著作権重要判例要旨[トップに戻る]







タッチの異なるイラスト同士の侵害性が問題となった事例
「世界の名所旧跡のイラスト著作権侵害事件」
平成151112日東京地方裁判所(平成14()23479 

【コメント】本件は、原告が、「被告イラスト」を作成し、これを使用し新聞紙上に広告を掲載した被告らの行為は、「原告イラスト」について原告が有する著作権(複製権、翻案権、同一性保持権)を侵害する行為であると主張して、被告らに対し、損害賠償等を求めた事案です。 

 著作権法の保護の対象となる著作物に当たるというためには,思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である。そして,創作的に表現したものとは,当該作品が,厳密な意味において,独創性の発揮されたものであることを要するのではなく,作成者の何らかの個性が発揮されたものであれば足りるものと解すべきである。
 
…によると,原告イラストは,現存する世界各地の名所旧跡等を選択し,左から右へ,エッフェル塔,ピサの斜塔,ピラミッド及びラクダ,ビッグベン及び2階建てバス,風車,椰子の木及びヨット,摩天楼,コロッセオを描いたものであり,@全体的に淡い色調を基調として,メルヘン的な雰囲気を醸し出すような表現がされていること,A個々の名所旧跡について,配色に計算が施されたり,グラデーションが用いられて,それぞれが強い個性を発揮しすぎないように抑制されていること,B実際には大きさの異なる各名所旧跡について,縮尺を変えて高さを揃えるようにされていること,C横に長く描かれ,作品のどの部分を切り取ったとしても,不自然さを与えず,バランスが保たれるように,その配列や重なり具合,向きなどにも工夫が凝らされていること等の点に原告イラストの特徴があることを認めることができる。
 
以上のとおり,原告イラストは,個々の名所旧跡のイメージを損なうことなく,全体として,見る者に,夢を与えるようなメルヘン的な独特の世界が表現されているということができ,原告の個性が発揮されたものとして,創作性を肯定することができる。
 
(略)
 
原告イラストと被告イラストとは,以下の点で共通する。すなわち,両者とも,@横長のイラストであって,左から右へ順に,エッフェル塔,ピサの斜塔,ピラミッド及びラクダ,ビッグベン及び2階建てバス,風車,椰子の木,ヨット,摩天楼,コロッセオ及び椰子の木,と世界に現存する名所旧跡を,取捨選択して描いていること,Aピサの斜塔の傾きの方向,ピラミッドの方向とラクダの向き,2階建てバスの進行方向,ビッグベンの時計の指す時刻,ビッグベンとバスの位置関係,風車の羽の位置,風車の横の椰子の木の本数と枝の本数及び傾き,ヨットの進行方向,船舶の数(原告イラストがヨットであるのに対し,被告イラストはヨットと客船であるが,いずれも2艘である。),コロッセオの方向(コロッセオの崩壊部分が同一である。),コロッセオの前の椰子の木の本数及びその枝の数及び位置等において,細部に至るまで同一又は酷似していること,B個々の名所旧跡について,縮尺を変えて高さを揃えるように描かれていること等の点において,共通である。
 
これに対して,原告イラストと被告イラストとは,以下の相違がある。
 
すなわち,原告イラストは,@「特徴に乏しい建物」,羽が小さく脚部が二本の風車が,それぞれ描かれ,A境界線を曖昧にして,にじみだすような筆致で,各名所旧跡をデフォルメして描かれているのに対して,被告イラストは,@パゴダ風の建物,イスラム風の建物,万里の長城,雲,羽が大きく脚部が台形状の風車が,それぞれ描かれ,Aシャープな描線が用いられ,個々の名所旧跡も写実的に表現されている点において,相違する。
 
(略)
 被告イラストは,原告イラストとは,その筆致を異にし,その表現対象について若干の違いはあるものの,個々の名所旧跡のイラストの配置やその一部を切り出しても独立のイラストとして使用することができることとする構成やイラスト化された個々の名所旧跡の形状が酷似しており,被告イラストは,原告イラストと実質的に同一であり,また,被告イラストは,原告イラストの創作性を有する本質的な特徴部分を直接感得し得るものであるということができる。
 
したがって,被告イラストを作成し,これを使用して被告新聞広告に掲載した行為は,原告イラストについて原告が有する複製権又は翻案権を侵害したものであるということができる。











相談してみる

ホームに戻る