著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作者人格権に基づく請求を信義則違反と認定した事例
「『
宇宙戦艦ヤマト』等著作権譲渡契約事件」平成130702日東京地方裁判所(平成11()17262 

【コメント】本件における事実関係は、概ね、次のとおりです。

原告は、テレビないし劇場用映画である「本件各著作物」を制作し、著作した。

原告は、新作「宇宙戦艦ヤマト・復活編」の製作の準備を進めていたが、その製作費の資金繰りに窮していたため、被告東北新社に対して出資を要請し、原告の有する著作権等の譲渡のための交渉を重ねた。そして、原告は、同資金を得るため、被告東北新社との間で、自らが代表するウエストケープ社及びボイジャーエンターテインメント社をも当事者として、本件各著作物に係る著作権等を対象とする「本件譲渡契約」を締結した

本件譲渡契約は、その11項ないし3項において、原告らが著作権等を有する劇場用映画「宇宙戦艦ヤマト」等の映像著作物を「現存作品」と、原告が将来完成させる映像著作物を「将来作品」と、これら「現存作品」と「将来作品」を併せたものを「対象作品」と定義して、その該当作品を契約書添付の別紙(一)により特定した。その上で、同条4項において、「対象作品に対する著作権および対象作品全部又は一部のあらゆる利用を可能にする権利」を「対象権利」と定義している。そして、同契約は、2条において、原告は被告東北新社に対して、対象権利及び権利行使素材(フィルム、テープ等を指すと解される。)の所有権の一切を譲渡すること、また、4条において、原告及びウエストケープ社及びボイジャーエンターテインメント社が対象作品について第三者との間で締結した契約について、契約上の地位を被告東北新社に譲渡すること、9条において、原告は、被告東北新社に対して、原告が対象権利を専有していることを保証することを、それぞれ定めている。

原告は、緊急に資金を必要としたために本件譲渡契約の締結を急いだ。そのため、被告東北新社は自ら、本件譲渡契約の対象となる作品についての十分な調査をすることができず、原告に対し、対象作品に関する詳細な情報提供を要請した。そこで、原告は、本件譲渡契約の対象作品に関する権利関係等を明らかにした別紙(一)等の書面を作成した上、被告東北新社に交付した。別紙(一)には、本件各著作物を含む対象作品の著作者名が記載され、所定の3作品についてはウエストケープ社が、その他の5作品についてはオフィスアカデミー社が、それぞれ著作者として記載されている。

原告と被告東北新社とは、契約書に上記別紙(一)等を添付して、本件譲渡契約を締結した。そして譲渡契約に基づく双方の義務は履行された。ところが、後に、原告に対する破産宣告がなされ、破産者である原告は、被告東北新社に対し、本件各著作物を著作したのは原告であるから著作者人格権を有すると主張して、著作者人格権侵害を理由に本件各ゲームソフトの製造等の差止め及び損害賠償の支払を求め、被告らに対し、本件訴訟を提起した。 


 請求の放棄,信義則違反について
 
以上認定した事実を基礎に,検討する。
 
本件譲渡契約により,原告と被告東北新社との間で,原告は同被告から対価の支払を受けて,本件各著作物を含む対象作品についての著作権及びあらゆる利用を可能にする一切の権利を譲渡し,かつ,原告が譲渡の対象とされている権利を専有していることを保証したことが約されたことは明らかである。そうすると,被告東北新社(又は,その許諾を受けた者)による本件各著作物を利用する行為が,原告の著作者人格権を害するなど通常の利用形態に著しく反する特段の事情の存在する場合はさておき,そのような事情の存在しない通常の利用行為に関する限りは,原告は,本件譲渡契約によって,原告の有する著作者人格権に基づく権利を行使しない旨を約した(原告が同被告に対して許諾した,あるいは,請求権を放棄する旨約した。)と解するのが合理的である。
 
なお,被告らがする本件各著作物の利用形態が,原告の著作者人格権を著しく害するなど特段の事情があるとの主張も立証もない。
 
のみならず,本件譲渡契約の締結の経緯に照らすならば,原告が,本件譲渡契約の(著作者はウエストケープ社らであるとする)記載に反して,「本件各著作物の著作者は原告であるから、原告の有する著作者人格権を侵害する」と主張して,著作者人格権に基づく権利行使をすることは,信義則に照して許されない
 
すなわち,@本件譲渡契約書に添付された別紙(一)は,原告が作成して被告東北新社に交付したものであるが,同書面には,本件各著作物の著作者として,原告ではなく,オフィスアカデミー社及びウエストケープ社と記載されていること,Aしかも,被告東北新社が,このように記載された書面を別紙(一)として添付して本件譲渡契約書を完成させた上で,契約を締結したのは,本件各著作物の制作に深く関与し,制作過程を知悉している立場にある原告自らが,本件各著作物の著作者でないと説明したこと,及び既に上映された作品の中でも,著作者としては,原告ではなく上記両社がクレジットされていたこと等の理由によるものと推認されること,Bその後,原告は,破産宣告を受けて,財産権を行使する権限を包括的に失い,原則として人格権を除くその余の権利主張は制限されるに至ったこと等の事情を総合すれば,原告は,本件各著作物の著作者がオフィスアカデミー社及びウエストケープ社であると説明し,被告東北新社側もこれを信頼して,両者間で,本件譲渡契約を締結したのであるから,本訴において,これと明らかに矛盾する主張、すなわち、「原告が著作者であり、被告らの行為は原告の有する著作者人格権を侵害する」との主張は,信義則ないしは禁反言の原則に反する主張として許されないというべきである。被告バンダイ及び被告バンダイビジュアルは,被告東北新社が本件譲渡契約に基づいて取得した権利に基づき(許諾を得て),本件各著作物を利用しているのであるから,同バンダイらに対する著作者人格権に基づく原告の権利主張も,同様の理由により許されない。











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