著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ビジネスソフトの表示画面の著作物性(2)
「コンピュータソフト『ProLesWeb』vs.『Webcel8』事件」
平成160630日東京地方裁判所(平成15()15478/平成170526日知的財産高等裁判所(平成17()10055 

【コメント】本件は、原告が、被告に対して、「被告ソフトウェア」の画面表示は、原告の製造したソフトウェア(「原告ソフトウェア」)の画面表示と同一又はその表現上の特徴を感得できるものであって、被告ソフトウェアを製造販売する被告の行為は、画面表示について原告が有する著作権を侵害すると主張して、著作権(複製権、翻案権)に基づき、被告ソフトウェアの使用差止及び損害賠償を請求した事案です。 

【原審】

 
被告各画面表示は,それぞれ原告各画面表示の複製物又は翻案物かついて
 
著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と規定されている(著作権法211号)。著作権法上の保護の対象となる著作物は,思想又は感情が創作的に表現されたものであることが必要であるが,創作的に表現されたというためには,厳密な意味で,独創性の発揮されたものであることが求められるものではなく,制作者の何らかの個性が表現されたものであれば足りるというべきである。この点は,プログラム等を用いて,コンピュータのディスプレイ上に表示された画面が,著作権法上の保護の対象となる著作物といえるか否かを判断するに当たっても,何ら変わることはない。しかし,コンピュータのディスプレイ上に表示される画面については,@所定の目的を達成するために,機能的で使いやすい作業手順は,相互に似通ったものとなり,その選択肢が限られること,ユーザーの利用を容易にするための各画面の構成要素も相互に類似するものとなり,その選択肢が限られること,A各表示画面を構成する部品(例えば,ボタン,プルダウンメニュー,ダイアログ等)も,既に一般に使用されて,ありふれたものとなっていることが多いこと,B特に,既存のアプリケーションソフトウェア等を利用するような場合には,設計上の制約を受けざるを得ないことなどの理由から,表示画面の創作性の有無を判断するに当たっては,これらの諸事情を勘案して,判断する必要がある
 
そこで,以上の観点から,原告各画面表示の著作物性について判断する。
 
[原告本体画面]
 
(略)
 
上記認定事実により,創作性の有無について判断する。
() 原告本体画面の上段右側には,帳票などのレポート名及びデータベースのテーブル名がツリー状に表示されるが,ウィンドウズ等のコンピュータの画面において,デバイス,フォルダ,ファイル等をその名称によってツリー状に表示することは標準的に行われている表示方法であるから,原告ソフトウェアにおいて作成するレポートやレコードの名称をツリー状に表示することに表現の創作性は認められない
() 原告本体画面の上段左側には,データベースのデータをエクセルのひな型に書き出すためのボタン,エクセルのひな型をデータベースに読み込むためのボタンなどが表示されているが,頻繁に用いられる機能に独立のボタンを割り当てることは通常行われることであり,アイコンの形状及び配列についても特徴はなく,表現の創作性は認められない
() 原告本体画面の中段には,データベースのデータが表形式で表示され,下段には,中段に表示されたデータの項目に対応するように各項目の属性が表示されるが,複数の項目からなるデータを表形式で表示することは普通に行われることであって,表現上の工夫は認められない。また,各項目の属性を表示する点も,原告ソフトウェアがエクセルのひな型のセルとデータベースのデータの項目とを対応させてデータの追加,修正,削除,書出しを行うものであることからすれば,これらの機能を実現する上で必要となる情報を表示しているにすぎず,表示する情報の選択,表示方法等もありふれたものといえる。本体画面中段,下段の表示には,表現の創作性は認められない。
() 原告本体画面の上記()ないし()の各表示部分の配置についても,画面の縦横の比率などに由来する制約があって選択の余地は限られており,配置において,創作性があると認めることはできない。また,原告本体画面の全体の外観(色彩及び各表示部分の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。
() 以上のとおり,原告本体画面の上段のレポートがツリー状に表示される部分,中段のテーブルのデータが表示される部分,下段のテーブルのデータのフィールド属性が表示される部分,上段左側のボタンが表示される部分は,いずれも創作的な表現であるとは認められない。
 
[原告レポート等自動作成画面]
 
(略)
 
上記認定事実により,創作性の有無について判断する。
 
前記のとおり,原告レポート等自動作成画面上部の「ひな型シートからレポートとテーブルを作成します。」との説明文言は,原告ソフトウェアにおけるエクセルのひな型からレポート及びテーブルを作成するという手順を,ごく普通に表現したものといえる。また,その他の説明文言も,原告ソフトウェアの機能ないし操作手順を普通に表現したものといえる。また,レポート名及びテーブル名を表示する枠も,レポート及びテーブルの名称の表示方法としてはありふれたものである。したがって,上記説明文言等は,原告ソフトウェアの機能ないし操作手順を普通に表現したものであるから,創作的な表現とは認められない
 
