著作権重要判例要旨[トップに戻る]







美術展覧会の主催者に求められる注意義務
「『モディリアーニとその仲間たち展』カタログ事件」
平成130130日東京地方裁判所(平成6()11425 

【コメント】本件は、フランス人の画家である【P18】の絵画の鑑定人であり、【P18】の著作物に対する著作権の二分の一を有すると主張する原告が、被告らが開催し又は関与した【P18】の絵画の展覧会に関し、原告の許諾を得ることなくカタログに【P18】の絵画を複製して掲載したことにより原告の著作権(複製権)が侵害されたと主張して、被告らに対し、著作権等の侵害に基づき損害賠償などを求めた事案です。 

 [本件岩手展について]
 
…によれば、次の事実が認められる。
 本件岩手展に関し、被告岩手日報社と同日本アドヴィザーは、平成510月、展覧会の実施に関する契約を締結した。この契約には、被告岩手日報社は、展覧会の企画、演出、装飾その他一切の運営及び展覧会を成功させるために必要な一切の広告宣伝活動をその費用で行うこと、被告日本アドヴィザーは、本件岩手展に関して著作権についての使用許可の手続、カタログの編集及び制作の役務を提供することなどが定められていた。
 
本件カタログを実際に制作したのは被告日本アドヴィザーであるが、本件カタログ2頁目の各展覧会の「会期、会場、主催」欄については、事前に被告日本アドヴィザーから被告岩手日報社に校正刷が送られ、担当者が校正をした。右の「主催」欄には、被告岩手日報社の名称が記載されている
 
被告岩手日報社は、著作物である本件絵画1の使用許諾の手続については、前記契約条項に基づき被告日本アドヴィザーに一任し、自ら著作権者の許諾を得る手続は執らなかった
 (略)
 
右の事実関係によれば、被告岩手日報社は本件岩手展の主催者として、本件カタログが右展覧会の会場で自ら又は被告日本アドヴィザーにより頒布されることを認識しており、しかも一部とはいえ事前に本件カタログの内容につき意見を述べる立場にあったのであるから、被告日本アドヴィザーをして本件カタログを制作させたものということができる。
 
そして、被告岩手日報社は、著作物の使用許諾の手続につき被告日本アドヴィザーに一任し、事前に許諾を得たことを証する書面の提出を求めるなどの措置を執らなかったのであるから、著作権の侵害につき少なくとも過失があったものと認められる。
 
(略)
 
[本件大阪展について]
 
…によれば、次の事実が認められる。
 被告ナビオ阪急は、平成5年秋ころ、同大阪読売新聞社に対して、具体的な展覧会の開催事務は行わないという前提で、本件大阪展の主催者となることを依頼した。被告大阪読売新聞社は、関連会社の株式会社大阪読売広告社が被告ナビオ阪急が設置するナビオ美術館の運営に関係していること、以前にも同様の形式で被告ナビオ阪急の依頼を受けて美術展を主催した実績があったことから、右依頼を承諾した。
 
被告ディー・スクエアと同日本アドヴィザーは、平成6228日、本件大阪展の実施に関する契約を締結した。この契約には、被告大阪読売新聞社ほかが本件大阪展を主催し、会場はナビオ美術館であること、被告日本アドヴィザーは、本件大阪展に関して著作権についての使用許可の手続、カタログの編集及び制作の役務を提供することなどが定められていた。
 
本件カタログを実際に制作したのは被告日本アドヴィザーであるが、本件カタログ2頁目の各展覧会の「会期、会場、主催」欄については、事前に被告日本アドヴィザーから被告大阪読売新聞社に校正刷が送られ、担当者がその内容を確認した。右の「主催」欄には、被告大阪読売新聞社、同讀賣テレビ放送の名称が、「会場」欄には「ナビオ美術館」の名称が記載されている。そして、被告大阪読売新聞社発行の平成6318日付け読売新聞夕刊には、本件大阪展開催の記事が掲載されており、主催者として、被告大阪読売新聞社、同讀賣テレビ放送の名称が記載されている。
 被告大阪読売新聞社は、著作物である本件絵画1の使用許諾の手続については、被告日本アドヴィザー又は同ナビオ阪急において適正に処理をしたものと信じており、自ら著作権者の許諾を得る手続は執らなかった。また、被告ナビオ阪急は、右手続については、前記契約条項に基づき被告日本アドヴィザーにおいて適正に処理をしたものと信じており、自ら著作権者の許諾に一任し、自ら著作権者の許諾を得る手続は執らなかった
 (略)
 
右の事実関係によれば、被告大阪読売新聞社は本件大阪展の主催者として、本件カタログが右展覧会の会場で頒布されることを認識しており、しかも一部とはいえ事前に本件カタログの内容につき意見を述べる立場にあったのであるから、被告日本アドヴィザーをして本件カタログを制作させたものということができる。そして、被告日本アドヴィザーは本件カタログを実際に制作した者、被告ナビオ阪急は本件大阪展の会場で本件カタログを販売した者として、被告大阪読売新聞社と共同して、原告の著作権を侵害したものと認められる。他方、被告讀賣テレビ放送については、本件カタログ及び前記新聞記事に主催者として表示されていること以上に本件カタログの制作、販売に関与したことを認めるに足りる証拠はない。
 
そして、被告日本アドヴィザーは著作物の使用許諾を得ておらず、許諾が得られたものと信じたことに過失があったことは前記認定のとおりであり、被告大阪読売新聞社及び同ナビオ阪急は、右手続につき被告日本アドヴィザーに一任し、事前に許諾を得たことを証する書面の提出を求めるなどの措置をとらなかったのであるから、著作権の侵害につき少なくとも過失があったものと認められる。











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