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人物イラストの複製権侵害の成否
「女優のイラスト事件」平成110723日東京地方裁判所(平成10()29546 

【コメント】本件は、イラストレーターである原告が、「被告イラストレーション」は「本件著作物」(女優【E】の人物画のイラストレーション)の複製権を侵害していると主張して、複製権に基づく被告イラストレーションの使用差止めを求めた事案です。 

 被告イラストレーションが本件著作物を複製したものかどうかについて判断する。
1 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるもの、すなわち、実質的に同一のものを再製することをいう
2 そこで、本件著作物と被告イラストレーションを対比すると、次のようにいうことができる。
() 顔の輪郭
 本件著作物の顔の輪郭は、上半部は、ほぼ半円であるが、下半部は、やや小さく、縦長なだ円の円弧状であるため、頬から顎にかけた付近がやや尖った印象を与え、全体としても縦に長い顔に見えるのに対し、被告イラストレーションの輪郭は真円に近く、全体として横に広い顔に見える。
() 目・眉
 
本件著作物の目と被告イラストレーションの目とを対比すると、目の形状が銀杏の実のような形状で、瞳が大きく描かれていることは共通するが、目の上半部の輪郭は、本件著作物と被告イラストレーションとでは異なっており、瞳の色も本件著作物が茶色であるのに対し、被告イラストレーションでは紫に近い色になっている。
 
また、被告イラストレーションの目は、本件著作物よりも顔に占める面積が大きく、本件著作物ほど両目が離れていない。さらに、睫の形状・本数、眉の長さ・太さ、眉と目との位置関係のいずれにおいても、本件著作物と被告イラストレーションとでは違いがある。
() 鼻
 
本件著作物の鼻と被告イラストレーションの鼻とを対比すると、口に近い位置に配置されている点は共通するが、本件著作物の鼻は、立体的で、鼻の穴がやや見えるような形状であるのに対し、被告イラストレーションの鼻は、鼻の穴が見えるようには表現されておらず、全体の形状も異なる。
() 口・唇
 
本件著作物と被告イラストレーションでは、口の形状が明らかに異なり、上下唇の合った線も、本件著作物ではほぼ直線であるのに対し、被告イラストレーションでは円弧状になっている。
() 頬
 
本件著作物の頬は、ピンク色で、ハイライトが存在するが、被告イラストレーションの頬は、濃い赤色で、ハイライトはない。
() 耳
 本件著作物は、耳が描かれていないが、被告イラストレーションは、比較的大きな耳が描かれている。
() 髪型
 本件著作物の髪型がショートへアであるのに対し、被告イラストレーションの髪型はロングヘアで、形状も全く異なる。
() 手・腕・足
 本件著作物と被告イラストレーションでは、片手を前、もう一方の手を後ろにし、足はこれと左右逆であることは共通するが、腕の振り方・角度、足の開き加減、前になった足の膝の角度、後ろの足の膝下の跳ね上げ方が異なる。
() バッグ
 本件著作物のバッグと被告イラストレーションのバッグとを対比すると、バッグを肩から後ろへ向かって掛けていることは、共通するが、バッグの色、形、肩ひもの形状は異なる。
3 右2認定の事実によると、被告イラストレーションは、本件著作物とは、顔の輪郭の上半部が円形であること、目の形状が銀杏の実のような形状で、瞳が大きく描かれていること、鼻が口に近い位置に配置されていること、片手を前、もう一方の手を後ろにし、足はこれと左右逆であること、バッグを肩から後ろへ向かって掛けていることが共通する。しかし、本件著作物と被告イラストレーションとでは、顔のうち、その同一性を左右する主要な部分について右2()ないし()認定のとおり違いがあるから、右のような共通する点があるとしても、顔について同一性を認めることはできず、また、顔以外の部分にも、右2()()認定のとおり違いがある。したがって、本件著作物と被告イラストレーションの同一性を認めることはできない
 よって、その余の点について判断するまでもなく、被告イラストレーションが本件著作物の複製であるとは認められない。











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