著作権重要判例要旨[トップに戻る]







占術の解説(手法)の侵害性が問題となった事例
「数霊占術学書籍事件」
平成200611日東京地方裁判所(平成19()31919/平成201127日知的財産高等裁判所(平成20()10058 

【原審】

 
著作権法は,思想又は感情の創作的な「表現」を保護するものである(著作権法211)。したがって,既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらない(最高裁平成13628日第一小法廷判決参照)。…
 
(略)
 
…によれば,被告書籍11は,原告書籍1と表現において全く異なっていると認められ,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 これに反する原告の主張は,「旧暦に従って,毎年の立春から翌年の節分までを1年として区分する」という「アイデア」における同一性を指摘するものにすぎず,到底採用することができない。
 
…によれば,被告書籍12は,原告書籍2と表現において全く異なっていると認められ,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 
これに反する原告の主張は,生年月日を構成する数字を順次加算し,1桁の数字になるまで繰り返すという「アイデア」における同一性を指摘するものにすぎず,到底採用することができない。
 
(略)
 
…によれば,被告書籍15は,原告書籍5と表現において全く異なっていると認められるから,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 
これに反する原告の主張は,「破壊数」の概念という「アイデア」における同一性を指摘するものにすぎず,到底採用することができない。
 
…によれば,被告書籍16は,破壊数の記号等の部分で,原告書籍6と同一性を有すると認められないではないが,印の付け方として,○や×を採用し,殊に悪いものに×を付することはありふれた表現であると認められるから,上記の箇所での同一性は,創作性のない部分におけるものであると認められる。その余の部分では,被告書籍16は,原告書籍6と表現において全く異なっていると認められる。よって,被告書籍16は,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 
これに反する原告の主張は,×の使用等の創作性のない部分での同一性を指摘するものにすぎず,到底採用することができない。
 
(略)
 
…によれば,原告書籍9と被告書籍19とは,正方形を9等分したマス目に19の数字の配列順序を記入したものである点で共通すると認められるが,原告が主張するとおり,原告書籍9は,19までのすべての数を数霊理論で展開したときに各場にどのような数が配置されるかを表した別紙の複数枚の図(6図。原告書籍36)を統一的に表したものであり,原告の数霊に関する思想と計算方法をマス目にアルファベットと数字を配置することによって視覚的に表現したものであるとすると,このような思想を分かりやすく説明するために他に様々な表現方法があるとは認められないから,被告書籍19における9つに区分した正方形のマス目の部分は,表現上の創作性のない部分において,原告書籍9と同一であるにすぎないと認められる。
 
その余の部分においては,被告書籍19は,例示された数字が異なり,数字を配列する順序を黒丸数字で示している点で,原告書籍9とは異なっている。
 
よって,被告書籍19は,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。

【控訴審】

 原告書籍第1部分は,「生年数を出す時,一番大事な観点は,暦における節入で,入門初心者がかならずと言ってよいほど,間違いを起こすところですから,何回も繰り返して,ご記憶下さい。毎年の立春から翌年の節分までを一年として区分けします。立春は,平年は二月四日頃,閏年は二月五日頃が節入りとなります。従って一月生れ,二月節入り前に生れた場合は,前年で計算します。」(原告書籍24頁)である。
 
被告書籍11部分は,「ひとつだけ気をつけていただきたいのは,この占いは旧暦がベースになっているということ。ですので,一年間は,節分の23日までとなります。つまり,11日〜23日までの間に生まれた方は,前年生まれになるのです。」(被告書籍122頁)であり,被告書籍21部分は,「旧暦がベースとなり,1年は,節分(24)からスタートすると考えるのです。たとえば,2006年は200624日〜200723日まで。200611日〜23日は,宿命数を考える上では『2005年』となることを覚えておいてください。」(被告書籍29)である。
 
原告書籍第1部分と被告書籍11部分,被告書籍21部分を対比すると,その具体的表記は異なり,表現上共通する部分は存在しないから,後二者は前者の複製とはいえない
 
前者と後二者は,「生年数」を旧暦に基づいて算出すること,毎年の立春から翌年の節分までを1年として区分すること,太陽暦の11日から23日(節分)までに生まれた者は前年生まれの扱いとすることを内容にしている点では共通するが,上記共通する部分は,抽象的なアイデアにすぎないというべきである。したがって,後二者から前者の表現上の本質的な特徴を直接感得することは到底できないから,後二者は前者の翻案ということもできない
 
