著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作財産権侵害に基づく慰謝料請求の可否(5)
「江戸浮世絵模写作品(書籍)事件」平成180323日東京地方裁判所(平成17()10790) 

 著作権侵害に基づく慰謝料請求について
 
本件において侵害された亡Aの権利は,財産権である著作権(複製権)であり,上記認定の交渉経緯について,被告による原告絵画2及び3の著作権侵害行為があったことを前提としてみても,これにより,原告の人格的利益が著しく侵害されたとまでは認められず,被告の不法行為によって原告に生じた損害については,財産的損害の賠償により回復されることに照らせば,これに加えて慰謝料請求を認める必要があるものとはいえない
 
原告は,被告は,原告各絵画の著作権侵害行為を行ったのみならず,当初は著作権侵害を認めて謝罪しておきながら,その後においては新橋玉木屋事件で既に解決済みの模写作品の著作物性という争点を蒸し返して開き直り,亡Aの画家としての業績・存在を正面から否定するに等しい主張をするなど,不誠実極まりない対応をしたなどと主張する。
 
しかし,仮に被告が当初は謝罪していたとしても,交渉の過程において,後になって法的反論を試みることが許されないものではない。新橋玉木屋事件は,同事件の原告が亡Aであり,審理の対象が江戸時代の浮世絵の模写作品であったことこそ本件訴訟と同様であるものの,本件訴訟とは被告も,対象となった模写作品もそれぞれ異なるのであるから,新橋玉木屋事件における裁判所の判断が,原告各絵画の著作物性について被告が争うことを禁止するものではない。原告の主張は,原告の主張を被告が認めなかったことに対する不満を意味するにすぎず,交渉過程において,相手方の主張を認めなかったことが常に不誠実な対応と評価されるのであれば,交渉における自由な議論が成立しないことは自明のところである。本件各証拠によっても,被告が反論に名を借りて殊更亡Aを誹謗中傷したり,侮辱的表現や著しく不適切な表現を用いたことを認めるに足りる証拠はない。原告各絵画の著作物性を争うことと,亡A の江戸風俗研究家及び画家としての業績を否定することとは,その性質上,明らかに別な事柄であって,前記認定事実によれば,被告の交渉態度を不誠実であると評価することはできない。











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