著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡契約の解釈(5)
「珠算学習用ソフトシステム開発委託事件」
平成130327日大阪地方裁判所(平成12()8604 

【コメント】本件は、珠算学習用ソフトのプログラムを作成し、同ソフトの著作権を有しているとする原告が、同ソフトの複製物を公衆送信、頒布等している被告に対し、その差止め等を求めた事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

被告は、アドバンスシステムズ(ソフトウエアの開発等を目的とする会社)との間で、珠算学習用ソフトウエアである「ABACUSシステム」のシステム開発に関し、次のような契約(「本件契約」)を締結した。
 
・被告は、アドバンスシステムズに対し、ABACUSシステムに関わるシステム開発を委託し、アドバンスシステムズはこれを受諾する。
 
・被告は、アドバンスシステムズに対し、ABACUSシステムのシステム開発の対価として、委託料総額700万円を支払う。
 
・アドバンスシステムズは、本件業務を原告に再委託することを了承する。
 
本件システム中の成果物の所有権は、被告よりアドバンスシステムズへ委託料が完済された時に、アドバンスシステムズから被告へ移転する

原告は、ABACUSシステムの企画案、開発案、基本設計書、データテーブルの基本案、基本流れ図、背景・イニシャル画面のストーリーやキャラクターの性格についての提案書を作成し、とりわけ同基本設計書は検討を加えながら3度にわたり作成して、アドバンスシステムズや被告に提案し、同企画、設計を基礎にして、プログラム作成を進めていった。

原告は、本件契約に基づき、ABACUSシステムの開発を進めたものの、進捗状況が思わしくなかったため、被告及びアドバンスシステムズとの間で話合いをし、ABACUSシステムのうち、学習者側が利用する機能のみをまとめたものを暫定版(「本件ソフト」)として、先行して被告に納入し、被告がこれを先行発売する旨の合意をした。その後、原告は、この合意に沿って、本件ソフトを制作し、アドバンスシステムズを通じて被告に納品したが、その後、本件ソフトの一部に不具合が発生した。

被告が、このころまでに、本件ソフトの委託料として支払った金額は150万円である。

被告は、本件ソフトの完成版が納入されないことから、アドバンスシステムズに対し、求める諸機能を列挙した上、本件ソフトを再納入するように督促した。なお、被告は、同督促に際し、納品検収後1か月以内に150万円を支払うとの申入れもした。

アドバンスシステムズは、被告に対し、原告を含めた3社で協議したい旨の申入れをしたが、被告がその協議に応ずることはなく、結局、協議を求めるアドバンスシステムズと、協議をするまでもなく本件ソフトの完成版の納入を求める被告とは、相互に合意に至ることが困難な状況となった。

被告は、書面で、アドバンスシステムズに対し、本件ソフトの完成版の納入を計ることは困難と考えざるを得ないこと、アドバンスシステムズが本件契約を無条件に放棄したものとみなし、本件ソフトの著作権、販売権、その他本件ソフトに関わる権利全般は、同日付けで、被告が有することとすることを告知した。 


 上記の事実関係によれば、原告は、本件契約に基づきABACUSシステムの基本的な企画設計を行い、平成12121日の暫定版として本件ソフトを制作販売するとの旨の合意に従って、本件ソフトを制作したものであるから、被告は本件ソフトの発注者にすぎず、本件ソフトの著作権は、原告に帰属するというべきである。
 
なお、その後、原告は、本件ソフトを被告に引き渡してはいるが、本件ソフトの対価(委託料)は150万円が支払われたのみで、仮に被告が平成12517日にアドバンスシステムズに対し申し入れた内容に従っても150万円の残代金が未払いとなっているから、本件契約中の「本件システム中の成果物の所有権は、被告よりアドバンスシステムズへ委託料が完済された時に、アドバンスシステムズから被告へ移転する。」との条項によれば、未だ本件ソフトの権利は被告へ移転していないというべきである。
 
また、被告が、平成1273日付け書面で、アドバンスシステムズに対し「本件ソフトの著作権、販売権、その他本件ソフトに関わる権利全般は、平成1273日をもって、被告が有することとする」と一方的に告知しているものの、同告知によって、本件ソフトの著作権が原告から被告へ移転する法的効果を有するものとすることはできない
 
そして、仮に、アドバンスシステムズないし原告側に、本件ソフトの制作が遅延したとか、本件ソフトに不具合があったなどの事情があったとしても、そのことによって、被告が本件ソフトの著作権を有するに至るということはできないし、その他、原告が本件ソフトの著作権を有するとの前記認定を覆すに足りる証拠はない。











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