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黙示の利用許諾を認定した事例(8)
「伝記文学『コルチャック先生』vs.舞台劇『コルチャック先生』事件」平成140619日大阪高等裁判所(平成13()3226 

 95年公演については,平成77月上旬ころに,被控訴人朝日新聞社から被控訴人日本放送協会に対し,テレビ中継の依頼がなされ,被控訴人朝日新聞社,被控訴人劇団ひまわり及び被控訴人日本放送協会の間で協議した結果,95年公演の主催者(被控訴人朝日新聞社及び被控訴人劇団ひまわり)において公演を収録したビデオを制作し,それを被控訴人日本放送協会の関連会社である株式会社NHKエンタープライズ21が買い取って放送することになった。…
 
この合意を受けて,被控訴人劇団ひまわりのGは,そのころ,本件放送を行うことについて,主演俳優であった加藤剛を始め,95年公演の関係者から承諾を取り付け,平成78月上旬ころには,控訴人宅に電話し,応対した控訴人の妻に,95年公演の舞台がテレビで中継放送されることが決まったことと,テレビの放送料は入るが,撮影に費用がかかって利益がほとんど出ないので協力してほしい旨を口頭で説明した。その後も95年公演の上演の際等に控訴人とGが顔を合わせるたびに,本件放送のことが話題に出たが,控訴人からは特に本件放送を行うことについて異論は出ず,控訴人は,本件放送を楽しみにしている,早く放映してほしいとの趣旨の言動に終始した。
 
(略)
 
本件放送の初回放送は,平成8325日に行われたが,その直後の同年4月上旬,自身もコルチャック研究者である控訴人の妻は,Gに手紙を送り,その中では,「ビデオテープをお送りいただきありがとうございました。また先日はお忙しいところお電話を申し訳ございませんでした。」,「テレビやビデオテープをみますとまた感慨も新たになります。本当にいろいろと大変だったのではないでしょうか。」と記載されており,文中に,本件放送に対する抗議は全く記載されていない
 
また,本件放送の2回目は,平成895日に行われたが,その直後の同年102日,控訴人の妻は,被控訴人日本放送協会の番組編集局長に手紙を送り,その中で,「B.S.でA原作の舞台劇(劇団ひまわり)を放映していただき厚く御礼申し上げます。」と記載した。控訴人は,事前に同手紙を見たが,控訴人ないし控訴人の妻から本件放送に対する抗議は一切なかった
 
ところが,控訴人は,その後25か月以上を経過した平成1138日,代理人の弁護士を通じて,被控訴人日本放送協会に対し,本件放送について著作権侵害であるとして損害賠償を請求する旨の通知を送付した。
 
被控訴人朝日新聞社や被控訴人劇団ひまわりからの控訴人に対する連絡は,電話でなされることが多く,その際には控訴人の妻が対応することも多かったが,控訴人は,その都度,妻から電話の内容について報告を受けていた。また,控訴人は,妻が被控訴人朝日新聞社や被控訴人劇団ひまわりに宛てて出した重要な手紙について,事前又は事後報告を受けていた。
 
これらの事実からすれば,控訴人は,被控訴人日本放送協会が本件放送を行うことについて,少なくとも黙示の許諾を与えていたというべきである。
 
控訴人は,本件放送について知っていたにもかかわらず,初回放送後約3年近くも経過してから初めて抗議の意思を表明したことについて,当初は著作権のことをよく知らなかったので,被控訴人日本放送協会が放送してくれるのかという程度にしか思っていなかったが,その後にこのような放送を行うには原作者としての控訴人の許可を得なければならないことが分かってきたからであると供述するが,この控訴人の供述を前提としたとしても,控訴人が,事前及び事後に,本件放送のことを知りながら,それを黙認していたとの前記認定を左右するものではない
 
また,控訴人は,控訴人の妻の言動から本件放送に関する控訴人自身の黙示の許諾を推認することは許されない旨主張する。しかし,前記のとおり,被控訴人朝日新聞社や被控訴人劇団ひまわりから控訴人に対し電話等で連絡がなされた際には,控訴人の妻が対応することも多かったが,控訴人は,その都度,妻から電話等の内容について報告を受けていたのであり,他方,妻が被控訴人朝日新聞社や被控訴人劇団ひまわりに宛てて控訴人に代わって手紙等を出す際にも,事前に目を通したり,報告を受けていたのであって,前記の控訴人の妻の言動はいずれも控訴人の意向を受けたものと認められるから,前記控訴人の主張を採用することはできない。











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