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著作権の信託的譲渡の事実を否定した事例
「黒沢映画楽曲JASRAC作品届事件」
平成121130日東京地方裁判所(平成11()5090 

【コメント】本件において、原告(JASRAC)は、被告エンダが、【B】楽曲につき作曲者である亡【B】から著作権の譲渡を受けた事実がないにもかかわらず、譲渡を受けているものとして原告に対して作品届を提出し、著作物使用料の分配を受けた行為について、主位的に、被告【F】(被告エンダの代表取締役)と共謀の上当該金員を詐取したことを理由とする被告ら両名に対する不法行為に基づく損害賠償請求、予備的に、法律上の原因なく当該金員の分配を受けたことを理由とする被告エンダに対する不当利得返還請求などを求めました。

 
なお、本件においては、次のような事実がありました。

被告【F】は、自身が中心となって昭和462月、グッドミュージックを設立した。グッドミュージックの設立発起人は7名であり、その中には被告【F】と【B】が含まれていた。グッドミュージックの設立時の役員は4名であり、被告【F】は代表取締役に就任し、同社を運営していた。なお、グッドミュージックは、昭和464月、原告の会員資格を取得している。

グッドミュージック社は、平成8年、資本金が最低資本金の額に達しないことを理由にみなし解散となった。そのため、現在では、被告【F】が運営していた時期の分も含め、契約書、財務関係等の資料は存在していない。

被告【F】は、昭和531月、被告エンダを設立し、当初から現在までその代表取締役として、被告エンダを運営している。

B】楽曲については、昭和52126日受付でグッドミュージックから原告に対し作品届が提出され、その後、平成21130日受付で、グッドミュージックから被告エンダに対し【B】楽曲を含む44曲の著作権を譲渡したとして解約届が、被告エンダからは作品届がそれぞれ提出されている。 


 著作権譲渡の事実の存否について
 
右に認定の事実を前提に、【B】がグッドミュージックに対し【B】楽曲の著作権を信託的に譲渡したかどうかを判断するに、次の各点を指摘することができる。
 
第一に、右譲渡の事実を裏付ける客観的な証拠がない
 
すなわち、著作権譲渡の事実が存在するとすれば、それを証する契約書等の書類があってしかるべきであるが、そのような書類は現存しない(みなし解散となったグッドミュージックはともかく、少なくとも【B】は書類を保管していてしかるべきである。)。また、【B】の有する著作物使用料の取り分(二分の一)についてグッドミュージックからの支払を証明する書類(振込依頼書等)も存在しない。
 
(略)
 
第二に、当事者である【B】とグッドミュージックの代表者であった被告【F】との間には著作権の信託的譲渡をするような人的関係が存在しなかった
 
すなわち、譲渡があったとされる昭和45年から同46年にかけて、【B】と被告【F】は知り合って日が浅く、しかも【B】は【L】映画の背景音楽に関する海外での著作権を他人に譲渡したことを後悔していたのであるから、簡単に著作権を他人に譲渡することは考えにくい。しかも、【B】のような著名な作曲家が、被告【F】のように業界で顕著な実績を挙げていたとは言い難い者が経営する会社に対し、将来にわたり著作物による収益の半分を与えるという内容の契約をするというのは、余りに不合理である。
 (略)
 
第三に、仮に譲渡があったとすると、被告【F】のその後の行動は不合理である
 
すなわち、被告【F】の供述するように、原告から分配された【B】楽曲の著作物使用料を【B】に再分配する義務のあることを認識しながらそれを怠っていたのであれば、当然その旨を【B】に報告した上で詫びてしかるべきであり、その機会もあったのに、被告【F】は本件が発覚するまで【B】にその旨を謝罪したことはなく、かえって、被告エンダの主催するコンサートのチケット10枚の購入を【B】に依頼し、その代金の支払を電話で要求していたというのである。これは、著作物使用料の再分配をすべき義務を負っている者の態度としては説明が困難である。
 
以上によれば、被告【F】の陳述書に記載のあるように【B】が「昭和ブルース」の著作権を小学館プロダクションに譲渡したという事実が仮に認められるとしても、B】がグッドミュージックに対し【B】楽曲の著作権を信託的に譲渡したことを認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 
そうすると、グッドミュージックから被告エンダに対する著作権譲渡の事実の存否につき判断するまでもなく、被告エンダは法律上の原因なく原告から著作物使用料の支払を受けたということになる











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