著作権重要判例要旨[トップに戻る]







専属アーティストの受け取る金銭の性質が問題となった事例
GLAY楽曲著作権確認等請求事件平成211022日東京地方裁判所(平成19()28131 

◆消滅時効(労働基準法115条)について

 
被告は,本件専属契約に基づく債権が「賃金」に該当し,原告らは,債権を行使し得るときから2年間これを行わなかったから,上記債権は時効により消滅した(同法115条)旨主張する。
 
「賃金」とは,名称のいかんを問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(労働基準法11条)。
 ところで,本件専属契約における報酬及び就業条件は,下記のとおり定められていた。
 
(略)
 
上記のとおり,本件専属契約においては,GLAYメンバーらの活動により得られた利益,収入から経費を控除した残額の一定割合を支払うものとされていること,プロモーションや宣伝活動とみなされる出演については,被告はGLAYメンバーらに対して一切の金銭を支払わないものとされていること,興行,コンサート,イベントへの出演については,その収支が赤字の場合,被告はGLAYメンバーらに対し,金銭の支払義務を負わないものとされていることなどに照らせば,本件専属契約に基づき被告からGLAYメンバーらに対して支払われる金銭は,GLAYメンバーらの活動により得られた経済的利益の分配金の性質を有するものと考えられる。また,本件においては,他に,GLAYメンバーらの活動における,同人らと被告との関係の実情を適確に認定するに足る証拠はない。
 
以上のとおりであるから,本件専属契約に基づく債権が,GLAYメンバーらの被告に対する労働の対償としての性質を有するもの(賃金)であると認めることはできない
 
よって,被告の上記主張は理由がない。

◆消滅時効(民法1742号)について

 
被告は,本件専属契約に基づく債権,本件著作権譲渡契約に基づく債権,本件原盤使用許諾契約)に基づく債権は,いずれも,民法1742号の定める「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」に該当し,債権を行使し得るときから1年間行使しなかったことにより時効消滅した旨主張する。
 
民法174条は,同条各号に列挙された債権については,極めて短期に決済されるのを通常とし,その弁済につき領収書等の証拠書類も作成しないことが多いことを理由として,1年という短期の消滅時効を定めたものである。
 
[本件専属契約に基づく債権]
 本件専属契約に基づく債権は,…によれば,「アーティスト印税」,「原盤印税」,「著作権印税」のほか,「マネージメント」,「カレンダー05」,「通販−EXPO」,「物販−ARENA」,「物販−COUNTDOWN」,「M−UP PHONE」,「レコード印税」,「ARENA TOUR」,「通販−ARENA」,「COUNTDOWN」,「物販−DOME」,「DOME+大阪公演」,「通販−COUNTDOWN」,「使用許諾料」,「通信販売ロイヤリティー」等に係るものである。
 
そして,本件専属契約に基づく債権のうち,「契約書」に基づくものについては,「甲(判決注・被告)が支払う前条印税は,毎年3月,6月,9月,12月の甲の各計算締切日にて締め切り,当該締切日の月末より90日以内に明細書を添付の上支払うものとする。」と弁済期が定められており,「覚書」に基づくものについては,「乙(判決注・被告)は甲(判決注・GLAYメンバーら)に対して,…甲の実演家活動による乙または第三者よりの収入に対する報酬を,3月,6月,9月,12月の各月末日にて締め切り,明細書を添付の上,翌々月末日に甲に支払う。」と定められている。
 
以上によれば,本件専属契約に基づく債権は,その内容や支払期日の約定に照らし,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。
 
そうすると,本件専属契約に基づく債権は,民法1742号が予定する債権とは性質を異にするものであるから,同号所定の債権には該当しないというべきである。
 
[本件著作権譲渡契約に基づく債権]
 
本件著作権譲渡契約に基づく債権は,…によれば,「著作権印税」であり,これは著作権譲渡の対価として,作品が使用された場合に支払われる著作権使用料である。
 
また,本件著作権譲渡契約に基づく債権については,「乙(判決注・被告)は,毎年36912月の年4回,各月末日をこの契約に関する会計計算締切日と定め,当日までに…発生した本件著作権の著作権使用料についてこの契約の諸条項に基づいて分配の計算を行い,各締切日後60日以内に計算明細書を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する住所に送付し,著作権使用料を甲の指定する銀行口座への振込みをもって支払うものとします。」と定められている。
 
以上によれば,そもそも,本件著作権譲渡契約に基づく債権は,その内容に照らし「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」には該当しないというべきであるし,その支払期日の約定に照らしても,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるから,民法1742号が予定する債権とは性質を異にするものであり,同号所定の債権には該当しないというべきである。
 
[本件原盤使用許諾契約に基づく債権]
 
本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,…によれば,「原盤印税」であり,特定の原盤を使用して複製・頒布されたレコードについて,商品の売上数量1枚当たり一定の割合の金銭が支払われるものである。
 
また,本件原盤使用許諾契約に基づく債権については,「乙(判決注・被告)は,四半期(3月,6月,9月,および12月各末日締切)毎に印税の発生額を計算し,締切後翌々翌月末に計算書を甲(判決注・原告エクストリーム)が指定する住所に送付の上,当該発生印税額を甲の指定する口座に振込む。」と定められている。
 
以上によれば,本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,その内容や支払期日の約定に照らし,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。
 
そうすると,本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,民法1742号が予定する債権とは性質を異にするものであるから,同号所定の債権には該当しないというべきである。
 
よって,被告の上記主張も理由がない。
 
被告が,「消滅時効(労働基準法115条)について」及び「消滅時効(民法1742号)について」で消滅時効を主張する債権は,いずれも,商事債権として5年の消滅時効に服する(管理人注:商法522条参照)ものと解される。











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