著作権重要判例要旨[トップに戻る]







広告業者の注意義務
「『スターボ』広告宣伝イラスト事件」
平成200418日東京地方裁判所(平成18()10704 

【コメント】本件は、自社製品のパッケージ等に本件イラストを使用した行為が第三者の著作権及び著作者人格権を侵害するとして同人に損害賠償金の支払等を余儀なくされた原告が、同イラストの使用に関与した広告代理店である被告に対し、主位的に債務不履行、予備的に不法行為に基づき、上記支払額等の損害金等の支払を求めた事案です。

 
本件における事実関係は、概ね次のとおりです。

原告は、平成59月、被告に対し、「スターボ」(エンジンスターターの商品名)のリーフレットに用いるデザインを作成すること等を内容とする注文をし、被告はその仕事の完成を約した(「平成59月契約」)。原告と被告は、この「平成59月契約」において、本件イラスト(スターボ製品の販売促進のためのキャラクター)の利用範囲についての取決めをしなかった。

被告は、「平成59月契約」の履行のため、そのデザイン製作を「ゼル社」に依頼したB(ゼル社の代表取締役)は、Cに対し、イラストの作成を代金25万円で行わせ、Cは、本件イラストを完成させ、ゼル社に納入した被告は、原告に対し、本件イラストを使用したリーフレットの原稿を製作し、リーフレットを印刷した上、原告に納品した。

Cは、Bに対し、本件イラストにつき、著作権侵害の事実関係を問い合わせ、その後、A(原告との取引の窓口役の被告社員)は、Bから、Cが本件イラストについて苦情を述べていることを知らされた。

Cは、原告を相手方として、本件イラストの使用差止め、使用図柄の廃棄及び損害金の支払を求める民事訴訟を提起した(C前訴」)。原告は、C前訴を担当する裁判官から敗訴の心証を開示されたため、本件イラストの使用を中止した。そして、原告は、Cとの間で、本件イラスト及びこれの衣装の色を変形したもの並びに髪型等を変形したものを使用しないこと、著作権侵害による損害金として800万円、著作者人格権侵害による慰謝料として400万円を支払うことを内容とする和解をした。

被告の担当者であるAは、Bが本件イラストの作成にCを関与させたことをそもそも知らなかったから、Cの著作権等につき、権利処理を行うことはしなかった。 


 [被告の義務内容]
 
平成59月契約及びその後の個別的合意によれば,被告は,前提事実のものが広告,リーフレット及びパッケージに使用することができるように,著作者から翻案の許諾を得,かつ,著作者人格権が行使されないように権利処理を行う義務があり,このような権利処理が行われていなかったことを認識し又は認識し得たときは,契約による信義則上,原告にその使用をしないよう連絡するなどの方法により,原告に発生する被害の拡大を防止する義務を負っていたものである。

 
[被告の履行の有無]
 
前提事実のとおり,被告の担当者であるAは,Bが本件イラストの作成に当たり,Cを関与させたことをそもそも知らなかったから,Cの著作権等につき,権利処理を行うことはしなかったものである。
 
(略)
 
以上のとおり,Aが,原告担当者又はD社長(管理人注:原告代表取締役社長)に対し,本件イラストの使用を中止してほしいと要請したことは認められず,仮にそれに類する行為があったとしても,それは,本件イラストの使用中止を強く求めるものではなく,被告において解決することを述べたにとどまるものである。
 
Aの上記程度の行為が先行行為により生じた被告の原告に対する連絡義務を満たすものではないことは,明らかである。

 
[被告の責めに帰すべき事由]
 
被告は,原告も被告も,Cが著作者であるとの認識を有していなかったから,Cから著作権の譲渡を受けることなどをしなかったことにつき,被告の責めに帰すべき事由はなかった旨主張する。
 しかしながら,Bの製作過程を知り得ない原告に,Cが著作者であるとの認識がなかったことをもって,被告の責めに帰すべき事由がなかったと解することは到底できない。
 
さらに,被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。
 
したがって,この点の被告の主張は理由がなく,Aには,不法行為上の過失もあったものと認めるべきである。

 [因果関係]
 
以上の事実によれば,被告の債務不履行行為と原告の被った損害との間に相当因果関係があることが認められる。











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