著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡契約の解釈(3)-渉外要素を含んだ事例-
「ニューヨーク州破産財団‘譲渡証書’事件」平成130228日東京地方裁判所(平成10()543/平成150331日東京高等裁判所(平成13()1908 

【コメント】本件は、原告らは、「本件映画著作物」に係る著作権を取得したところ、被告らが本件映画著作物及びそのビデオグラムの複製販売を行い、原告らの当該著作権(複製権及び頒布権)を侵害したと主張して、被告らに対し、複製販売の差止め、損害賠償等を求めた事案です。

 
本件における事実関係は、概ね、次のとおりです。

RKO」は、もと本件映画著作物についての著作権(「本件著作権」)を有していたが、1955年、「CC」との間で、本件映画著作物に関して、RKOからCCに対して一定の権利を付与する旨の同日付契約(「55年契約」)を締結した。

CCの後身である「インダストリーズ社」は、19621117日、「オリエント社」との間で、本件映画著作物に関して、インダストリーズ社がオリエント社に対して一定の権利をライセンスする旨の同日付契約(「62年契約」)を締結した。62年契約の内容は、インダストリーズ社は、オリエント社に対し、日本、沖縄、韓国及び台湾における、16ミリフィルム又は35ミリフィルムによる劇場、非劇場又はテレビにおける本件映画著作物の利用権を許諾する、というものであった。62年契約書には、「本契約における付与及びライセンスは、55年契約に記載の制限及び条件に従うものである。」との記載があった。

インダストリーズ社の後身であるトランスベアコン(「破産会社」)は破産したところ、その破産手続(「本件破産手続」)において、米国ニューヨーク州南部連邦地方裁判所C破産判事の決定に基づき、破産会社のD破産管財人から本件映画著作物に関する一定の権利の譲渡(「本件バンクラプシー・セール」)がされた。

原告らは、「原告は、本件バンクラプシー・セールにおいて、譲渡証書(「本件譲渡証書」)に基づき、本件映画著作物を含む742作の長編及び900作の短編からなる「アールケーオーライブラリー」の日本、沖縄、韓国、台湾における複製権、放送権、有線送信権、上映権、頒布権、その他すべての著作権(本件著作権)を譲り受けた」と主張した。
※「本件譲渡証書」には、「All of the right, title and interest in and to the sole and exclusive rights and licenses under the copyrights or renewals of copyrights of the certain films specified and described in an agreement of November 17,1962と記載されていました。

 
本ケースは、渉外的要素を含み、事実関係も複雑ですが、ここでの最大の論点は、上記55年契約」において、CCRKOから付与された権利に、本件映画に関して、日本国内においてビデオテープを使用してテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利(まとめてビデオグラム化権)が含まれていたのか、という点に尽きます。 


【原審】

 
当裁判所は、以下のとおり判断した。
 すなわち、@55年契約において、破産会社の前身であるCCRKOから、本件映画著作物に関して権利を付与(ライセンスないし使用許諾)されたが、その権利範囲は、16ミリ又は35ミリフィルムという媒体を使用した劇場上映権等に限定され、日本国内においてビデオテープを用いてテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利は含まれていなかった。A(略)B本件破産手続の経緯に照らすならば、本件バンクラプシー・セールは、55年契約により破産会社(CC)がRKOからライセンスを受け、62年契約により破産会社(インダストリーズ社の後身)がオリエント社にサブライセンス(修正により期間の制限ないものとなった。)したという契約上の権利関係を、破産管財人が、原告ユタカに対して譲渡したものと解することができる。Cしたがって、原告ユタカは、日本国内においてビデオテープを用いてテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利を取得していない。
 
(略)
 
そうすると、右一連の破産手続の経緯に照らせば、本件譲渡証書によって原告に対して譲渡された権利の内容は、55年契約により破産会社が付与された権利の範囲内で、かつ、62年契約によりオリエント社に対して既にサブライセンス(再許諾、前記のとおり修正されて許諾期間の制限はなくなった。)したことに基づく破産会社の法的地位ないし権利であることは疑いの余地がない。
 
原告らは、本件譲渡証書の文言は、「62年契約において特定される映画著作物」に関する一切の権利を本件バンクラプシー・セールの対象とする旨解釈されるべきである旨主張する。
 
なるほど本件譲渡証書には、「特定の映画著作物に関する初期著作権、更新著作権に基づく唯一かつ独占的権利及びライセンスにおけるすべての権利、資格、利益」と記載されている。しかし、前記のとおり、許可申請書、ショー・コーズ・オーダー、売却許可決定等その他の破産記録の記載と照らし合わせれば、破産管財人の認識は、「62年契約により、破産会社が既にオリエント社に付与した権利を期間の制限ないものとして利用する権利をオリエント社に付与する」ことの承認に関するものであったことは明らかであるから、右一連の経緯に照らすならば、「specified and described in an agreement of November 17,1962」は「films」ではなく「all of the right, title and interest」を形容、修飾するもの、すなわち、「62年契約において特定される破産者の権利」と解釈すべきことは当然である。原告ユタカに対し譲渡された権利の内容が、本件映画著作物に関する一切の無制約な権利と解することは到底できない。この点に関する原告らの主張は採用できない。

