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115条の適用解釈が問題となった事例(3)
「観音像仏頭部すげ替え事件平成210528日東京地方裁判所(平成19()23883)/ 

【コメント】本件では、美術の著作物である観音像について、その原作品の所有者である被告(寺)が当該観音像の著作者(「E4/控訴審では「R)の死後に他人(別の被告)に依頼して仏頭部をすげ替えて、公衆の観覧に供していることが(以下、仏頭部すげ替え前の観音像を「本件原観音像」、仏頭部すげ替え後の観音像を「本件観音像」という。)、本件原観音像に係る著作者人格権(同一性保持権)及び著作権(展示権)の侵害に当たるかどうかが主要な論点として争われました。 

【原審】

 E4の人格的利益の保護のための原状回復等請求
 著作権法1161項は,著作者の死後においては,その遺族は,当該著作者について故意又は過失により同法60条に違反する行為をした者に対し,同法115条の請求をすることができる旨定めている。
 
E4には配偶者及び子はいないこと,E4の父D4及び母亡G2は,E4の死亡前に既に死亡していること,原告は,E4の弟であることは,前記争いのない事実等のとおりである。
 そうすると,原告は,本件原観音像の著作者であるE4の弟であって,E4の「遺族」(著作権法1161項)に当たるから,同条項により,E4について故意又は過失により同法60条に違反する行為をした者に対し,同法115条の請求をすることができる。
 
ところで,著作権法115条は,著作者又は実演家は,故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し,損害の賠償に代えて,又は損害の賠償とともに,著作者又は実演家であることを確保し,又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができると規定している。
 
同条は,その文言上,著作者が,故意又は過失によりその著作者人格権を侵害した者に対し,「著作者であることを確保」するために適当な措置,「訂正」するために適当な措置又は「その他著作者の名誉若しくは声望を回復」するために適当な措置の3類型の措置を請求することができることを定めたものと解され,「その他著作者の名誉若しくは声望を回復」するために適当な措置とは別類型である「訂正」するために適当な措置を請求するに当たっては,著作者の名誉又は声望が毀損されたことを要件とするものではないと解される。
 
そして,著作者人格権(同一性保持権)の侵害行為により改変された著作物の原作品を侵害前の原状に回復することは「訂正」に当たり,その必要性及び実現可能性があれば,著作者は,「訂正」するために適当な措置として,当該原状回復を請求することができるものと解するのが相当である。
 
これを本件についてみるに,…を総合すれば,本件観音像について,その仏頭部を同観音像制作当時の仏頭部(本件原観音像の仏頭部)に原状回復することの必要性及び実現可能性があるものと認められる。
 
したがって,原告は,E4の遺族として,著作権法1161項,115条に基づき,被告光源寺に対し,訂正するために適当な措置として,本件観音像について,その仏頭部を同観音像制作当時の仏頭部(本件原観音像の仏頭部)に原状回復することを求めることができるというべきである。

【控訴審】

(1) はじめに
 
原告は,Rの遺族として,著作者であるRが存しなくなった後において,著作者が存しているとしたならばその著作者人格権(法20条及び1136項所定の権利)の侵害となるべき行為を保護するために,@法112条,法115所定を根拠とする本件観音像を公衆の観覧に供することの差止請求,A法112条,法115条を根拠とする適当な措置請求としての原状回復請求,B法115条を根拠とする名誉声望回復のための謝罪広告請求(訂正広告請求を含む。)を求める(法20条,1136項,1161項,60条)。
 
これに対して,被告らは,@法201項所定のRの「意に反する…改変」に該当しない,及び法60条ただし書き所定のRの「意を害しないと認められる場合」に該当する,A法2024号所定の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない…改変」に該当する,B法1136項所定の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当しないなどと反論する。
 
当裁判所は,@被告光源寺による本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,著作者であるRが生存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権,法20条)の侵害となるべき行為であり,A法1136項所定の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当し,侵害とみなされるべき行為であり,B法60条のただし書等により許される行為には当たらないと判断する。したがって,原告はRの遺族として,法1161項に基づいて,法115条に規定するRの名誉声望を回復するための適当な措置等を求めることができると解される。そして,当裁判所は,すべての事情を総合考慮すると,法115条所定のRの名誉声望を回復するためには,被告らが,本件観音像の仏頭のすげ替えを行った事実経緯を説明するための広告措置を採ることをもって十分であり,法112条所定の予防等に必要な措置を命ずることは相当でないと判断するものである。
 
その理由は,以下のとおりである。以下,要件論(要件を充足性しているかの判断)と効果論(適切な回復措置に関する判断)と分けて,検討する。
(2) 要件論−要件充足性(法20条の同一性保持権侵害,法1136項の著作者人格権のみなし侵害,及び法60条所定の要件該当性)について
 
