著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示的複製許諾を認定した上で同一性保持権の侵害を否定した事例
計装士技術講習資料事件平成181019日知的財産高等裁判所(平成18()10027 

【コメント】本件は、「被控訴人会社」の従業員であった控訴人が、被控訴人会社在職中に、「被控訴人工業会」主催の講習において講師を務めた際、講習資料として作成した資料(「平成12年度計装士技術維持講習」のうち、「空調技術の最新動向と計装技術」に係る資料、以下「12年度資料」という。)について著作権及び著作者人格権を有するとして、被控訴人会社において、控訴人の後任として上記講習の講師を務めた被控訴人会社従業員に、12年度資料の複製等を行って所定の各講習資料(「13年度資料」・「14年度資料」)を作成させ、被控訴人工業会において、各資料の写しを受講者に配布するなどして、共同して控訴人の著作権(複製権、口述権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したなどと主張して、損害賠償金等の支払いを求めた事案です。 

 著作権法201項は,著作者の有する同一性保持権について,「著作者は,その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする。」と規定している。この趣旨は,著作物が,著作者の思想又は感情を創作的に表現したものであり,その人格が具現化されていることから,著作物の完全性を保持することによって,著作者の人格的な利益を保護する必要があるため,著作者の意に反してその著作物を改変することを禁じているものであるが,一方,著作者自身が自らの意思によりその著作物の改変について同意することは許容されるところであって,著作者が,第三者に対し,必要に応じて,変更,追加,切除等の改変を加えることをも含めて複製を黙示的に許諾しているような場合には,第三者が当該著作物の複製をするに当たって,必要に応じて行う変更,追加,切除等の改変は,著作者の同意に基づく改変として,同一性保持権の侵害にはならないものと解すべきである。
 
そこで,本件についてみると,前記に判示したとおり,12年度資料は,被控訴人会社の著作名義で公表されたと認めることができないため,被控訴人会社の職務著作とならず,控訴人がその著作者ということになるものの,控訴人が自己の業務とは別に私的に作成したというものではない。
 
そして,控訴人は,前記に判示したとおり,後任者が13年度資料及び14年度資料を作成するために,必要に応じて,12年度資料に変更,追加,切除等を加えることをも含めて複製を黙示的に許諾していたものである。
 (略)
 
このような事情を総合すると,控訴人の後任者が作成すべき13年度資料及び14年度資料は,大幅な変更をしないという制約の下で,12年度資料を基礎としつつ,表現をより適切なものにし,内容もより適切なものにし,その資料全体を充実させることが求められていたのであり,控訴人自身も,このような事情を十分認識して,10年度資料を基礎として12年度資料を作成したものであるから,控訴人は,上司であるAからの指示を受けて,平成13年度から維持講習の講師をBと交替するとともに,Bに対し,原稿の引継ぎの指示に基づいて,何らの留保をすることもなく12年度資料の原稿の電子データを交付し,複製を黙示的に許諾したと認められる時点で,上記目的に沿って充実した内容の講習資料が作成されることに異存はなかったものといわざるを得ない
 
そうすると,控訴人の後任者が,13年度資料及び14年度資料を作成するために,12年度資料の表現についての基本的な構成,内容を前提として,上記目的に沿って12年度資料の表現をより適切なものにし,内容もより適切なものにし,その資料全体を充実させることは,上記講習資料作成の目的に沿い,必要に応じて行う変更,追加,切除等の改変であって,控訴人が黙示的に許諾していた複製に含まれ,著作者の同意に基づく改変として,控訴人の同一性保持権を侵害するものとはいえない
 
そこで,以下,個別的な改変について,上記講習資料作成の目的に沿った必要な範囲内での改変といえるかどうかについて検討する。
 (略)
 
そうすると,変更箇所一覧表記載の各変更部分は,いずれも,控訴人が黙示的に許諾していた複製に含まれる必要な範囲内の改変であると認められるから,著作者の同意に基づく改変として,控訴人の同一性保持権を侵害するものとはいえない。











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