また,原告レポート等自動作成画面の全体の外観(色彩及び各表示部分の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。
 
以上のとおり,原告レポート等自動作成画面は,創作的な表現であるとは認められない。
 
[原告ひな型設定画面]
 
(略)
 
上記認定事実により,創作性の有無について判断する。
 
前記のとおり,原告ひな型設定画面は,データの書出しをする際に,書出し先のひな型の設定を行うための画面である。同画面における,ひな型に対応するレポート及びテーブルの名称を表示する欄は,ひな型とレポート及びテーブルの対応を表示するものであって,上記のデータ書出し機能に当然必要とされる項目を普通に表現したものといえる。また,ひな型のタイプ,エクセルへの書出し等の指定,書出し行の選択,「テーブル1レコードの読書範囲」の設定等,上記書出しを実行する場合の条件を設定するための表示は,原告ソフトウェアに備わった書出し機能に従って決められた条件を,普通に表現したものといえる。また,「取込」ボタン,「中止」又は「選択」ボタンの表示も,必要な機能をボタンに割り当てることは通常行われており,その表示も,ごくありふれたものであって,表現の創作性はない。さらに,原告ひな型設定画面全体の外観(色彩及び各表示の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。
 
以上のとおり,原告ひな型設定画面の前記各表示は,いずれも創作的な表現とは認められない。
 
[原告一覧表ひな型自動作成画面]
 
(略)
 
上記認定事実により,創作性の有無について判断する。
 
前記のとおり,原告一覧表ひな型自動作成画面は,上記データの書出しにより一覧表形式のレポート(ひな型)を作成する際に,その一覧表形式のひな型の内容等を設定するための画面である。同画面における「一覧表タイプひな型シートの作成とセル位置の設定」との表題は,原告一覧表ひな型自動作成画面において行う作業をそのまま表現したものにすぎず,創作性を認める余地はない。同画面における,作成先及び書込位置の設定欄,「テーブルの列」及び「Excelの書込列」の欄の各表示は,一覧表タイプひな型シートを作成する場合の設定項目をそのまま普通に表現したものであり,創作的な表現とは認められない。同画面における,エクセルに書き込む列と書き込まない列とを選別するための緑色のボタンの表示部分は,選別項目を左右の枠に表示してその間に「→」等のボタンを置き,選別を行うことがウィンドウズ等のコンピュータにおいて慣用的に行われていることからすれば,上記のような選択のための表示方法はありふれたものであるし,ボタンの形状,色も創作的なものとはいえない。同画面における「列順番入替」の文字と列の順番を入れ替えるためのオレンジ色のボタンの表示についても,列の順番入替えを行う場合の慣用的な表示であって,ボタンの形状及び色彩についても,上記と同様に,創作的なものとはいえない。また,以上の各表示を同一の画面上に表示する場合には,その配置は自ずから限られたものとなるのであって,原告一覧表ひな型自動作成画面における配置が創作的なものとはいいがたい。
 
以上のとおり,原告一覧表ひな型自動作成画面の前記各表示及びその配置は,いずれも創作的な表現とは認められない。
 
[原告各画面表示のその他の特徴]
 
その他,原告は,原告各画面表示に関して,簡単なマウス操作でデータベースとエクセルとを連携させて情報処理をすることに創作的な特徴があるとも主張する。しかし,このような原告ソフトウェアにおける機能面での特徴が,原告各画面表示における創作性の有無に影響を与えることは,特段の事情のない限り,肯定することはできない。特段の事情の認められない本件において,原告の同主張を採用することはできない。
 
以上のとおり,原告各画面表示は,いずれも創作的な表現と認めることはできない。

【控訴審】

 
当裁判所としても,原告各画面表示には,原告ソフトウェアの機能ないし操作手順を普通に表現したものにすぎないなどの理由から,創作的な表現があると認めることはできない。その理由内容の詳細は,原判決中…に示されているとおりである。
 
当審において控訴人が強調するところは,原告ソフトウェアにおいて想定されるユーザー,価格帯,使用目的,使用頻度,使用されるハードウェアのスペック等を前提にして,各構成要素の選択と配列,各画面表示の選択と配列,各画面表示相互の牽連性を重視して,原告ソフトウェアの創作性を判断すべきであるというにあるが,著作物性を認めるに足りる創作性を肯定すべき表現内容が,原判決が上記判断において前提とした各画面の表示内容等を超えて,原告各画面表示にあるものと認めることはできない。
 
よって,原告各画面表示は,いずれも創作的に表現したものということはできず,著作権法にいう著作物に該当するものということはできない。











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