著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示の利用許諾を認定した事例(6)
計装士技術講習資料事件平成181019日知的財産高等裁判所(平成18()10027 

【コメント】本件は、「被控訴人会社」の従業員であった控訴人が、被控訴人会社在職中に、「被控訴人工業会」主催の講習において講師を務めた際、講習資料として作成した資料(「平成12年度計装士技術維持講習」のうち、「空調技術の最新動向と計装技術」に係る資料、以下「12年度資料」という。)について著作権及び著作者人格権を有するとして、被控訴人会社において、控訴人の後任として上記講習の講師を務めた被控訴人会社従業員に、12年度資料の複製等を行って所定の各講習資料(「13年度資料」・「14年度資料」)を作成させ、被控訴人工業会において、各資料の写しを受講者に配布するなどして、共同して控訴人の著作権(複製権、口述権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したなどと主張して、損害賠償金等の支払いを求めた事案です。 

 被控訴人らは,12年度資料の作成経緯,講習資料としての性質その他の事情を考慮すれば,控訴人は,12年度資料を,平成13年度以降の維持講習に用いる限度で複製することを許諾したものであると主張するので,検討する(。)
 
(略)
 
上記認定の事実によれば,被控訴人会社は,被控訴人工業会からの依頼を受けて,平成10年から平成14年までの5年間,同一のテーマ及び内容で,被控訴人工業会主催の維持講習の講義を担当することになっており,毎年,被控訴人工業会と被控訴人会社との間で講師派遣の合意をし,その合意に従って,従業員の中から担当者を決め,その担当者に不都合があれば,代わりの者を指名して,講義をさせていたこと,平成10年ないし平成12年には,その講義の担当者として控訴人が指名され,その結果,控訴人は,業務命令により,社外用務応嘱として人事部長の承認を受けて講義を行っていたことが認められる。
 
そして,当該講義を行うに当たって,被控訴人工業会から,事前に講習資料を準備し,講習資料に基づいて講義をするように要請されていたため,講習資料の作成は,維持講習の講義を担当すべき業務に付随する業務であったものということができる。
 
また,維持講習は,5年間同一のテーマで行われるのが原則であり,その間の講習資料の大幅な変更は予定されていない上,テーマが「空調技術の最新動向と計装技術」であって,自己の担当業務に関することであり,また,空調技術の最新動向を内容としているために,最新の資料,論文等の内容を取り込むなどして内容を充実させなければならず,控訴人自身の担当業務を離れて作成し得るものではなかったものであり,控訴人は,当該担当業務の延長上で,被控訴人会社の社内資料,過去に雑誌等に掲載した自らの論文等を適宜参照しつつ,10年度資料及び12年度資料の原稿を作成したものというべきである。
 このような事情の下で,控訴人は,上司であるAからの引継ぎの指示を受けて,平成13年度から維持講習の講師をBと交替するとともに,Bに対し,上記指示に基づいて,何らの留保をすることもなく12年度資料の原稿の電子データを交付したのであるから,13年度資料及び14年度資料を作成するために利用させる意思であったものと解すべきであり,ここに利用させるとは,控訴人の後任者が13年度資料及び14年度資料を作成するために,必要に応じて,12年度資料に変更,追加,切除等の改変を加えることをも含むものであって,控訴人は,そのような意味で12年度資料の複製を黙示的に許諾したものと解するのが相当である。
 
控訴人は,12年度資料の電子データは参考に渡したのみであり,Bからの金員も資料閲覧料として受領したとして,複製の許諾はしていない旨主張する。
 
しかし,上記のとおり,被控訴人会社の著作名義で公表されたものと認めることができないため,被控訴人会社の職務著作とならないとはいうものの,12年度資料は,控訴人の業務の一環として作成されたものであって,控訴人の私的な著作物ではなく,しかも,業務の引継ぎとして自己の後任者に12年度資料の電子データを渡しているのであるから,これを単なる閲覧とか参照のために交付したと解するのは困難である。











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