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一般不法行為の成否-否認事例K-
「書籍『頭脳開発シリーズ』vs.『新頭脳開発シリーズ』事件」
平成151128日東京地方裁判所(平成14()23214/平成160331日東京高等裁判所(平成16()39 

【原審】

 
原告らは,被告が本件各書籍を許諾なく出版したことは,法的保護を受けるべき財産的価値としての企画,ノウハウ,プログラム,構成及び信用等の総体を侵害するものとして,不法行為を構成する旨主張する。
 
しかしながら,被告が本件各書籍を原告らの許諾なく出版したことは,次のとおり違法性がない。
 すなわち,仮に,原告らが新シリーズについて著作権を有しているとしても,その複製又は翻案に当たらない書籍を別個に制作し出版する行為について,著作権侵害ということはできない。本件各書籍がこれに対応する新シリーズの各書籍の翻案に当たらないことは前記のとおりであり,その複製にも当たらないことは明らかである。したがって,著作権法上は,被告が本件各書籍を出版するにあたって,原告らから許諾を受ける必要はない。
 もっとも,新シリーズについて原被告間で締結された出版契約書には,「本著作物の改訂版または増補版の出版及び電子出版利用については,甲乙別途協議により決定する。」(9条)又は「本著作物の改訂増補についてその必要が生じたときは,甲乙協議する。」(8条)との定めがある。しかしながら,本件各書籍は,これに対応する新シリーズの各書籍を翻案したものでないことは前記で認定したとおりであるから,改訂版や増補版にも当たらず,その出版に原告らの許諾が必要であるということはできない。
 
したがって,本件各書籍の出版には,著作権法上も契約上も原告らの許諾が必要であるとはいえない。このように,被告が本件各書籍を出版した行為は,著作権侵害に該当せず,契約上も原告らの許諾が必要であるとはいえないのであるから,被告が本件各書籍を許諾なく出版した行為には,そもそも不法行為を基礎づける違法性が存在しないというべきである。
 
仮に,著作権侵害にも契約違反にも該当しない場合に,なお民法上の不法行為が成立する事例があり得るとしても,本件において原告らの主張する「企画,ノウハウ,プログラム,構成及び信用等の総体」なる概念は,極めてあいまいなものである上,原告らの主張するノウハウ等は,当初シリーズに特有のものではなく,その出版前から,被告発行の他の書籍や公文数学研究センター発行の書籍にも使用されていたものであるから,民法上も保護に値する法律上の利益として原告らに帰属するものであるとはいえない
 
よって,原告らの不法行為を理由とする損害賠償請求は,理由がない。

【控訴審】

 
また,控訴人らは,「被控訴人が本件各書籍を控訴人らの許諾なく発行したことは,当初シリーズ及び新シリーズを通じての企画,ノウハウ,プログラム,構成及び信用等の総体という法的保護を受けるべき財産的価値を侵害するものとして,著作権侵害とは別個に,不法行為を構成する。」旨主張する。
 
しかしながら,本件において控訴人らの主張する「企画,ノウハウ,プログラム,構成及び信用等の総体」なる概念は,極めてあいまいなものであり,その内容が不明確であるといわざるを得ない。また,控訴人らの主張するノウハウ等は,当初シリーズ等に特有のものではなく,当初シリーズの刊行前から,被控訴人発行の他の書籍や公文数学研究センター発行の書籍にも既に使用されていたものであるから,民法上も保護に値する法律上の利益として控訴人らに帰属するものであるとはいえない。これらの事情に加えて,被控訴人による本件各書籍の発行が著作権侵害に該当しないものであることは,前記認定のとおりであるところ,物の無体物としての面の利用に関しては,著作権法等の知的財産権関係の各法律が,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にすることにより,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにしており,そのような上記各法律の趣旨,目的も併せ考慮すれば,控訴人らの主張する「企画,ノウハウ,プログラム,構成及び信用等の総体」が,著作権法上保護されないものでありながら,なお不法行為法上保護に値する利益であるということは到底できない











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