著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡契約の解釈(4)-解除の遡及効の有無が争われた事例-
「振動制御器プログラム翻案権侵害請求事件」平成180831日知的財産高等裁判所(平成17()10070 

【コメント】控訴人は、控訴人と被控訴人との間で締結されていた契約(被控訴人が控訴人にソフトウェアプログラム設計製作等の業務を委託する契約に共通に適用されるべき基本的事項を定めた「92年基本契約」及び「94年基本契約」、並びに控訴人が被控訴人の企画する振動制御・計測システム「F3」なる製品の開発作業に参加する旨を定めた「F3契約」の3つの契約)を、被控訴人の債務不履行を理由にすべて解除(「本件解除」)しました。
 
ここでの争点は、本件解除に遡及効が認められ、その結果として、被控訴人に移転していた著作権が控訴人に遡及的に復帰するかという点です。

 
なお、本件で問題となった「92年基本契約」及び「94年基本契約」には、次のような条項が含まれていました。
15条(発明考案):1.乙(控訴人のこと。以下同じ)が個別契約を履行する過程でなした発明・考案に関しての特許等を受ける権利、工業所有権及び著作権は、無償で独占的に甲(被控訴人のこと。以下同じ)に帰属するものとする。
16条(著作権):本契約に基づき開発されたソフトウェアの著作権は甲に帰属する。
22条(有効期間):3.本契約の失効後も、…第15条(発明考案)、第16条(著作権)、・・・(の)規定は、尚その効力を有するものとする。

 
さらに、「F3契約」には、次の条項が含まれていました。
6条(発明等の帰属):当該製品開発過程で生じる発明・考案等の技術的成果は、甲に帰属する。
7条(著作権):当該製品開発過程で生じる著作権の対象となりうるものは、甲に帰属するものとする。 


 本件解除による本件プログラムの翻案権の復帰について
 
控訴人は,本件解除により,本件プログラムの翻案権は控訴人に復帰した旨主張するとともに,継続的契約関係においては,契約の性質,内容,当事者の意思を考慮してある程度の修正がされるが,本件における事情を考慮すると,F3契約等が解除された効果として,遡及効を否定して現状を維持させるべき要請はほとんどないなどとして,本件解除には遡及効がある旨主張する。
 
そこで,本件解除の解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるかはさておき,仮に,これらが肯定されるとしても,控訴人主張のように本件解除に遡及効があるか否かについて,まず,検討する。
 前記に照らせば,本件プログラムは,一度に開発されるものではなく,一定期間にわたって開発されるもので,開発期間中にあっても,開発の委託者である被控訴人と受託者である控訴人とで協議の上,開発対象となる具体的なプログラムを順次定め,それに基づいて,控訴人が開発作業を行い,そこで開発されたプログラムが被控訴人に納入され,被控訴人がその著作権等を取得し,開発費についても,その都度,控訴人と被控訴人間において支払額,支払時期等が合意された上で,開発期間中に,月ごと,あるいは検収後に控訴人に対して支払われるといったものである。
 
他方,被控訴人は歩合開発費の支払義務を負担するが,F3契約による「歩合開発費」は,前記のとおり,控訴人と被控訴人間において,利益の分配という性質を有するものとして扱われていたのであり,「初期に発生する開発費に加えて」,控訴人の「協力」(いずれもF3契約の第9条)に対して支払われるものであって,控訴人は,被控訴人に対して特別な協力を行い,その協力を理由として,控訴人に対し,利益の分配としての「歩合開発費」が支払われるものとされていた。
 
そうすると,本件プログラムをめぐる契約関係において,基本的には,控訴人による本件プログラムの開発期間中は,控訴人は,合意されたところに基づき,順次,プログラムを開発して,これを被控訴人に納入する義務を負うのに対し,被控訴人は,開発に応じて,合意された開発費の支払義務を負い,順次,納入されるプログラムの著作権等の権利を取得するという継続的な関係が存在し,プログラムの納入後は,控訴人には,製品の競争力維持のために特別な協力を行う義務が存在し,被控訴人には,「歩合開発費」の支払義務が存在するという継続的な関係があることが認められる。
 
上記継続的な関係においては,被控訴人が,順次,納入されたプログラムの権利を取得するものであるところ,その権利を基礎として,新たな法律関係が発生するものであるし,開発の受託者である控訴人も,委託者である被控訴人から指示されて被控訴人のために開発を行い,被控訴人に納入したプログラムについて,控訴人と被控訴人間の契約関係解消の場合,その開発作業の対価として受け取った金員の返還を想定しているとは考えられず,契約の性質及び当事者の合理的意思からも,本件における継続的な関係の解消は将来に向かってのみ効力を有すると解するのが相当である。92基本契約,94年基本契約においても,契約解除の場合,開発されたソフトウェアの著作権が被控訴人に帰属する条項が有効である旨が定められている(第223項)。また,本件においては,歩合開発費についての条項が定められているが,歩合開発費は,控訴人の特別の協力に対して,利益の分配として支払われるものであり,控訴人が,歩合開発費の支払がないことを理由に,開発費が支払われていないということはできず,本件プログラムについて,開発段階で合意された開発費合計189676300円が被控訴人から控訴人に支払われたことにより,本件プログラムの開発費は支払われて,被控訴人は納入されたそれらの著作権等を取得し,本件解除当時は,F3契約について,F3の競争力維持のための控訴人の義務と被控訴人の歩合開発費支払の義務が残っていたと認められる。
 
そうすると,控訴人による本件解除は,仮に,解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるとしても,遡及効はなく,将来に向かって効力を生じるものであると解されるのであって,そうとすれば,控訴人は,将来の競争力維持のための協力義務を免れるものの,本件解除によって,従前の法律関係を解消されるものではなく,被控訴人に帰属した権利が,控訴人に復帰するものではないと解するのが相当である。











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