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広告業者の注意義務(2)
「商業広告事件」昭和600329日大阪地方裁判所(昭和58()1367
 

 三和通商(管理人注:本件における「広告主」)は、本件広告(1)に関する広告委託契約の消極的効果として、ジヤパン・トレード(管理人注:本件における「広告業者」)が三和通商と競業関係にある第三者のため、三和通商の許諾なく広告代理業務をなすべきでない義務を負うと主張する。
 
一般に、広告主と広告業者間の広告取引に関する契約関係は、広告主が広告業者に対して、広告主自身が制作した広告を広告媒体に露出することを依頼する広告取次の委託・引受契約と、広告の取次だけでなく広告の制作まで依頼する広告制作の委託・引受契約まで伴うものとが存し、前者の取次の委託の実質は委任といえ、後者の場合請負契約関係が成立するといえようが、いずれの場合にも、広告業者が複数の同業種の広告主と取引することが商法48条(管理人注:現会社法17条)により規制されるものとは解し難く(少くとも、自己又は第三者の為本人の営業の部類に属する取引を為すものではない)、右契約関係の下においては、広告業者が広告主と競業関係にある第三者のためにも広告代理業務をなすことは自由である。従つて、広告主と広告業者間において、広告業者が広告主と競業関係にある第三者のため広告代理業務をなすべきでない明示の特約が存するか、若しくはこれに準ずるような特段の事情ある場合は格別、一般的には広告業者に主張のような消極的義務を認めることはできない
 
(略)
 
更に三和通商は、本件広告(1)に関する広告委託契約の消極的効果として、ジヤパン・トレードが、三和通商が本件広告(1)によつて挙げた広告効果(イメージ)を第三者に利用・承継させて、その営業権ないし営業上の利益を違法に侵害すべきでない義務を負うとも主張する。
 
一般に、商業広告は商品・役務に関する情報を消費者に提供して、その価値を多くの人に知らせることにより、市場を開拓し確保することを主な狙いとし(日本商工会議所・広告向上のための指針より)、広告主はその達成により営業上の利益を獲得しようとして、一定の費用で右広告効果をできるだけ挙げることを目的として、広告業者との広告委託契約の締結に及ぶのであるから、該契約の申込に当つては、その相手方たる広告業者が、右契約により知得するであろう知識等を不正に流用することによつて、右広告の狙いとする広告効果が毀損・減少されて、営業上の利益の毀損に繋がるような行為が行なわれないであろう期待と信頼の下に、右契約の申込をなしているものと考えて差支えない。そうであれば、その相手方となつて該契約の申込に応諾した広告業者においては、該契約に伴う信義則上の付随義務として、右契約により知得した知識等を不正に流用して、広告主が右広告によつて挙げ又は挙げつつある広告効果を第三者に利用・承継させ、広告主の広告効果を毀損・減少させることによつて、広告主の期待利益を損うことのないようにすべき義務を負うべきものということができる。
 
従つて、広告主(甲)から特定の広告(A)の露出又は制作を委託された広告業者は、広告Aがその特徴ある表現形態によつて甲の広告として価値ある広告効果を挙げ又は挙げつつある場合には、前示契約に伴う信義則上の付随義務として、第三者(乙)の委託によつて、広告Aと共通した広告イメージを持つ広告(B)を制作・露出することにより、広告Aの広告効果を乙に利用・承継させて、甲に帰属した広告Aの広告効果を毀損・減少させてはならない義務を負うものと解するのが相当である。そして、如何なる場合に右広告効果の毀損・減少が認められるかは、広告Aの個性的表現の強さ、広告Aの甲の広告としての周知性獲得の度合、広告Bの表現形式の広告Aのそれとの類似性の度合、広告Bの広告媒体への露出頻度、両広告の媒体が同一又は類似するか否か、両広告の受け手が同一か否か、甲・乙の業種の同一又は類似性を総合的に勘案して判断するのが相当である。
 
(略)
 
…に照らせば、ジヤパン・トレードが、三和通商が本件広告(1)によつて挙げた広告効果を極東技研に利用・承継させて、右広告効果を毀損・減少させたものとまではにわかに認めがたく、ジヤパン・トレードに対して債務不履行責任を問責することは困難である。











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