著作権重要判例要旨[トップに戻る]







映画製作の請負に伴う当該映画の脚本の著作権の帰属(譲渡の有無)が問題となった事例
「映画『ちぎれ雲』脚本事件」
平成120425日東京地方裁判所(平成11()12918 

【コメント】本件は、映画監督、脚本家であり、映画製作会社である株式会社フィルム・クレッセントの取締役である原告が被告(テレビ映画・演劇製作等を業務とする会社)に対し、「本件脚本」について著作権を有することの確認を求めるとともに、被告が「本件小説」に関する原告の氏名表示権を侵害したと主張して、不法行為による損害賠償を求めた事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

被告の実質的オーナーであるCは、老人介護の問題を正面から取り上げた映画の製作を発案し、その映画の監督として予定されていた原告は、平成105月ころ、老人介護をテーマとする映画「ちぎれ雲」(「本件映画」)の脚本を執筆した。

被告とフィルム・クレッセントは、平成106月、フィルム・クレッセントが5,000万円で本件映画の製作を請け負う旨の契約(「本件契約」)を結んだ。
 
※本件契約の契約書には、次の趣旨の条項が含まれていました。
『第4条 本映画の著作権は、甲(被告。以下同じ。)が100パーセント保有する。』
『第8条 甲は本映画を、国の内外を問わず、あらゆるゲージのあらゆる媒体を使用して複製し、かつそれらの複製物を販売し、配給し、上映し、放送するほか、現に知られているならびに将来開発されるあらゆる種類の手段方法によって、利用することができる。』
『第12条 乙(フィルム・クレッセント。以下同じ。)は本映画の製作に際し、本映画に使用する著作物(原作・脚本・音楽等)の著作者、創造的要素(監督・撮影・編集等)を担当する者及び出演者等との間に第8条の権利を不完全ならしめる内容の契約を締結していないことを甲に対して保証する。万一、甲が第8条所定の権利を行使した際に、これらの者から異議申し立てがなされた場合は、乙は乙の責任と負担においてこれを処理解決し、甲に対しいかなる迷惑損害もかけないものとする。』

被告は、原告が本件映画の脚本(「本件脚本」)の著作権を有することを争っている。 


 …のとおり、本件脚本は、原告が執筆したものであるから、その著作権を有するのは原告であると認められる。
 
被告は、原告が本件脚本の著作権を有することを争い、@被告は右著作権を原始的に取得した、A仮にそうでないとしても、本件契約により原告から右著作権の譲渡を受けたと主張する。
 
しかし、法人である被告が本件脚本のような言語の著作物の著作権を原始取得するのは、著作権法151項(職務著作)の規定が適用される場合だけであるところ、被告が前記…で主張するような事情は右職務著作の規定の適用の要件たる事実には当たらないから、被告の右@の主張は主張自体失当である。
 
次に、被告の右Aの主張について判断する。本件契約には、右認定のような趣旨の条項があることが認められるが、これらの条項は、被告に本件映画の著作権が帰属すること(第4条)、被告が本件映画について利用権を有すること(第8条)及びフィルム・クレッセントが本件映画の脚本等の著作者等との関係で被告の右利用権を保証すること(第12条)を定める条項であることはその文言上明らかである。本件脚本の著作権の帰属は、右の映画に関する著作権の帰属やその利用関係とは別個に定まるものである上、原告が本件脚本の著作権を有するとしても、原告が本件映画について本件脚本の利用を許諾していれば、被告が右の各条項によって認められた権利を行使することの障害となることはないものと解されるから、右の各条項が存するからといって、原告が本件脚本の著作権を被告に譲渡したものと認めることはできない。また、…のとおり、本件映画はCが発案したものであり、その脚本は何人かの脚本家に依頼し、最後に原告に依頼して作られたものであるが、そのような事情は、本件脚本の著作権の帰属を左右するものとは認められない。さらに、…によると、本件契約の請負代金中には、原告の脚本料が含まれていることが認められるが、脚本料の趣旨、内容について被告と原告又はフィルム・クレッセントとの間で話合いがされた事実を認めるに足りる証拠はないこと、証拠(原告本人)によると、原告は、右脚本料について脚本を映画に使用することに対する対価であると考えていたものと認められること、本件契約のような映画の請負契約において脚本料は脚本の著作権の譲渡代金であると一般に理解されていたことを認めるに足りる証拠はないことを総合すると、右脚本料支払の事実があるからといって、原告が本件脚本の著作権を被告に譲渡したとは認められない。そして、他に右譲渡の事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、被告の右の主張は採用できない。











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