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通信カラオケリース業者の侵害主体性
「通信カラオケリース差止請求事件」
平成150213日大阪地方裁判所(平成14()9435 

【コメント】本件は、音楽著作権の管理等を目的とする音楽著作権等管理事業者である原告が、通信カラオケ装置のリース業を営む被告に対し、被告が原告の管理に係る音楽著作物の使用について許諾を得ていない社交飲食店93店舗に対し通信カラオケ装置をリースしているとして、同飲食店に対して同音楽著作物のカラオケ楽曲データ(歌詞データを含む。)の使用禁止措置をとることを請求した事案です。
 
本件における主要な論点は、業務用通信カラオケ装置のリース業者が、音楽著作物の利用許諾を得ていない社交飲食店(スナック等)に通信カラオケ装置をリースしている場合に、当該リース業者が侵害著作物の利用につき幇助ないし教唆を行う者であるとして、その者に対し、著作権法1121項に基づいて、楽曲データ(音楽著作物)の使用禁止措置をとるよう請求することができるか否かという点です。 


 原告は、本件各店舗においてその経営者が原告から使用許諾を得ることなく通信カラオケ装置を使って管理著作物の利用を行っていることにつき、被告が管理著作物の利用主体であること、又は、被告が管理著作物の利用につき幇助ないし教唆を行う者であることを理由として、著作権法1121項に基づき、被告に対し楽曲データの使用禁止措置をとることを請求するものである。
 
当裁判所は、被告は、管理著作物の利用主体、したがって著作権侵害行為の主体そのものとみることはできないが、本件各店舗による管理著作物の利用を幇助する者であり、その支配の内容、程度等に照らして、原告は被告に対し楽曲データの使用禁止措置をとることを求め得ると判断する。その理由は以下のとおりである。

 
[本件各店舗による著作権侵害行為]
 …によれば、本件各店舗は、いずれも、被告との間で通信カラオケ装置のリース契約を締結し、併せて通信サービス提供契約を締結した上で、被告からリースを受けた通信カラオケ装置を店舗内に設置し、楽曲データの配信を受け、原告から使用許諾を得ることなく、社交飲食店営業として、上記通信カラオケ装置を使って管理著作物である歌詞・楽曲を演奏・上映し、同楽曲を伴奏として客や従業員に歌唱させているものである。
 
本件各店舗の経営者が、上記のように、原告の許諾を得ないで、社交飲食店営業として、カラオケ装置を利用して原告の管理著作物である歌詞・楽曲を上映又は再生し、同楽曲を伴奏として客に歌唱させるなど、管理著作物を公に上映又は演奏する行為は、管理著作物に係る演奏権ないし上映権の侵害に当たるものというべきである(最高裁昭和63315日第3小法廷判決、最高裁平成1332日第2小法廷判決参照)。

 
[本件各店舗における楽曲データの使用に対する被告の関わり]
 
(略)

 
[被告による本件各店舗に対する管理・支配について]
 
前記の事実によれば、管理著作物に係る歌詞・楽曲を無断で演奏・上映するという著作権侵害行為は、直接的には本件各店舗の経営者が主体としてしているものというべきであるが、被告は、同著作権侵害行為について、次のような管理・支配をし、同無断演奏行為による利益を得ているということができる。
 
被告は、本件各店舗に対し、本件各店舗において管理著作物に係る楽曲データを用いてカラオケ演奏を行うについて、必要不可欠といえるカラオケ装置(同装置に蓄積された楽曲データを含む。)を提供しており、本件各店舗においては、本件各店舗において演奏・上映し得る歌詞・楽曲は、被告が本件各店舗に対して提供する楽曲データの範囲内に限られる。
 
通信カラオケリース業者である被告は、カラオケ装置の保守・点検を行い、他方、本件各店舗は、被告に対して善管注意義務を負っている。また、リース物件の鍵は、本件各店舗と被告が協議した上、その保管者を決定するが、賃貸料債権を担保するため、原則として被告が保管することとされ、被告は毎月1回、集金日に本件各店舗と被告の双方が立会い、リース物件を開扉することができる。
 