【控訴審】

 
控訴人は,1955年(昭和30年)1222日にRKOCCが締結した55年契約は,RKOCCに対して,本件著作権ないし本件映画著作物に関する一定の物権的権利を譲渡することを内容とするものであったと主張する。
 
(略)
 
上記記載によれば,55年契約において,@本件映画著作物…は,長編映画中の「A映画」に,本件映画著作物…は,同「B映画」に分類していること,A我が国は「域外地域」に含まれること,B「域外地域」において,「A映画」及び「B映画」について,RKOCCに付与した権利は,16ミリフィルム又は35ミリフィルムを用いて,域外地域内の映画館において上映し,上映する権限を他者に付与する,著作権に基づく(又はその更新に基づく)単独で独占的かつ永続的な権利,ライセンス及び特権(劇場上映権),無料テレビ及び有料テレビの双方において,又は域外地域に所在するテレビ局において,16ミリフィルム又は35ミリフィルムを用いて,映画を放送し,配信する権利及びこの権利を他者に付与する,著作権に基づく(又はその更新に基づく)単独で独占的かつ永続的な権利,ライセンス及び特権(テレビ放映権),並びに16ミリフィルムのみを使用して,映画を上映し,配給し,その他利用する独占的で世界規模の権利及びこの映画を上映し,配給し,その他利用する権限を他者に付与する独占的で世界規模の権利(非劇場上映権)であること,C「A映画」及び「B映画」に関し,…に基づいてCCに明確に付与されていないすべての権利は,RKOに留保され,特に,本件映画著作物を含む映画の著作権は明示的にRKOに留保される旨が規定されていることが認められる。
 
以上のとおり,55年契約は,本件映画著作物を含む長編映画について,日本を含む域外地域においては,劇場上映権,テレビ放映権及び非劇場上映権のみを付与する旨明確に規定し,この三つの権利の内容についても,「16ミリフィルム又は35ミリフィルムを用いて」「16ミリフィルムによる」との文言の点も含め,詳細かつ具体的に規定しており,CCに明確に付与されていないすべての権利がRKOに留保される旨の権利留保規定を明示的に定めている。また,長編映画に関するテレビ放映権の定義規定において,域外地域と域内地域を比較すると,域外地域に関する規定のみ「16ミリフィルム又は35ミリフィルムを用いて」という媒体の限定文言が付加されていることに照らすと,同契約における「16ミリフィルム又は35ミリフィルムを用いて」という文言は,厳密に媒体を限定したものと解するのが相当である。
 
(略)
 
ところで,55年契約には,ビデオグラムの複製及び頒布について,直接に規定するところはないが,RKOに留保された権利の一つとしての「テレビ向け翻案権」を規定した第1.08項には,上記のとおり「磁気テープ」「現在知られているか又は将来発見されるその他いかなる記録手段」との記載があり,これらの記録媒体を「フィルム」とは明確に区別している。そして,出版ニュース社発行の社団法人著作権情報センター編「新版著作権事典」によれば,ビデオグラム(videogram)は,「影像または影像と音の記録物の一種を指すものとして,音声レコードを意味するフォノグラムに対しヨーロッパなどから使われだした用語で,フィルムが光化学的方法によるのに対し,電磁的または光学的方法により記録するもの」であることが認められ,…との記載を併せ考えれば,55年契約が締結された1955年(昭和30年)当時,米国内の,少なくとも映画の制作,供給にかかわる者の間において,フィルムとは別に,磁気テープを記憶媒体とする映画の記録方法が知られていたことが推認できる。加えて,55年契約においては,上記のとおり,「フィルム」と「磁気テープ」とが明確に区別されていることに照らすと,同契約にいう「16ミリフィルム又は35ミリフィルム」にはビデオグラムが含まれないものと解すべきことは,明らかというべきである。
 
また,スタンフォード大学ポール・ゴールドスティン教授作成の「著作権について」と題する意見書及び…によれば,1976年(昭和51年)の改正前の1909年米国著作権法においては,著作権には「不可分性の原則」が適用され,著作権の一部の移転は,譲渡ではなく,ライセンスとしての効果を有するにすぎないとされていたことが認められる。そうすると,同法による「不可分性の原則」が適用される55年契約において,上記のとおり,RKOの有していた権利のうち一部のみがCCに売却又は付与する旨明示的に規定されている点にかんがみれば,同契約に基づきRKOCCに対して付与した権利は,使用許諾権(ライセンス)と解するのが相当であって,同契約中にライセンスという語が多数用いられていることもこれを裏付けるものである。
 
以上によれば,控訴人主張のように,55年契約によって,CCRKOから本件著作権ないし一定の物権的権利の譲渡を受け,又は本件著作権の一部であるビデオグラムの複製権及び頒布権の譲渡を受けたものと認めることはできない











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