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一般不法行為の成否-容認事例D-
「一般人向け法律解説書‘図解でわかる’侵害事件」
平成180315日知的財産高等裁判所(平成17()10095等) 

 一般不法行為の成否について
 
控訴人が民法709条に基づき求めている損害賠償請求は,被控訴人らの著作権侵害行為を不法行為とするもののほか,被控訴人らが故意又は過失によって,控訴人が多大な労力をかけて作成した控訴人各文献のデッドコピーを行い,控訴人に無断で発行・頒布した行為を不法行為とする請求を含むものである。
 
そこで,上記のような不法行為(以下,著作権侵害による不法行為と区別するために「一般不法行為」という。)が成立するか否かについて検討する。
 
控訴人各文献のような一般人向けの法律問題の解説書を執筆するには,法律的素養のない者にも理解しやすいようにするために,様々な工夫が考えられる。
 
例えば,分類の仕方や説明の順序に関する工夫のほか,記載事項の選択に関して,一定のテーマに絞って説明することや,複雑な事項を理解しやすくするための単純化・簡略化,また,個々の説明を記述する上で,専門用語をできるだけ用いず平易な用語を用いる,抽象的表現を避けて具体例を示す,文章体の代わりに図表を活用する,箇条書きで記載するなどの工夫が挙げられる。他方,法律問題についての説明を記述する際に,このような単純化・簡略化等を図ることは,これを安易に行えば,結果として法的に不正確な記述となるおそれをはらむものであり,このような弊害を避けるための配慮や工夫も必要となる。
 
そして,控訴人各文献の具体的記載を,原判決別紙「複製権及び翻案権侵害に関する当事者の主張並びに当裁判所の判断」中,「原告の主張」欄に記載された説明を参照しつつ見ると,控訴人各文献を執筆する上で,上記のような様々な工夫が図られていることが認められる。
 
しかし,このように控訴人各文献を執筆する上で様々な工夫が図られているとしても,その成果物としては,控訴人のした様々な工夫は普通に考えられる範囲内にとどまり,かつ,このために表現そのものがありふれたものとなっている以上,著作権侵害の成立が認められないことは,前記において認定したとおりである。一般人向けの解説を執筆するに当たっては,表現等に格別な創意工夫を凝らしてするのでない限り,平易化・単純化等の工夫を図るほど,その成果物として得られる表現は平凡なものとなってしまい,著作権法によって保護される個性的な表現からは遠ざかってしまう弊を招くことは避け難いものであり,控訴人各文献の場合も表現等に格別な創意工夫がされたものとは認められない。
 
もっとも,控訴人各文献を構成する個々の表現が著作権法の保護を受けられないとしても,故意又は過失により控訴人各文献に極めて類似した文献を執筆・発行することにつき不法行為が一切成立しないとすることは妥当ではない。執筆者は自らの執筆にかかる文献の発行・頒布により経済的利益を受けるものであって,同利益は法的保護に値するものである。そして,他人の文献に依拠して別の文献を執筆・発行する行為が,営利の目的によるものであり,記述自体の類似性や構成・項目立てから受ける全体的印象に照らしても,他人の執筆の成果物を不正に利用して利益を得たと評価される場合には,当該行為は公正な競争として社会的に許容される限度を超えるものとして不法行為を構成するというべきである。
 
以上の観点から,本件における一般不法行為の成否について検討する。
 
(略)
 
以上によれば,被控訴人らは,控訴人各文献に依拠して,記述自体の類似性や構成・項目立ての全体に照らして控訴人各文献に酷似している被控訴人各文献を,控訴人各文献と同一の読者層に向けて,特に被控訴人文献1及び3については控訴人文献1及び3の出版後極めて短期間のうちに,執筆・発行したものであるから,控訴人の執筆の成果物を不正に利用して利益を得たものというべきである。
 
そして,被控訴人らの故意・過失については,被控訴人各文献の執筆者である被控訴人Y1及び同Y2については,控訴人各文献に依拠して被控訴人各文献を執筆した以上,少なくとも過失があることは明らかであり,発行者である被控訴人会社についても,原判決中…に認定した事実に照らせば,過失が認められる。
 
したがって,被控訴人らが控訴人各文献に依拠して被控訴人各文献を執筆・発行した行為は,営利の目的をもって,控訴人の執筆の成果物を不正に利用して利益を得たものであるから,被控訴人らの行為は公正な競争として社会的に許容される限度を超えるものとして不法行為(民法7191項による不真正連帯責任)を構成するというべきである。











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