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写真の廃棄に基づく損害賠償が問題となった事例
「委託撮影写真引渡し・廃棄・返還事件」
平成140711日東京高等裁判所(平成13()6159 

【コメント】控訴人は、フリーのカメラマンであり、被控訴人(具体的には、被控訴人が発行する雑誌「エイビーロード」の編集部)の委託を受けて撮影し、引き渡した4000枚余りの写真(「本件写真」)について、これを被控訴人に預託したとして、その引渡後10年前後経過した後、それらの返還を求めましたが、被控訴人は、その大部分を既に廃棄しており、返還しませんでした。本件は、廃棄された本件写真の所有権・著作権侵害に基づく精神的及び財産的損害を根拠に、控訴人が、被控訴人に対し、損害賠償を請求した事案です。 

 本件写真の廃棄に基づく所有権・著作権侵害に基づく財産的損害並びに精神的損害について
 控訴人の主張の要点は,本件写真のうち,当面雑誌に掲載することが予定されていないものについて,その扱いがどうなるかをC(管理人注:当時のエイビーロードの編集長)に尋ねたところ,同人が,今後使用する可能性があるので預からせてほしい旨答えた,との事実があったことを前提に,これをもって,法的には,本件写真の預託契約と,本件写真を2次,3次使用する場合は,控訴人に著作権料を支払うとの合意(以下「本件合意」という。)があったと認めるべきである,とするものである。そして,被控訴人は,2次使用,3次使用の可能性がないと判断した以上,速やかに本件写真を控訴人に返還すべきであったのに,これを怠り,あるいは,返還するまでの間善良な管理者の注意義務をもって保管すべきであったのに,これを怠り,廃棄した,というものである。
 
(略)
 
被控訴人において,カメラマンに撮影を依頼して引渡しを受けた写真を,撮影者から承諾を得るなどの手続を要せず,被控訴人が自由に使用でき,返還義務も負わない状態にあったとのB(管理人注:被控訴人の従業員)及びCの各供述は,フィルム代,現像代,旅費等は被控訴人側(被控訴人に仕事を依頼した者を含む。)が負担し,比較的安い水準であったとはいえ,日当も支払っていること,昭和62年ないし63年当時,エイビーロードが自由に使える写真の蓄え(ストック)を増やす必要があったこと,保管された写真は,専ら被控訴人の使用の便宜から,著作者ごとではなく,地域ないし国ごとに分類されていたことも併せ考慮すると,相当に信憑性があるとみることができる。そして,もし,Cその他の被控訴人の担当者が,このような認識を持っていたとしたら,Cらが本件写真を将来返還することを前提とする約束をするということは,考えにくいことというべきである。
 
したがって,上記B及びCの各供述に照らし,控訴人の原審での供述は直ちに採用することができない。
 
控訴人は,控訴人が自らフィルムを用意して,現像もしたというが,その代金は被控訴人が負担している。また,控訴人が自らマウントしたとの事実をもって,本件写真の所有権等の帰属について,別異の扱いがされたと認めることはできない。
 被控訴人は,控訴人から本件写真の返還を求められた際,現存する写真35枚を返還することを申し入れているが,これは,紛争が尖鋭化しないよう穏便に解決しようとの考えに基づくものともみることができ,少なくともこの事実をもって,本件写真の保管,返還義務の存在を被控訴人が自認していたものと認めることはできない。
 他に,控訴人が主張する「預からせてほしい。」旨の発言が被控訴人の担当者からなされたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
 
上に述べたところに,被控訴人が,10年前後にわたり,本件写真について所有権についてにせよ著作権についてにせよ権利者としての行動を示していないこと(原告本人尋問の結果によって明らかである)をも加えて,総合的に考察すると,被控訴人は,本件写真の撮影を控訴人に依頼したころ,引渡しを受けた写真は,被控訴人のものとなり,したがって,被控訴人は,これを自由に使用でき,返還する義務も負わない,との合意の下に,カメラマンに依頼する扱いを採用しており,控訴人の場合もその例外ではなかった,と認めることができる。そして,それにもかかわらず,被控訴人が,控訴人に対して本件写真の保管義務を負っていると認めさせる資料は,本件全証拠によっても認めることができない。そうである以上,本件写真の廃棄の事実に基づく請求は,契約を理由にするにせよ,所有権・著作権を理由にするにせよ,認められないという以外にない。











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