[改変の有無について]
 
R(亡R)が,美術の著作物である本件原観音像の著作者であること,Rが平成11928日に死亡したこと,被告光源寺が本件原観音像を本件観音堂内に祀り,参拝者等の公衆の観覧に供していたこと,被告らが,Rの死後である平成15年ころから平成18年ころまでの間に本件原観音像の仏頭部をすげ替えたことは,前記争いのない事実等のとおりである。
 
本件原観音像は,木彫十一面観音菩薩立像であって,11体の化仏が付された仏頭部,体部(躯体部),両手,光背及び台座から構成されているところ,11体の化仏が付されたその仏頭部は,本件原観音像においてRの思想又は感情を表現した創作的部分であるといえる。
 
そうすると,本件原観音像の仏頭部の眼差しを修正する目的で行われたものであるとしても,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,本件原観音像の創作的部分に改変を加えたものであると認められる。
 
[201項所定のRの「意に反する…改変」の該当性,及び法60条ただし書き所定のRの「意を害しないと認められる場合」の該当性について]
 
被告らは,R自身も本件原観音像の仏頭部に満足しておらず,これを作り直すべきことを検討していたから,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,Rの「意に反する…改変」(法201項)には当たらず,また「意を害しないと認められる場合」(法60条ただし書)に該当し,法201項による禁止の対象とはならない旨主張する。
 
しかし,以下の経緯に照らすならば,本件原観音像の完成後に,観音像の仏頭部を作り直した行為は,法201項所定のRの「意に反する…改変」と推認するのが相当であり,また法60条所定の「意を害しないと認められる場合」に該当すると認めることはできない
 
すなわち,被告Yの供述中には,仏頭部の粗彫りが完成した際,Rが先代住職に確認を求めたその場で,先代住職に対し,「お気に召さなければ作り直ししましょうか,と言いました」との供述部分があり,また,被告光源寺代表者(A)の供述中には,先代住職とAが昭和62614日に本件工房を訪れた際,Rが先代住職に対し,粗彫りが出来上がった仏頭部について,「だみ声で,どうでしょう。お気に召さなかったら作り直しましょうかねえ,というふうにおっしゃったのを覚えてます。」,Rは仏頭部の出来について,「作り直しましょうかという言葉からすると,満足なさっていなかったのではないかと思います。」との供述部分がある。
 
他方で,@Rは,昭和63823日から1週間,化仏がつけられた仏頭部が,日本橋三越百貨店で開催された第35回仏教美術彫刻展に出展されているが,仏師であるRが自ら制作した作品である仏頭部の出来について満足せず,あるいはこれを作り直すつもりでいたとすれば,仏教美術彫刻展に出展することを差し控えるのが自然であること,A平成5518日に執り行われた本件原観音像の開眼法要(開眼落慶法要)の際に,Rは,本件原観音像の制作について,「…一生懸命やりました。出来映えはまあまあというところだと思います。」と挨拶していること,B被告Y及び被告光源寺代表者の前記各供述部分は,Rが粗彫りが出来上がった仏頭部について「お気に召さなければ作り直ししましょうか」あるいは「お気に召さなかったら作り直しましょうかねえ」と発言したというものであって,その発言は,本件原観音像の制作途中の段階のものであり,完成した本件原観音像の仏頭部について作り直す意向を示したものとまではいえないと推認されること,C前記開眼法要(開眼落慶法要)が執り行われた平成5518日以降,Rが死亡した平成11928日までの間に,Rが本件原観音像の仏頭部を作り直す意向を示したことをうかがわせる証拠はないことに照らすならば,被告Y及び被告光源寺代表者の上記各供述部分からRが本件原観音像の完成後にその仏頭部を作り直す確定的な意図を有していたとまで認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 
そうすると,Rが,本件原観音像について,どのような感想を抱いていたかはさておき,本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,法201項所定のRの「意に反する…改変」と推認するのが相当であり,また法60条所定の「意を害しないと認められる場合」に該当するとまでは認めることはできず,この点に関する被告らの上記主張は,いずれも採用することができない。
 
[2024号所定の「やむを得ないと認められる改変」の該当性について]
 
被告らは,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,法2024号所定の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当すると主張する。
 
