著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権の黙示の利用許諾を認定した上で、著作者人格権の侵害を否定した事例
「一橋大学博士論文事件」平成210625日東京地方裁判所(平成19()13505/平成220329日知的財産高等裁判所(平成21()10053 

【コメント】本件は、「本件各原著」を被告と共同執筆した原告が、被告において本件各原著の一部を原告に無断で使用した「被告各論文」を作成し、これらを含む論文(以下、学位請求論文全体を「本件博士論文」という。)を、経済学博士の学位請求のため、被告の論文として一橋大学に提出したことは、本件各原著に係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害する行為であるとして、被告に対し、被告各論文の発行等の差止め、国立国会図書館及び一橋大学に対する被告各論文の閲読禁止の措置の申出、全国紙への謝罪広告の掲載等を求めた事案です。 

【原審】

 本件において,本件各原著が原告と被告との共同著作物であること,…で特定された被告論文1ないし3の各該当部分は,…で特定された本件原著1及び本件原著2の対応する番号の各該当部分に依拠して作成されたものであることは,当事者間に争いがなく,…で特定された被告論文1ないし3の各該当部分は,…で特定された本件原著1及び本件原著2の対応する番号の各該当部分と対比した場合,その複製に当たるものと認められる。
 
そこで,まず,被告の,本件博士論文における本件各原著の上記複製行為が,本件各原著に係る原告の著作権(複製権)を侵害するものであるか,複製につき原告による承諾があったと認められるか否かについて,検討する。
 
(略)
 
…、これらの事情に照らせば,原告は被告に対し,特に対象を本件原著1に限定することなく,本件共同研究の成果である論文(すなわち,本件原著1及び本件原著2)の本件博士論文への利用を承諾し,その利用態様についても,特に著作権法の規定する引用の要件を充足する態様(すなわち,著作権者の承諾がなくても著作権法上許される態様)に限定することなく,収録(複製)を含め,博士論文における共同研究論文の利用として一般に行われる方法での利用を承諾したものと推認することができるというべきである。
 
(略)
 
本件博士論文における本件各原著の利用態様は,上記認定のとおりである。すなわち,全体で13章から成る本件博士論文のうち,本件原著1が第2章(被告論文2)及び第3章(被告論文3)に,本件原著2が第4章(被告論文4)において複製されている(なお,本件原著2は,第2章の一部においても複製されている。)ものの,第2章及び第3章の冒頭の脚注には,「This chapter partly depends on and (1995).」と,第4章の冒頭の脚注には,「This chapter is taken from and (1996).」とそれぞれ記載されており,本件博士論文の巻末の参考文献一覧には,「A, and (1995)」に対応するものとして本件原著1が,「A, and (1996)」に対応するものとして本件原著2が,それぞれ記載されている。このような本件博士論文における本件各原著の利用態様は,博士論文における共同研究論文の利用方法として,一般的なものであると認められるから,本件博士論文における本件各原著の利用態様は,原告による承諾の範囲内のものであると認めるのが相当である。
 
以上によれば,被告各論文における本件各原著の複製については,当該行為につき原告の承諾があったものと認められるから,原告の本件各原著に係る著作権(複製権)を侵害するものではない。

 
[被告による著作者人格権(氏名表示権及び公表権)侵害の成否について]
 原告は,被告が本件各原著に基づいて作成された被告各論文を含む本件博士論文を図書館における閲覧に供することにより公表したとして,被告の当該行為は,本件各原著に係る原告の著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害するものである旨主張する。
 
しかしながら,原告が,被告に対し,その博士論文に,博士論文における共同研究論文の利用として一般に行われる方法での利用を承諾したものと認めることができること,本件博士論文における本件各原著の利用態様は,博士論文における共同研究論文の利用方法として一般的なものと認められることは,上記で説示したとおりである。そして,博士論文は,博士学位請求者の作成に係るものとして,学位請求先である一橋大学に提出されることは自明のことであり,また,学位請求のために一橋大学に提出された後は,学位の授与された論文が図書館で閲覧に供されることも含め提出先の大学における手続に委ねられるものと認められるから,被告による本件博士論文の作成及び一橋大学への提出行為は,原告による承諾の範囲内の行為であって,被告の上記行為が原告の本件各原著に係る著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害するものとはいえないというべきである。

【控訴審】

 
被控訴人による著作者人格権(氏名表示権及び公表権)侵害の成否について
 
この点に対する判断は,原判決…までに説示のとおりであるから,これを引用する。











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