著作権重要判例要旨[トップに戻る]







115条の適用解釈が問題となった事例(2)
「ジョン万次郎銅像事件」平成170623日東京地方裁判所(平成15()13385 

【コメント】本件は、彫刻家である原告が、被告から、中濱万次郎(通称ジョン万次郎)の銅像(「ジョン万次郎像」)及びCの銅像(「C像」)(以下、上記2体の銅像をまとめて「本件各銅像」)の制作を依頼され、その塑像を制作したにもかかわらず、本件各銅像の台座部分には、被告の通称(「BA」)が表示されているとして、被告に対し、本件各銅像について原告が著作者人格権(氏名表示権)を有することの確認と、これに伴い、被告に対し、銅像の所有者ないし管理者に各銅像の制作者が原告であることとその表示を原告名義に改めるように通知すること及び謝罪広告を求めた事案です。結論として、本件各銅像について、原告が著作者人格権(氏名表示権)を有することを確認するとともに、次のような内容の通知をするよう被告に求める判決を下しました。

 
(通知目録)
 
「土佐清水市長殿 御市足摺岬公園内にある中浜万次郎銅像の台座には,現在,その制作者名として私の通称である『BA』の文字が刻まれていますが,同銅像の真の制作者はA氏であることを通知します。BAこと B@」 


 [著作権法115条に基づく謝罪広告請求について]
 
原告は,被告に対し,著作権法115条に基づいて,別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告をすることを求めている。
 
著作権法115条は,著作者は,故意又は過失により,著作者人格権を侵害した者に対し,既に発生した損害を回復するために,損害賠償請求だけでは損害を回復するのに十分ではないこともあるため,「著作者・・であることを確保し,又は,訂正その他著作者・・の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。」と規定するものである。
 
ここにいう名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであり,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解され(最高裁昭和451218日第二小法廷判決参照),著作者は,この名誉声望を害された場合,その回復に必要な範囲内において,謝罪広告を求めることも許されるものである(最高裁昭和61530日第二小法廷判決参照)。
 
(略)
 
このように,本件各銅像にその制作者として被告の名前が表示されていることにより,その本来の制作者である原告が有する社会的名誉や声望が害されているとしても,本件各銅像が建立されてから30数年が経過した現在においては,その程度がそれほど高くはないこと,及び,前記認定のとおり,原告は,本件各銅像の制作者として被告の通称が刻まれ,原告の名前が制作者として公表されるものでないことについては,銅像の依頼者と被告との関係などを考慮して,少なくともこれを黙認していたものであり,その後30数年を経過した今日に至って本件訴訟を提起したとの事情があることに照らせば,本件においては,現段階において謝罪広告請求を認めることは相当ではない。

 
[著作権法115条に基づく通知請求について]
 
原告は,著作権法115条に基づき,被告が,本件各銅像の所有者等である土佐清水市及び駿河銀行に対し,別紙「通知目録(3)」及び同「通知目録(4)」の内容に記載のとおり,本件各銅像について,その制作者が被告ではなく原告であるとの通知をすること,及び,その制作者として原告の氏名を表示することを申し入れをすること(以下「本件通知請求」という。)を求めている。
 前記認定の事実によれば,本件各銅像の所有者等は,本件各銅像の著作者は被告であると認識しているはずである。しかし,本件各銅像の著作者は,前記認定のとおり,原告である。このことと前記に認定した本件の経緯を考慮すれば,原告は,著作権法115条の「著作者・・・であることを確保・・・するために適当な措置」として,本件各銅像にその制作者であると表示されている被告に対し,本件各銅像の所有者等宛に,本件各銅像の著作者が原告であることを通知させることを請求することができるというべきである。すなわち,このような通知は,本件においては,原告が本件各銅像の著作者であることを確保し,原告と本件各銅像の所有者との紛争を未然に防止することにもつながることであり,同条にいう「適当な措置」に当たると認められる。
 
ただし,本件通知請求のうち,別紙通知目録(3)中,「私は,本書をもって,御市に対し,中浜万次郎銅像の台座にある「BA」との表示を抹消し,「A」の表示に改めていただくよう申し入れいたします。」との部分,及び,別紙通知目録(4)中,「私は,本書をもって,御行に対し,C銅像の台座にある「BB」との表示を抹消し,「A」の表示に改めていただくよう申し入れいたします。」との部分は,単なる事実の通知にとどまらず,申し入れた相手方に一定の行為を求める内容を含むものであり,被告が,本件各銅像の所有者等に対し,このような作為を求める請求権を有するわけではないことからすれば,被告に対し,このような作為を相手方に求める申入れをすることまで命じることは相当ではない。











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