著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権を相続した遺族の固有の名誉感情を傷つけたとして慰謝料の支払いを命じた事例
「石風呂の研究論文無断転載事件」
昭和610428日東京地方裁判所(昭和58()13780 

【コメント】本件は、原告ら(「故D」の妻及びその子)が、被告らの行為(「故D」は、「Eと石風呂」及び「温室考」と題する論文(「本件両論文」)の著作者であるところ、「被告C」が、被告第一法規から、「豊後の石風呂」と題する著書を刊行し、その第19頁から第37頁の間に、本件両論文を、被告C著作にかかるものとして、原文のまま転載した行為)により、夫又は父の著作にかかる論文を被告Cの著作物と表示されたことにより、それぞれその名誉を著しく毀損され、多大な精神的苦痛を被ったなどと主張して、被告らに対し、不法行為による損害賠償等の支払いなどを求めた事案です。 

 被告Cが、被告第一法規から豊後の石風呂を刊行したこと、その第19頁から第37頁の間に本件両論文が原文のまま転載されていることは、当事者間に争いがない。
 
豊後の石風呂への本件両論文の転載の態様について、以下検討する。
 
(略)
 これらの事情を勘案すると、豊後の石風呂中に転載された本件両論文は、その転載の態様から、一般の読者をして、被告C著作にかかるものと解されてしまうものというべきである。
 
(略)
 …によると、本件両論文のうち、「温室考」は、原告らの先代である故Dの石風呂についての日ごろの研究の方法及び成果の一端を発表したものであり、また、「Eと石風呂」もE上人に関する資料を通しての石風呂についての日ごろの研究の成果及びこれに対する意見を発表したものであつて、同故人の研究生活の所産であるということができる。
 
一方、…によると、故Dは、生前、漁民経済、神社経済及び民俗学を専攻する学者であつて、本件両論文の内容は、まさにその専攻分野に属すること、また、同故人は、京都の下鴨神社の宮司の長男として出生し、大学教授、文化財保護委員会調査官となつた経歴を有すること、原告らは、その夫又は父である同故人のこのような学究としての経歴、人格及びその研究の成果を誇りに思い、かつ、敬愛していたこと及び本件両論文の著作権は、原告らによつて相続されていることが認められる。
 
このような場合、原告らとしては、その誇りとする夫又は父の研究の成果としての本件両論文がどのようにして公表されるかに重大な関心を抱くのは当然であつて、その公表の方法によつては、原告ら自身の名誉感情がいたく傷つけられることは容易に推認できるところである。そして、前示認定のとおり、本件両論文が豊後の石風呂において、あたかも被告Cの著作であるような編集方法の下に発表されたことにより、原告らは、その名誉感情を傷つけられたものといわなければならない。さらに、原告らは、本件両論文の著作権を相続している点からみて、本件両論文の発表は、原告らの考えにしたがつて、その名誉感情を満足させるような方法で行われることが可能であつたのに、その意向に反してこれが発表されたことは、なおさら、原告らの名誉感情を傷つけたものとみることができる。
 
してみれば原告らは、豊後の石風呂中に、故D著作の本件両論文を、被告C著作にかかるものと一般の読者に解される体裁にて転載されたことにより、精神的苦痛を被つたものと認められる。











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