確かに,前記で認定した事実によれば,@本件原観音像は,本件観音堂に祀られた本件観音像を下から見上げる拝観者の眼差しと本件原観音像の眼差しとが合わさらなかったことから,Rが,本件原観音像が下を向くように,眼球面を彫刻した結果,上まぶたが仏像の慈悲の表現を表す「半眼」にならず,しかも,下から見上げると,本件原観音像は,驚いたように又は睨みつけるように眼を見開いた表情となった,A観音像は,信仰の対象であり,その表情は,拝観者らの信仰の対象として,重要な意義を有するところ,信者や拝観者において,本件原観音像の表情について違和感を覚えるなどの感想を述べる者,慈悲深い表情とするよう善処を求める者がいた,B被告光源寺は,平成6年ころ,Rに対し,本件原観音像の左右の眼の修繕を依頼したところ,原告において,本件原観音像の眼差しの修正を試みたものの,本件原観音像の眼差しや表情を補修するには至らなかった,C被告光源寺の現住職のAは,信者や拝観者らの信仰心を考慮して,本件原観音像の表情を修復すべきである考えた,DAは,Rの死後の平成15年ころ,被告Yに相談したところ,本件原観音像の表情を変えるには,「目の部分だけを彫り直す方法」や「顔の前面を彫り直す方法」などが考えられるが,失敗する可能性もあり,その可能性を考えると,新たに仏頭部を作り直した方がよい旨の助言を受け,仏頭部全体の作り直しを決意した,E原告に対し,本件原観音像の仏頭部の作り直しを伝えたところ,原告は,仏頭部の作り直しを拒絶した,FAは,被告Yに対して,本件原観音像の眼差しや表情を修正するため,新たな仏頭部を制作を依頼し,本件原観音像の仏頭部をすげ替えたとの経緯が認められる。
 
このような経緯に照らすと,被告らによる本件原観音像の仏頭部を新たに制作して,交換した行為には,相応の事情が存在するものと認められる。
 
しかし,たとえ,被告光源寺が,観音像の眼差しを半眼下向きとし,慈悲深い表情とすることが,信仰の対象としてふさわしいと判断したことが合理的であったとしても,そのような目的を実現するためには,観音像の仏頭をすげ替える方法のみならず,例えば,観音像全体を作り替える方法等も選択肢として考えられるところ,本件全証拠によっても,そのような代替方法と比較して,被告らが現実に選択した本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為が,唯一の方法であって,やむを得ない方法であったとの点が,具体的に立証されているとまではいえない。したがって,観音像の眼差しを修正し,慈悲深い表情に変えるとの目的で,被告らが実施した本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,法2024号所定の「やむを得ないと認められる改変」のための方法に当たるということはできない
 
被告らの主張は理由がない。
 
[1136項(著作者人格権のみなし侵害)所定の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」の該当性について]
 
Rは,平成5518日に執り行われた開眼法要(開眼落慶法要)の際に,本件原観音像の制作者として紹介され,出席者の前で挨拶していること,平成7615日発行の宗教工芸新聞の記事において,「仏師R師」との見出しの下に,Rが本件原観音像の制作者として紹介され,「東京駒込光源寺大観音(R)」と付された,本件原観音像の写真が掲載されていることからすれば,Rが死亡した平成11928日から10年以上が経過した本件口頭弁論終結日(平成211221日)の時点においてもなお,光源寺の檀家,信者や仏師等仏像彫刻に携わる者の間において,Rは「駒込大観音」を制作した仏師として知られているものと推認することができること等の事実を総合すれば,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,Rが社会から受ける客観的な評価に影響を来す行為である
 
したがって,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,法1136項所定の,「(著作者であるRが生存しているとしたならば,)著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するといえる。
(3) 効果論−法115条所定の名誉声望回復措置等,法112条所定の停止措置等について
 
前記のとおり,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,著作者であるRが生存しているとしたならば,同一性保持権の侵害となるべき行為であり,また,法1136項の著作者人格権のみなし侵害となるべき行為である。そして,Rには配偶者及び子はなく,Rの父T及び母亡Lは,Rの死亡前に既に死亡しており,原告は,Rの弟である。したがって,原告はRの遺族として,法1161項に基づいて,法115条,112条所定の適当な措置等を求めることができる余地がある。そこで,法115条,112条に基づいて,原告が被告らに対して求めることができる適当な措置等の内容について吟味する。
 
[115条所定の名誉声望回復措置等]
 
原告は,法115条所定の適当な措置として,被告光源寺に対し,仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復措置,公衆の閲覧に供することの差止め等,被告らに対し謝罪広告措置等を求めている。
 
しかし,下記の諸般の事情を総合考慮するならば,@原告が求める謝罪広告中(訂正広告を含む。),その客観的な事実経緯を周知するための告知をすることで,Rの名誉,声望を回復するための措置としては十分であり,A仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復する措置や謝罪広告を掲載する措置,公衆の閲覧に供することの差止めについては,いずれも,Rの名誉,声望を回復するための適当な措置等とはいえないものと解する。
 
