著作権重要判例要旨[トップに戻る]







韓国からのカレンダー輸入販売業者に求められる注意義務
「海賊版ペット写真カレンダー輸入販売事件」
平成121017日大阪地方裁判所(平成11()9425 

【コメント】本件は、ペット写真専門のカメラマンである原告が、自己が撮影して著作権及び著作者人格権を有する写真を無断で使用したカレンダーを被告らが輸入又は販売したとして、被告らに対し、著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(公表権及び同一性保持権)侵害に基づく損害賠償を請求した事案です。 

 被告杉本カレンダーは、日本国内で販売する目的をもって、S(管理人注:韓国のカレンダー会社)が無断で原告写真を複製使用した本件カレンダーを輸入したものであるから、右行為は著作権法11311号により、原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものとみなされる。…
 
したがって、被告杉本カレンダーは、右行為を行うについて故意又は過失があれば、民法709条により、原告に対して損害を賠償する責任を負う。そこで以下、被告杉本カレンダーの故意又は過失の有無について検討する。
 
(略)
 
まず、前記認定のとおり、本件カレンダーの輸入担当者であったFは、韓国においては、カレンダーのコピー商品がよくあると認識していたというのであるから、韓国製のカレンダーを輸入する被告杉本カレンダーとしては、そこに使用されている写真が他人の著作権を侵害するものでないか否かをチェックする注意義務があったというべきである。
 
そして、客観的事実としては、本件カレンダーには、別紙盗用関係一覧表記載のとおりの盗用源から盗用された原告写真が使用されており、同一覧表「盗用源」欄記載のカレンダーについては、被告杉本カレンダーは、少なくともカタログの形では有していたから、それらのカタログと本件カレンダーを照合すれば、原告写真が盗用されていると気付くこと自体は、物理的に可能であったといえる。
 
しかし、過失の有無は、このように原告写真の盗用を気付くことが物理的に可能か否かによって判断すれば足りるものではなく、前記被告杉本カレンダーの認識を前提として、日本のカレンダー業者が韓国からカレンダーを輸入するに当たって通常払うべき注意を怠ったか否か、右注意義務を尽くしていれば原告写真の盗用の事実を認識し得たか否かによって判断されなければならない。
 
そこで、被告杉本カレンダーが払うべき注意義務について検討すると、まず、輸入するのは日本の業者で、輸入する商品はカレンダーであるから、被告杉本カレンダーは、特段の事情がない限り、日本において過去に製作されたカレンダーに掲載された写真を調査すれば足りると解すべきである。
 
次に、いつのカレンダーを調査する注意義務があるかを検討すると、前記のとおり、日本では、毎年、1,500種類程度のカレンダーが製作されているので、被告杉本カレンダーが、他社製作のカレンダーを取り扱うに当たっては、少なくとも、直近1年分のカレンダーによって、当該カレンダーに使用されている写真等が他人の著作権を侵害していないことを調査する義務があるというべきであり、前記によれば、実際、被告杉本カレンダーは、他社製作のカレンダーを取り扱うに当たって、直近1年分のカレンダーを調査していると認められる。
 
しかし、被告杉本カンレンダーは、本件カレンダーの輸入元である韓国においては、カレンダーのコピー商品がよくあると認識していたのであるから、同被告が本件カレンダーを輸入するに当たっては、前記の通常要求される注意義務よりも高度の注意義務が課されるというべきである。そして、本件カレンダーは、いずれも犬の写真を主体とするものであるから、比較照合すべきカレンダーも犬の写真を使用したものに限ることが可能であり、前記のとおり、日本における犬の写真を使用したカレンダーの製作数は年間21種類と比較的少ないことからすると、被告杉本カレンダーが犬の写真以外の写真等が使用されている他社製カレンダーをも取り扱っており、そのため直近1年分の1,500種類程度のカレンダーを調査しているとしても、同被告が、本件カレンダーを輸入するに当たって、通常の場合と同様に直近1年分のカレンダーしか調査対象としなかったというのは、調査範囲として狭きに失するというべきである。
 
そして、杉本カレンダーの前記認識を前提として、日本のカレンダー業者が韓国からカレンダーを輸入するに当たって通常払うべき注意義務を尽くしているといえるためには、特段の事情のない限り、直近2年分は調査すべきであり、それをもって足りると解するのが相当である。もっとも、このような2年分のカレンダーの調査によって、盗用の事実に気付いた場合には、さらに他の写真についても更に過去のカレンダーから盗用されているのではないかとの合理的疑念が生じてしかるべきであるから、その場合には、更に年度を遡って調査する注意義務が生じるというべきである。
 
(略)
 以上の点について、被告らは種々の主張をするので、以下検討する。
 まず被告らは、本件カレンダーに複製使用された写真は、盗用源の写真の一部をカットしたものが多いから、過去のカレンダーを調査して比較対照しても容易に気付くことができないと主張する。
 
確かに、別紙盗用関係一覧表記載の本件カレンダーA、B及びDにおける盗用写真のうちには、盗用源に掲載された写真の一部のみがカットされて複製されたものも多く、比較照合に当たって高度の注意を払わなければ、同一の写真であると認識するのが困難な面もあることは否定できない。しかし、複製使用されたものの中には、盗用源の写真の全体がそのまま複製されたものもあり、また背景の一部のみをカットしたにすぎないものも多数存しているのであって、それらについては、さほど高度の注意を払わなくとも同一の写真であると認識することができたと認められる。そうすると、一部についてであっても、同一の写真が使用されていたことが判明したならば、他にも使用されている写真があるのではないかとの観点から、より慎重に比較照合することが求められるというべきであるから、被告杉本カレンダーは、一部カットして複製使用されたものであっても、なお盗用に気付くべきであったと認めるのが相当である。
 
次に前記認定のとおり、証人Fは、輸入の際にSから写真の使用関係についてはクリアされているとの説明を受けていたと認められる。
 
しかし、もともと韓国で製作されるカレンダーには、コピー商品がよくあるというのが証人Fの認識であったと認められるから、そうである以上、韓国のカレンダーメーカーであるSが右のように説明したとしても、それをもってただちに被告杉本カレンダーが独自に前記の注意義務を尽くすことを免れるとすることはできない。また、Sと被告杉本カレンダーとのこれまでの取引において、今回のような問題が生じたことがなかったことを前提にしても、右の理が変わるところはない。











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