著作権重要判例要旨[トップに戻る]







一般不法行為の成否-否認事例M-
「『モディリアーニとその仲間たち展』カタログ事件」
平成130130日東京地方裁判所(平成6()11425 

【コメント】本件は、フランス人の画家である【P18】の絵画の鑑定人であり、【P18】の著作物に対する著作権の二分の一を有すると主張する原告が、被告らが開催し又は関与した【P18】の絵画の展覧会に関し、@贋作を真作として展示し、カタログに複製したことにより原告の人格権が侵害された、A原告の許諾を得ることなくカタログに【P18】の絵画を複製して掲載したことにより原告の著作権(複製権)が侵害された、と主張して、被告らに対し、著作権及び人格権に基づき同カタログの複製、頒布の差止め、人格権に基づき謝罪広告の掲載、著作権及び人格権の侵害に基づき損害賠償などを求めた事案です。 

 (【P18】に対する敬愛の情に基づく請求の当否について)
 
原告は、@原告が【P20】(管理人注:【P18】の妻)の秘書として同人に仕えたこと、A同人の死後も一貫してモーリス・ユトリロ・アソシエーションの会長として【P18】の著作物の保護等の活動に携わっていることなどを挙げて、原告の【P18】に対する敬愛の情は、人格権として不法行為法上の保護に値する旨主張する。
 
一般に、条文(民法710条)に明文で規定されている身体、自由、名誉といった権利のほか、一定の個人の人格に関わる権利ないし利益は、「人格権」と呼べるか否かは別として、不法行為法上の保護を受け得る場合があると認められる(最高裁昭和63216日第三小法廷判決参照)。そして、当該権利、利益が不法行為法上の保護を受け得るかどうかは、個々の権利、利益の内容に照らし、具体的に検討する必要があり、その際には関連する法の規定をも斟酌するのが相当である。
 
ところで、著作者の死後における人格的利益の保護に関する規定である著作権法116条は、著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を期するため、著作者の人格と親密な関係を有し、その生前の意思を最も適切に反映することができると考えられるその配偶者若しくは二親等内の血族又は著作者の遺言で指定された者が、その著作者人格権の侵害となるべき行為に対し、差止請求権又は名誉回復等措置請求権を行使し得ることとしている。そして、著作者人格権が、もともと著作者の一身に専属し、譲渡することができない権利であること(著作権法59条)からすれば、著作権法116条に定める遺族等以外の者は、著作者の死後において著作者人格権を保護するための措置を執ることはできないことはもちろん、その人格的利益の保護を求めることもできないと解するのが相当である。また、請求の主体の点をおくとしても、原告主張の事実をもってしては、いまだ、原告の【P18】に対する敬愛の情は、私的な感情にとどまるものであって、法的な保護に値する利益と認めることはできない。
 
以上によれば、原告の【P18】に対する敬愛の情に基づく差止め、損害賠償及び謝罪広告掲載の各請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がない。
 
(鑑定人としての名誉の毀損を理由とする損害賠償請求について)
 
原告は、本件絵画2が贋作であることを前提に、これが本件展覧会で展示されたこと、これを複製して掲載した本件カタログが頒布されたことにより、原告が贋作に展覧会歴やカタログ歴を作ることに加担したという外形が作出され、その結果【P18】の絵画の鑑定人としての原告の名誉が毀損されたと主張する。
 
しかし、仮に原告が【P18】の絵画について権威ある鑑定人であるとしても、そのこと及び原告が【P18】の著作物につき著作権の二分の一の持分を有することを知っているのは、我が国では一部の美術関係者に限られると認められる上に、本件全証拠によっても、右各絵画について、原告が何らかの鑑定をし、あるいは本件展覧会の開催に関与した旨が、本件展覧会における表示や本件カタログその他の配付資料に記載された事実を認めることはできないから、原告主張の外形の作出及び鑑定人としての名誉の毀損が生じたことを認めることはできない
 したがって、【P18】の絵画の鑑定人としての名誉の毀損を理由とする損害賠償請求は理由がない。











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