著作権重要判例要旨[トップに戻る]







貸与権侵害を肯定した事例
「プログラム無断貸与事件」
平成160618日東京地方裁判所(平成14()15938 

【コメント】本件において、原告(別紙目録のプログラムを作成した株式会社)は、当該各プログラムについて著作権を有するとして、被告NTTリースは財団法人電気通信共済会(「訴外財団」)に対してのみ再使用許諾を行い得るという条件で、原告から当該各プログラム著作物の使用許諾を受けたにもかかわらず、原告に無断で被告ビリングソリューションに使用許諾を行い、被告ビリングソリューションにこれらのプログラムを使用させたとして、被告らに対して、著作権(貸与権)侵害を理由とする損害賠償の支払い等を求めました。 

 [貸与権侵害について]
 
…を総合すれば,@本件各使用権設定契約において,原告は被告NTTリースに対し,本件各プログラムの複製物の被告NTTリースからの貸与の相手方を訴外財団に限定し,原告の承諾を得ないで訴外財団以外の者に貸与することを禁じる使用権の設定を行ったこと,A訴外財団,被告ビリングソリューション及び被告NTTリースは,平成13630日,本件権利義務譲渡契約を締結し,同年7月以降,被告ビリングソリューションが本件各プログラムの複製物を使用するようになったこと,B訴外財団は,本件プログラム2に関する一部のリース契約上の地位を本件権利義務譲渡契約の対象とはせずに,東北通信及びテルウェル西日本に譲渡したため,平成137月以降は東北通信及びテルウェル西日本も本件各プログラムの複製物を使用するようになったこと,C被告NTTリースは,上記A及びBのリース契約上の地位の譲渡について,原告の承諾を得ることのないまま,これらを承認し,平成137月以降は被告ビリングソリューション,東北通信及びテルウェル西日本からリース料を徴収していたことが認められる。
 
以上の各事実を総合すると,被告NTTリースは,訴外財団以外の者に対して原告の承諾を得ないで貸与することを禁止されている本件各プログラムにつき,原告の承諾を得ないまま,被告ビリングソリューション,東北通信及びテルウェル西日本(以下,この3社を総称して「被告ビリングソリューション等」という。)に貸与したものと認められ,原告の本件各プログラムの貸与権(著作権法26条の3)を侵害したものということができる。
 
したがって,被告NTTリースが被告ビリングソリューションに本件各プログラムを使用させた行為につき貸与権侵害をいう原告の主張は,理由がある。
 
被告らは,この点に関し,著作権法26条の3に定める貸与権は,「公衆」に対する提供を伴うことを要するものであり,訴外財団から被告ビリングソリューション等への貸与先の変更は,「公衆」の要件を満たさないから,貸与権侵害は成立しないと主張する。
 
そこで判断するに,著作権法26条の3にいう「公衆」については,同法25項において特定かつ多数の者を含むものとされているところ,特定かつ少数の者のみが貸与の相手方になるような場合は,貸与権を侵害するものではないが,少数であっても不特定の者が貸与の相手方となる場合には,同法26条の3にいう「公衆」に対する提供があったものとして,貸与権侵害が成立するというべきである。
 
この点,本件のように,プログラムの著作物について,リース業者がリース料を得て当該著作物を貸与する行為は,不特定の者に対する提供行為と解すべきものである。けだし,「特定」というのは,貸与者と被貸与者との間に人的な結合関係が存在することを意味するものと解されるところ,リース会社にとってのリース先(すなわちユーザ)は,専ら営業行為の対象であって,いかなる意味においても人的な結合関係を有する関係と評価することはできないからである。
 
本件においては,被告ビリングソリューション,東北通信及びテルウェル西日本は,いずれもNTTグループの企業であるにしても,リース業者である被告NTTリースとの関係では単なるリース先(ユーザ)であるから,被告NTTリースが被告ビリングソリューション等に対して本件各プログラムを貸与した行為は,公衆に対する提供に当たり,原告の貸与権を侵害するものというべきである。
 
仮に,被告らの主張するように,訴外財団と被告ビリングソリューション等との間に両者を同一視できるような密接な関係があったとしても,それは,原告の承諾を得ないでリース先を変更することが本件各使用権設定契約違反とならない特段の事情が存在するという主張としてはともかく(本件においては,そのような特段の事情があるということはできないが),プログラムの貸与先であるリース先(ユーザ)が貸与者であるリース業者との関係で「公衆」に該当することを否定する事情とは,なり得ないものである。
 
上記のとおり,被告ビリングソリューション等が著作権法著作権法26条の3にいう「公衆」に該当しない旨をいう被告らの主張は,採用できない。
 [共同不法行為について]
 
原告は,被告NTTリースが被告ビリングソリューションに対して本件各プログラムを使用させたことによる上記貸与権侵害については,被告ビリングソリューションによる共同不法行為も成立すると主張する。
 
しかし,著作権法上,貸与行為について一定の行為が著作権(貸与権)侵害とされているにもかかわらず,被貸与者の行為について著作権侵害となる行為が規定されていないこと,著作権法1132項が,プログラム著作物の違法複製物の使用について,違法複製物であることを知って複製物の使用権原を取得した場合に限って著作権侵害を構成するものとしていることに照らせば,プログラム著作物について貸与権侵害行為が行われた場合においても,被貸与者の行為が独自に著作権侵害を構成することはなく,ただ,被貸与者において貸与者が権限なく貸与行為を行っていることを知りながら貸与を受けた場合につき貸与者の行為に意を通じて加功したものとして,共同不法行為者としての責任を負う場合があるにすぎない
 
本件においては,本件全証拠を総合しても,被告ビリングソリューションにおいて,被告NTTリースが本件各プログラムの複製物を貸与する権原を有していないことを知りながら,訴外財団からリース契約上の地位の譲渡を受けたとまでは認められない。したがって,貸与権侵害につき被告ビリングソリューションが共同不法行為者としての責任を負うとする原告の主張は,採用できない。











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