著作権重要判例要旨[トップに戻る]







一般不法行為の成否-否認事例⑨-
「ドキュメンタリー『卡子 出口なき大地』等vs.小説『大地の子』事件」
平成130326日東京地方裁判所(平成9()442 

 原告の人格に対する侵害及び原告の父親に対する敬愛追慕の情の侵害について
 原告は、前記記載のとおり主張する。その趣旨は、原告が自らの個人的な体験を記述、公表したところ、被告が、原告に無断で、これを被告小説に利用したのであるから、右行為は、違法性を有するということにある。
 
一般に、小説等を執筆するに当たって、既に公表された先行著作物を参照して、そこに記載された思想や事実を基礎として、作品を完成させることは、先行著作物に係る著作権を侵害しない限り、また、他人の人格権ないし人格的利益を侵害しない限り、原則として、許容されると解すべきことはいうまでもない。そして、第三者が、既に公表された先行著作物に記載された思想や事実を基礎として作品を完成させることが許されるか否かは、健全な社会通念に照らして、侵害されたとする他人の人格権ないし人格的な利益の性質及び内容、侵害したとする利用態様等を総合的に斟酌して判断すべきである。ところで、本件における発表者の静穏な感情のように、人格権ないし名誉権とまではいえない主観的な利益についても、同様に保護される余地があることはいうまでもないが、このような主観的な利益を損なう行為については、作品の利用態様等が社会的に許容できる限度を超える特段の事情が認められない限り、不法行為を構成すると解するのは相当でない
 
本件において、原告が表現した中国大陸における悲惨な体験は、原告の人生に強い影響を与え、心の深い傷として残っていたこと、原告の父親に対する鎮魂、敬愛追慕の情が執筆の動機であったことなど特別な事情が存在することは容易に認められるが、そのような点を考慮にいれても、なお、被告が前記認定した内容及び態様で、被告小説を執筆、完成させたことが、社会通念に照らして、原告の人格権ないし静穏な感情、追慕の情を侵害する違法な行為であるということはできない











相談してみる

ホームに戻る