著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作者の「推定」を覆した事例(2)
「コスモ石油研究所書籍事件」平成131225日東京地方裁判所(平成13()788/平成150626日東京高等裁判所(平成14()573 

【原審】

 
上記で認定した事実によると,本件書籍は,米国石油精製業者協会の年次大会における講演発表のために,昭和62年秋ころから,Dが,被告BCの意見を取り入れて,本件報告書等に基づいて作成したものであって,原告は,作成に関与していないものと認められる(図や表など本件書籍の一部についても,原告が作成に関与したことをうかがわせる証拠はなく,原告は,作成に関与していないものと認められる。)。
 
著作権法14条は,名前が表示されている者を著作者として推定しているが,上記認定事実からすると,原告は,本件書籍の作成に関与しておらず,本件書籍の表現を創作したということはできないから,推定を覆すに足りる事実が認められ,原告が本件書籍の著作者であるとは認められない。
 
原告は,…を提出している。しかし,これらは,…といった触媒の開発に関する証拠であり,本件書籍の作成に関するものではない。原告が,上記触媒の開発に関与していたとしても,上記認定のとおり,本件書籍の作成に関与していない以上,原告が本件書籍の表現を創作したということはできないから,著作者であるとは認められない。

【控訴審】

 
本件書籍には,標題の直下に控訴人,C及びDの氏名が記載されている。これらの氏名の記載は,本件書籍の著作者としての表示であると認められる。
 
著作権法14条は,「著作物の原作品に,…その氏名が…著作者名として通常の方法により表示されている者は,その著作物の著作者と推定する。」と規定している。本件書籍に著作者として表示されている控訴人は,上記規定により,本件書籍の著作者であるとの推定を受けることが明らかである。
 
しかしながら,本件においては,上記推定を覆すに足りる事実を認めることができるというべきである。
 
著作者とは,「著作物を創作する者」(著作権法212号)であり,書籍の著作者とは,当該書籍の表現の創作に関与した者をいう(なお,控訴人は,原判決が創作行為の有無を問題とせず,「書籍の作成」という物理的行為の有無を問題としている,と主張する。しかしながら,原判決が「書籍の作成」の語を,創作行為を意味するものとして用いていることは,その説示自体から明らかである。原告の主張は,原判決の誤った理解に基づくものであり,採用することができない。)。
 本件書籍の表現の創作に関しては,次の事実が認められる。
 
(略)
 
上記@ないしBを総合するならば,反対に解すべき事情の認められない限り,控訴人は,本件書籍の原稿の作成に関与しておらず,その表現の創作に関与していないと推認するのが相当である。
 
そこで,本件において,控訴人が本件書籍の表現の創作に関与していない,との上記認定を覆すに足りる反対の事情が認められるか否かについてみる。
 
(略)
 控訴人は,同人が,本件書籍に記載された触媒の開発研究に関与しており,本件書籍に用いられた図,表の基となった本件報告書の作成にも関与したから,同人を本件書籍の著作者と認めるべきである,と主張する。
 しかしながら,本件において請求の根拠とされているのは,控訴人が本件書籍の共同著作者の一人であるということであるから,問題とすべきは,控訴人が本件書籍の表現の創作に関与したか否かである。控訴人が触媒の開発研究や本件報告書の作成に何らかに形で関与していたとしても,そのことは,直ちに控訴人が本件書籍の表現の創作に関与したことに結び付くわけではなく,控訴人が本件書籍の表現の創作に関与していない,との上記認定を覆すに足りるものではない,というべきである。控訴人の主張は採用することができない。
 
以上のとおりであるから,控訴人が本件書籍の表現の創作に関与していない,との前記認定を覆すに足りる反対の事情があると認めることはできないというべきである。











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