本件各店舗において楽曲データの利用が可能になるのは、被告の指示によって通信回線が開通しカラオケ装置が作動可能な状態になった場合である。また、被告は、契約上、リース契約が解除された場合にカラオケ装置を本件各店舗から引き揚げる権限を有するばかりでなく、リース契約が解除された場合でなくても、本件各店舗に債務不履行があるときには、楽曲データをロックする措置をとることによって、容易に当該店舗における楽曲データを利用した演奏・上映を完全に停止させることができる。したがって、被告は、リースしたカラオケ装置について、作動可能ないし作動不能を制御するという管理手段を有しているといえる。
 
被告は、リース契約に基づき、本件各店舗から毎月一定額のリース料の支払を受けているが、前記のとおり、通信カラオケにより配信される楽曲データのうち97%が原告の管理著作物であることからすると、被告の得ているリース料は、通信カラオケ装置を賃貸することの対価であるものの、本件各店舗における原告の管理著作物に係る歌詞・楽曲の無許諾の演奏・上映行為と密接な結び付きのある利益とも評価できる。
 
カラオケ装置のリース業者は、カラオケ装置のリース契約を締結した場合において、当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは、リース契約の相手方に対し、当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく、上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解される。その理由は、@カラオケ装置により上映又は演奏される音楽著作物の大部分が著作権の対象であることに鑑みれば、カラオケ装置は、当該音楽著作物の著作権者の許諾がない限り一般的にカラオケ装置利用店の経営者による前記のような著作権侵害を生じさせる蓋然性の高い装置ということができること、A著作権侵害は刑罰法規にも触れる犯罪行為であること(著作権法119条以下)、Bカラオケ装置のリース業者は、このように著作権侵害の蓋然性の高いカラオケ装置を賃貸に供することによって営業上の利益を得ているものであること、C一般にカラオケ装置利用店の経営者が著作物使用許諾契約を締結する率が必ずしも高いとはいえないこと(原告の主張によれば平成143月現在の全国平均で81.2%)は公知の事実であって、カラオケ装置のリース業者としては、リース契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことが確認できない限り、著作権侵害が行われる蓋然性を予見すべきものであること、Dカラオケ装置のリース業者は、著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否かを容易に確認することができ、これによって著作権侵害のための措置を講ずることが可能であることを併せ考えれば、上記注意義務を肯定すべきだからである(最高裁平成1332日第2小法廷判決参照)。
 
被告が本件各店舗との間でカラオケ装置のリース契約を締結するに当たり、本件各店舗の経営者において著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否かを確認した事実をうかがわせる証拠はないから、被告は、上記注意義務を果たすことなく、原告から許諾を得ていない本件各店舗(93店舗)に対しカラオケ装置をリースしたものと認められる。
 
そして、カラオケ装置のリース業者が、カラオケ装置利用店との間でリース契約を締結するに際し上記注意義務を怠ってカラオケ装置を引き渡した後に、カラオケ装置利用店の経営者が著作物の使用許諾を得ていないことを知った場合には、リース業者は、カラオケ装置利用店の経営者に対し、直ちに著作物使用許諾契約の締結を促し、著作権侵害の事態を除去すべきであるとともに、それでもカラオケ装置利用店の経営者が許諾を得ようとしない場合には、リース契約を解除し、本件のような通信カラオケ装置にあってはその使用の停止措置をとり、カラオケ装置を引き揚げるべき条理上の注意義務があるものと解するのが相当である。けだし、リース契約締結時に認められる注意義務を肯定すべき根拠として挙げた上記@ないしBの諸点は、この場合にも当てはまるものである上、既に著作権侵害行為が現実に継続して行われている蓋然性が高いことが明らかになったのであるから、リース業者としてはリース契約上の解除条項あるいは相手方が法令を遵守しないことを理由にリース契約を解除し、カラオケ装置の使用停止措置をとり、これを引き揚げることにより著作権侵害の拡大を回避すべきであり、かつ、リース業者がそのような行動をとることに格別の困難もないと考えられるからである。

 
[著作権法1121項にいう「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」について]
 
