著作権重要判例要旨[トップに戻る]







二次的著作物の侵害性判断(4)
YG性格検査用紙損害賠償等請求事件」平成190612日大阪地方裁判所(平成17()153等) 

【コメント】本件における「第1事件」は、原告Xが、被告会社によるYGPI用紙を含むYG性格検査のための検査用紙(「被告用紙」)の発行等は、「本件用紙」に対する原告Xの著作権(複製権又は翻案権)を侵害すると主張して、被告会社及びその代表取締役である被告Yに対し、著作権侵害の不法行為に基づき、連帯して損害賠償等を求めた事案です。 

 上記認定事実によれば,本件用紙は,昭和41年用紙に依拠してこれに改変を加えたものであり,昭和41年用紙は,昭和30年代用紙に依拠してこれに改変を加えたものであり,さらに昭和30年代用紙は,昭和32年論文に依拠して開発・作成されたものであることが認められる。
 したがって,本件用紙の著作物性の有無を検討するためには,昭和32年論文と昭和30年代用紙の関係,昭和30年代用紙と昭和41年用紙の関係,昭和41年用紙と本件用紙の関係を検討する必要がある。
 
(略)
 上記認定の事実により,昭和32年論文,昭和30年代用紙,昭和41年用紙及び本件用紙を対比すると,次のとおりである。
 
(昭和32年論文と昭和30年代用紙)
 
昭和30年代用紙における質問文の配列,質問文の内容,プロフィールの構成は,いずれも昭和32年論文で発表された内容と同一であり,そこに何らかの創作的部分が新たに付加されたものとは認められない。
 
したがって,昭和30年代用紙は,昭和32年論文に依拠し,その内容及び形式を覚知させるものを有形的に再製したもの,すなわち複製したものにすぎず,それ自体としては昭和32年論文とは別の著作物と認めることはできない。
 
(昭和30年代用紙と昭和41年用紙)
 
昭和30年代用紙と昭和41年用紙は,いずれも三つ折り・六面の用紙で,@表紙,A質問文,B回答表,C粗点集計欄,Dプロフィール表を構成要素としている点で共通している。
 
他方,両用紙は,質問文の配列,プロフィールの構成,系統値の表示の有無及びプロフィール判定基準の有無において相違する。
 
ところで,…によれば,質問文の配列及びプロフィールの構成は,YG性格検査の中核的部分をなすものであることが認められる。
 
したがって,昭和41年用紙は,質問文の配列及びプロフィールの構成という具体的表現において,昭和30年代用紙にはない創作的部分を新たに付加したものである。したがって,昭和41年用紙は,既存の昭和32年論文(前示のとおり昭和30年代用紙は昭和32年論文に依拠しその内容及び形式を覚知させるものを有形的に再製したものである。)に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作したものであり,既存の昭和32年論文を翻案したものというべきである(最高裁平成13628日第一小法廷判決参照)。したがって,昭和41年用紙は,昭和30年代用紙が依拠した昭和32年論文を翻案することにより創作された二次的著作物(著作権法2111号)に該当するものというべきであり,質問文の配列及びプロフィールの構成という具体的表現に新たな著作物性を認めることができる。そして,昭和41年用紙について著作権は,P1に帰属することが明らかである。
 
(昭和41年用紙と本件用紙の関係)
 
昭和41年用紙と本件用紙は,いずれも三つ折り・六面の用紙で,@表紙,A質問文,B回答表,C粗点集計欄,Dプロフィール表,Eプロフィール判定基準を構成要素としている点で共通しており,質問文の配列及びプロフィールの構成も同一である。
 他方,昭和41年用紙と本件用紙との間には,被告ら主張の次のような相違点がある。すなわち,…,以上の相違点がある。
 
そこで,検討するに,昭和41年用紙と本件用紙は,YG性格検査の中核的部分をなす質問文の配列及びプロフィールの構成が同一である一方,両者の相違点は,いずれも表現上の形式的な事柄であって,本件用紙中昭和41年用紙から改変された部分は「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法211号)とは認められない。
 
したがって,本件用紙は,昭和41年用紙に依拠し,その内容及び形式を覚知させるものを「有形的に再製」(著作権法2115号)したもの,すなわち,昭和41年用紙を複製したものと認められる。
 
以上のとおり,本件用紙は,昭和41年用紙を複製したものにすぎず,これに何ら創作的な部分を付加したものではないから,昭和41年用紙とは別の著作物とは認められない
 
しかしながら,原告らは,本件用紙の著作物性に関連して,「原告Xの有する著作権は,本件用紙それ自体だけではなく,本件用紙を構成する部分(具体的には,質問事項120問やプロフィール表等)についても及んでいる。」と主張している。この主張にかんがみると,原告Xの請求は,被告用紙が,上記のとおり本件用紙と同一性を有する昭和41年用紙を複製又は翻案したものであると主張するものと善解することができる。
 
したがって,以下においては,被告用紙が,昭和41年用紙において新たに付加された創作的部分である質問文の配列及びプロフィール表の構成において昭和41年用紙と同一性を有するか,すなわち被告用紙が昭和41年用紙を複製又は翻案したものであるか否かについて検討することになるが,上記のとおり,本件用紙と昭和41年用紙とは,昭和32年論文(昭和30年代用紙)に新たに付加された創作的部分において同一であるから,以下においては,便宜上,本件用紙を被告用紙と対比する対象として,被告用紙が本件用紙に依拠してこれを複製又は翻案したものであるか否かを検討することとする。
 
(略)
 
上記のとおり,YGPI用紙は,本件用紙(昭和41年用紙)の上記創作的な部分を備えており,同部分において同一であるから,本件用紙に依拠し,その内容及び形式を覚知させるものを有形的に再製,すなわち複製したものといえる。上記認定の両者の相違点は,表現上の形式的な事柄にすぎないから,YGPI用紙が本件用紙を複製したものであることを否定するに足りる本質的な相違とは認められない。











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