵害することを理由に、著作者人格権に基づく本訴差止請求をもって原告が直接経済的利益を得ることを目的とする請求ということはできない
 
したがって、同一性保持権に基づく本件差止請求は、財産権上の請求ということを得ず、本件訴えは、非財産上の請求に係るものとして、その目的の価額は95万円であり(民事訴訟費用等に関する法律42項)、その提起の手数料は8,200円となるものである(同法別表第11)。











相談してみる

ホームに戻る