管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為は、本件各店舗において、その従業員ないし客が楽曲を選択し、カラオケ装置を操作して演奏させ、従業員ないし客が歌唱することによって行われるものであって、被告は、カラオケ装置及び同装置に蓄積された楽曲データをリース契約及び通信サービス提供契約に基づいて提供しているものの、それ以上に、本件各店舗における演奏行為に関与するものではなく、いつ、どの楽曲を演奏するかについて個々のカラオケ楽曲の演奏行為に直接的な関わりを有するものではないから、被告が管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為の直接的な行為主体であるということはできない。しかし、被告は、本件各店舗の経営者を主体とする歌詞・楽曲の演奏や上映による著作権侵害行為について、カラオケ装置及び楽曲データをリース契約及び通信サービス提供契約によって提供し、本件各店舗における歌詞・楽曲の演奏ないし上映を可能としているものであり、しかも、本件各店舗の経営者が原告から現に著作物使用許諾を得ていないことを知りながら、これらの提供を継続しているのであるから、本件各店舗の経営者がしている著作権侵害行為を故意により幇助している者であるということができる
 
著作権法1121項にいう「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」は、一般には、侵害行為の主体たる者を指すと解される。しかし、侵害行為の主体たる者でなく、侵害の幇助行為を現に行う者であっても、@幇助者による幇助行為の内容・性質、A現に行われている著作権侵害行為に対する幇助者の管理・支配の程度、B幇助者の利益と著作権侵害行為との結び付き等を総合して観察したときに、幇助者の行為が当該著作権侵害行為に密接な関わりを有し、当該幇助者が幇助行為を中止する条理上の義務があり、かつ当該幇助行為を中止して著作権侵害の事態を除去できるような場合には、当該幇助行為を行う者は侵害主体に準じるものと評価できるから、同法1121項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に当たるものと解するのが相当である。けだし、同法1121項に規定する差止請求の制度は、著作権等が著作物を独占的に支配できる権利(著作者人格権については人格権的に支配できる権利)であることから、この独占的支配を確保する手段として、著作権等の円満な享受が妨げられている場合、その妨害を排除して著作物の独占的支配を維持、回復することを保障した制度であるということができるところ、物権的請求権(妨害排除請求権及び妨害予防請求権)の行使として当該具体的行為の差止めを求める相手方は、必ずしも当該侵害行為を主体的に行う者に限られるものではなく、幇助行為をする者も含まれるものと解し得ることからすると、同法1121項に規定する差止請求についても、少なくとも侵害行為の主体に準じる立場にあると評価されるような幇助者を相手として差止めを求めることも許容されるというべきであり、また、同法1121項の規定からも、上記のように解することに文理上特段の支障はなく、現に侵害行為が継続しているにもかかわらず、このような幇助者に対し、事後的に不法行為による損害賠償責任を認めるだけでは、権利者の保護に欠けるものというべきであり、また、そのように解しても著作物の利用に関わる第三者一般に不測の損害を与えるおそれもないからである。
 
ところで、特許法は、直接的な侵害行為を行う者でない場合でも、業としてその物の生産(物の発明の場合)ないしその方法の使用(方法の発明の場合)にのみ用いる物の生産等をする行為や、その発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業としてその生産等をする行為を間接侵害として、特許権又は専用実施権の侵害とみなす旨の規定(特許法101条)を置いているが、同条は、特許権侵害に関する幇助的ないし教唆的行為のうち、侵害とみなす場合を規定したものと解することができる。これに対し、著作権法は、113条に侵害とみなす行為についての規定を置いているが、特許法のような間接侵害に関する規定を置いていないから、特許法との対比からすると、著作権法は、幇助的ないし教唆的な行為を行う者に対する差止請求を認めていないとの解釈も考え得るところであろう。
 
しかしながら、特許法と著作権法とは法領域を異にするものであるから、特許法における間接侵害の規定が著作権法にないとしても、そのことから、直ちに、著作権法が幇助的ないし教唆的な行為を行う者に対する差止請求を認めていないと解する必然性はない。しかも、特許法における間接侵害の規定は、直接的な侵害行為がされているか否かにかかわらず侵害行為とみなすものであるところ、上記において著作権法1121項の差止請求の対象に含めるべきであるとする行為は、現に著作権侵害が行われている場合において、その侵害行為に対する支配・管理の程度等に照らして侵害主体に準じる者と評価できるような幇助行為であるから、特許法上の間接侵害に当たる行為とその適用場面を同一にするものではない
 