原告書籍第2部分は,「年・月・日を加えて,単数化した数を,命数とし,」(原告書籍90頁)であり,被告書籍12部分は,「生年月日をすべて一桁の数にばらします。そして,それをはしから足していく」(被告書籍122)である。
 
両者を対比すると,その具体的表記は異なり,表現上共通する部分は存在しないから,後者は前者の複製とはいえない
 
両者は,「命数」の算出法について,生年月日を構成する数字を西暦で表し,1桁の数字になるまで各桁の数字を加算するという点では共通するが,上記共通する部分は,抽象的なアイデアであり,ありふれた手法にすぎないというべきである。したがって,後者から前者の表現上の本質的な特徴を直接感得することは到底できないから,後者は前者の翻案ということもできない
 
原告書籍第3部分は,「昭和29年(1954)3月20日生。1+9+5+4=19 1+9=10 1+0=@。3月は生月の数がBですから,そのまま使用します。20日の場合は複数ですから,2+0=Aとします。そのうえで,年月日の単数を加えます。@+B+A=E このEを命数と呼びます。」(原告書籍91ないし92)であり,被告書籍13部分は,「1981年2月1日生まれの方は,1980年2月1日として計算をしてください。この場合,1+9+8+0+2+1=21となり,2+1=3で宿命数は3となります。」(被告書籍122)である。
 
両者を対比すると,その具体的表記は異なり,表現上共通する部分は存在しないから,後者は前者の複製とはいえない
 
両者は,「命数」の算出法の具体例を挙げている点,生年月日を構成する数字を西暦で表し,1桁の数字になるまで各桁の数字を加算するという方法を示している点において共通するが,上記共通する部分は,抽象的なアイデアにすぎないというべきである。したがって,後者から前者の表現上の本質的な特徴を直接感得することは到底できないから,後者は前者の翻案ということもできない
 
(略)
 
原告書籍第5部分は,「凶作用を誘発する,凶性の意味をもつ数」(原告書籍42)であり,被告書籍15部分は,「破壊数は,人生においてマイナスとなる性質や運勢傾向を表す数。」(被告書籍124),被告書籍25部分は,「最大かつ最凶の影響を与えるのが『破壊数』」(被告書籍268頁)である。
 
両者を対比すると,その具体的表記は異なり,表現上共通する部分は存在しないから,後者は,前者の複製とはいえない
 
両者は,破壊数が,凶又はマイナスという意味をもつという点で共通するが,上記共通する部分は,抽象的なアイデアにすぎないというべきである。したがって,後者から前者の表現上の本質的な特徴を直接感得することは到底できないから,後者は前者の翻案ということもできない
 
原告書籍第6部分は,「破壊数の記号は『×』です。数霊盤に記入する十二支の記号は『○』です。」(原告書籍43)であり,被告書籍16部分は,「数字をすべて埋めたら,破壊数に×を,宿命数と姓名数に○をつけます。」(被告書籍1117)である。
 
両者を対比すると,その具体的表記は異なり,表現上共通する部分は存在しないから,後者は,前者の複製とはいえない
 
両者は,○と×の記号を付けること,破壊数に×を付けることにおいて共通するが,上記共通する部分は,抽象的なアイデアにすぎないというべきである。したがって,後者から前者の表現上の本質的な特徴を直接感得することは到底できないから,後者は前者の翻案ということもできない
 
(略)
 
原告書籍第9部分と被告書籍19部分は,縦3列,横3列の9に区切られた正方形の各マス目に数字が記載されている点で共通するが,その他の点で共通する部分は存在しないから,後者は,前者の複製又は翻案といえない。
 
前記のとおり,原告書籍の第1ないし第9の各部分と被告書籍1の第1ないし第7,第9の各部分,原告書籍の第1,第5,第8の各部分と被告書籍2の第1,第5,第8の各部分は,表現上の共通点はなく,また,共通点があったとしても,それらは抽象的なアイデアにおける共通点や創作性のないありふれた表現の共通点にとどまり,被告書籍各部分は,原告書籍各部分の複製又は翻案に該当しない











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