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国内放送海外視聴サービス提供事業者の侵害主体性(2)
海外居住者向け放送番組録画視聴サービス『録画ネット』事件」平成171115日知的財産高等裁判所(平成17()10007 

【コメント】放送事業者である相手方は、「録画ネット」という名称のサービス(「本件サービス」)を営む抗告人に対し、同サービスは相手方の放送を複製し相手方の著作隣接権を侵害するものである旨主張して、同サービスによる放送の複製の差止めを求める仮処分を申し立てたところ、これを認容する仮処分決定(「本件仮処分決定」)がなされました。これに対し、抗告人が本件仮処分決定の取消しを求めて仮処分異議を申し立てたところ、原審は、当該仮処分決定を認可する原決定をしたため、これを不服とする抗告人が本件抗告をしました。以上が、本件の概要です。 

 本件サービスは,抗告人が利用者ごとに1台ずつ割り当てたテレビチューナー付きのパソコン(テレビパソコン)を,抗告人事務所内にまとめて設置し,テレビアンテナを接続するなどしてテレビ放送を受信可能な状態にするとともに,各利用者がインターネットを通じてテレビパソコンを操作してテレビ放送を録画予約し,録画されたファイルを海外の自宅等のパソコンに転送できる環境を提供することにより,海外においても日本国内の放送番組を視聴することができるというものである。本件サービスの詳細な内容は,以下のとおりである。
 
(略)
 
なお,抗告人は,本件サービスにおいてテレビパソコンの所有権は利用者に移転している旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり,本件サービスにおけるテレビパソコンは,@抗告人の調達したものに限られるとともに,抗告人の管理下に設置され,抗告人事務所内において本件サービスの用に供することのみしか認められていない,A故障の場合,抗告人の費用で修理を行うこととされている,B契約終了時において,他の利用者への無償での「譲渡」という通常の取引形態では考え難い選択肢が用意されている,C契約終了後にテレビパソコンの「返却」を受ける場合には,ハードディスクを初期化することとされている,というのである。これらの事情によれば,本件サービスにおいて,テレビパソコンを自由に使用,収益及び処分することができる権利(所有権)(民法206条)が利用者に移転しているということはできず,所有権の移転が仮装されているにすぎないというべきである。
 
[複製行為の主体について]
 
前記認定事実によれば,@本件サービスは,抗告人自身が本件サイトにおいて宣伝しているとおり,海外に居住する利用者を対象に,日本の放送番組をその複製物によって視聴させることのみを目的としたサービスである,A本件サービスにおいては,抗告人事務所内に抗告人が設置したテレビパソコン,テレビアンテナ,ブースター,分配機,本件サーバー,ルーター,監視サーバー等多くの機器類並びにソフトウェアが,有機的に結合して1つの本件録画システムを構成しており,これらの機器類及びソフトウエアはすべて抗告人が調達した抗告人の所有物であって,抗告人は,上記システムが常時作動するように監視し,これを一体として管理している,B本件サービスで録画可能な放送は,抗告人が設定した範囲内の放送(抗告人事務所の所在する千葉県松戸市で受信されたアナログ地上波放送)に限定されている,C利用者は,本件サービスを利用する場合,手元にあるパソコンから,抗告人が運営する本件サイトにアクセスし,そこで認証を受けなければ,割り当てられたテレビパソコンにアクセスすることができず,アクセスした後も,本件サイト上で指示説明された手順に従って,番組の録画や録画データのダウンロードを行うものであり,抗告人は,利用者からの問い合わせに対し個別に回答するなどのサポートを行っている,というのである。これらの事情によれば,抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を管理していることは明らかである。
 また,抗告人は,本件サイトにおいて,本件サービスが,海外に居住する利用者を対象に日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサービスであることを宣伝し,利用者をして本件サービスを利用させて,毎月の保守費用の名目で利益を得ているものである。
 
上記各事情を総合すれば,抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を行っているものというべきであり,抗告人の上記複製行為は,相手方が本件放送に係る音又は影像について有する著作隣接権としての複製権(著作権法98条)を侵害するものである。
 
(略)
 
また,抗告人は,本件サービスが,パソコンをアンテナ接続している点を除き,テレビパソコンのハウジングサービスにすぎないし,アンテナ接続の点には違法性がない旨主張する。
 
しかしながら,前記のとおり,抗告人は,有機的に結合した本件録画システムを構成する機器類及びソフトウエアをすべて自ら調達・所有すると共に,同システムを一体として管理しており,しかも,本件サービスの利用者は,抗告人の定めるアクセス方法,録画方法,ダウンロード方法に従って本件サービスを利用するものであり,抗告人に問い合わせれば個別の回答を受けられるなどのサポートを抗告人から受けているというのであるから,これらの事情に照らせば,本件サービスは,単にテレビパソコンを預かり,空調など環境を管理し,各機器類に電気を供給する等の通常のハウジングサービスの範囲をはるかに超えているといわざるを得ない。抗告人の上記主張は,採用することができない。
 さらに,抗告人は,本件において差止めを認めることは,利用者である海外在留邦人の知る権利を侵害するとか,ハウジング業者を利用しないでテレビパソコンを利用する者の取扱いとの関係で平等原則違反である旨主張する。
 
しかしながら,前記のとおり,抗告人の本件サービスにおける複製行為は,相手方の複製権を侵害しているものであるところ,海外在留邦人は,違法な本件サービスを利用しなくても,適法な手段により相手方の放送を視聴することが可能であるから,抗告人に対する差止めの事実上の効果として,利用者が本件サービスを利用して相手方の放送を視聴することができなくなったとしても,何ら利用者の知る権利の侵害となるものではないし,合理的理由のない差別的取扱いに当たるものでもない。抗告人の上記主張は,採用することができない。











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