前記認定のとおり,@本件原観音像は,被告光源寺の前住職が,戦災により焼失した「旧駒込大観音」を復興し,信仰の対象となる仏像にふさわしい観音像を制作することを目的として,Rに対し,依頼したこと,Aしかし,Rが制作した本件原観音像は,本件観音堂に安置された状態では,拝観者が見上げることになり,対面した拝観者に対しては,驚いたような表情,又は睨みつけるような表情となったこと,B被告光源寺現住職のAは,そのような表情について違和感を感じて,本件原観音像の眼差しを修繕することを希望し,Rに対し,本件原観音像の左右の眼の修繕を依頼したこと,Cその依頼に応じて,原告が,一旦は,本件原観音像の眼差しの修繕を試みたが,結局,本件原観音像の表情を補修することができなかったこと,D被告光源寺のAは,被告Yに対し,本件原観音像の眼差しの修繕の相談をしたところ,被告Yは,仏頭部の一部のみを残して,前面のみを作り変えることは,かえって,失敗する危険性があると助言をしたこと,Eそこで,Aは,被告Yに,仏頭部を新たに制作し,仏頭を交換することを依頼し,被告Yは,そのような方法によって,本件観音像を作り替えたこと,F被告Yは,Rの弟子として,長年にわたり,その下で制作に関与し,本件原観音像についても,制作開始から木彫作業が終了するまでの全制作行程(漆塗り,金箔貼りを除く。)に精力的に関与して,Rの創作活動に協力し,補助してきた者であること,G本件原観音像から取り外した仏頭部(すげ替え前の仏頭部)は,その原形のままの状態で本件観音堂に保管されており,第三者が同仏頭部の形状を拝観することは不可能でないこと,H仮に,被告光源寺は,本件観音像について,その仏頭部を観音像制作当時の仏頭部に原状回復することを命じられた場合,同被告は,一旦は,原状回復措置を講じても,その後すみやかに,いわゆる「お焚き上げ」と称する方法により,本件原観音像全体を焼却する措置を講ずることが推測され,結局のところ,Rの名誉,声望等が回復される目的が十分に達成できるとはいえないこと等諸般の事情を総合考慮するならば,原状回復の措置は,適当な措置ということはできない。
 
すなわち,被告らによる本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,確かに,著作者が生存していたとすれば,その著作者人格権の侵害となるべき行為であったと認定評価できるが,本来,本件原観音像は,その性質上,被告光源寺が,信仰の対象とする目的で,Rに制作依頼したものであり,また,仏頭部のすげ替え行為は,その本来の目的に即した補修行為の一環であると評価することもできること,交換行為を実施した被告Yは,Rの下で,本件原観音像の制作に終始関与していた者であることなど,本件原観音像を制作した目的,仏頭を交換した動機,交換のための仏頭の制作者の経歴,仏像は信仰の対象となるものであること等を考慮するならば,本件において,原状回復措置を命ずることは,適当ではないというべきである。
 
以上の事情によれば,Rの名誉声望を維持するためには,事実経緯を広告文の内容として摘示,告知すれば足りるものと解すべきであり,別紙広告目録記載第1の内容が記載された広告文を同目録記載第2の新聞に,同目録記載第2の要領で掲載することが相当であると解する。また,法115条所定に基づき,公衆の閲覧に供することの差止め等を求めることも適当でない。
 
[1121項,2項所定の差止請求等]
 
原告は,法1121項に基づいて,著作者人格権を侵害する行為の停止又は予防を,同条2項に基づいて,著作者人格権侵害の停止又は予防に必要な措置を請求する。しかし,1121項,2項を根拠としたとしても,前記と同様の理由によって,本件観音像を公衆の閲覧に供することの差止め及び原状回復は,必要な措置であると解することはできない

 Rから相続した展示権侵害を理由とする公衆の観覧に供することの差止請求(法1121項)及び原状回復請求(法1122項)の可否
 
原告は,Rが有していた原作品により公に展示する権利に係る専有権を相続したことを前提として,本件原観音像の二次的著作物である本件観音像について,公衆の観覧に供することの差止請求権等が存在すると主張する。
 
しかし,原告の請求は,以下のとおり失当である。
 
すなわち,Rは,被告光源寺からの,観音像の制作依頼に対し,これを承諾して,本件原観音像を制作したものである。ところで,観音像は,その性質上,信仰の対象として,拝観者をして観覧させるものであり,このような観音像の本来の目的に照らすならば,Rが,自己が制作した観音像の展示については,一般的,包括的かつ永続的に承諾をした上で,制作したとみるのが自然である。したがって,原告が,Rから相続したと主張する展示権に基づいて,公衆の観覧に供することの差止め及びこれに関連する原状回復を求めることが許される余地はないと解するのが合理的である。
 
本件観音像は,本件原観音像の眼差しを修正する目的から,頭部を交換したものであり,本件原観音像そのものではないが,前記の事実経緯等に基づき総合判断するならば,原告の有する展示権に基づく,本件観音像の展示差止めの請求が許されないのは同様である。











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