したがって、著作権法において特許法上の間接侵害に該当する規定が存在しないことは、著作権法1121項の差止対象の行為について上記で述べたように解することの妨げになるものではない。

 
[被告に対する差止請求の可否]
 
前記で述べた著作権法1121項の解釈を前提として、被告が同項の「著作権を侵害する者又はそのおそれのある者」に当たるといえるかについて検討するに、@被告は、本件各店舗において管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為を行うについて、必要不可欠といえるカラオケ装置(同装置に蓄積された楽曲データを含む。)を提供していること、A被告は、本件各店舗にカラオケ装置をリースするに際し、管理著作物に係る使用許諾契約の締結又申込みの有無を確認すべき条理上の注意義務を怠り、そのような確認をしないでカラオケ装置を引き渡したものであり、しかも、その後、現に本件各店舗の経営者が原告の許諾を受けないで管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映による著作権侵害行為を行っていることを知りながら、これら経営者に許諾を受けることを促し、それがされない場合にはリース契約を解除してカラオケ装置の停止の措置をとり、カラオケ装置を引き揚げるべき条理上の注意義務に反して放置しているものであること、B被告は、同カラオケ装置について、作動可能にするか作動不能にするかを決める制御手段を有していること、C被告が得るリース料は、本件各店舗において管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映行為と密接な結び付きのある利益といえることからすると、被告は、本件各店舗で行われている著作権侵害行為の侵害主体に準じる立場にあると評価できる幇助行為を行っており、かつ、当該幇助行為を中止することにより著作権侵害状態を除去できる立場にあるというべきであるから、著作権法1121項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」に当たると解するのが相当である。
 前記のとおり、被告は本件各店舗のカラオケ装置の作動を停止させる措置として、通信回線を経由して一定の信号を送信することにより楽曲データの使用を不能にさせるという容易な方法を採り得るのであり、上記のように被告に侵害停止義務を認めたとしても、被告に過大な負担を負わせるものではない。
 
また、被告が本件各店舗からリース料収入が得られなくなるとしても、同リース料は管理著作物の無許諾の演奏・上映行為という違法な行為と密接な結び付きがあるものであって、保護に値する正当な利益とはいえない。
 
なお、管理著作物に係る歌詞・楽曲の演奏・上映により著作権侵害を行っている主体は本件各店舗の経営者であるところ、被告から本件各店舗に対する楽曲データの提供が差し止められることにより、本件各店舗の経営者がその営業に打撃を受けるとしても、著作権侵害を継続することによって営業上の利益を上げることは法的に保護されるものではないから、差止めによって本件各店舗の経営者の権利ないし法的な利益が侵害されることもない。もとより、原告において、本件各店舗の経営者を相手にして個別に著作権侵害行為の差止めを請求することは可能であるが、それをしないで幇助者である被告に差止めを求めることが許されないとする理由はない

 
[差止めの内容について]
 
以上によれば、原告は被告に対し、著作権法1121項に基づき著作権侵害の停止を求め得るところ、原告が本訴において被告に対して求める差止めの内容は、「別紙「無許諾店舗一覧表」記載の店舗に対し、別紙「楽曲リスト」記載の音楽著作物のカラオケ楽曲データの使用禁止措置(通信回線を経由して一定の信号を送信することによって楽曲データの再生を不可能にする措置)をせよ。」というものであり、このような請求は、著作権法1121項に基づく差止めの具体的方法として簡便かつ実効的なものと解されるから、差止めの内容として、上記のような具体的措置を命じることができるものというべきである。もっとも、上記の楽曲データの使用禁止措置(通信回線を経由して一定の信号を送信することによって楽曲データの再生を不可能にする措置)をとった場合には、原告の管理著作物以外の楽曲データの再生も不可能となると考えられる。しかし、前記のとおり、通信カラオケにより配信される楽曲データのうち97%が原告の管理著作物であるから、本件において、それ以外の3%の楽曲データを含むすべての楽曲データの再生を事実上不可能にする措置をとることを請求することは、差止めの対象として相当な範囲内のものであるといえる。











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