著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(11)-契約の成立を否定した事例-
「ホテル旅館フロントシステムプログラム使用料請求事件」平成120228日東京地方裁判所(平成9()25182/平成130416日東京高等裁判所(平成12()1689 

【コメント】本件は、「中・小ホテル旅館フロントシステム」(「C-PAC」)との名称のコンピュータ・プログラム(「本件プログラム」)について著作権を有する原告が、被告に対し、本件プログラムの使用許諾契約(「本件契約」)が締結された旨主張して、本件契約に基づく使用許諾料の支払等を求めた事案です。 

【原審】

 
ところで、原告代表者は、原告と被告とは、平成661日、覚書(以下「本件覚書」という。)を作成することによって本件契約を締結した旨供述する(また、その旨の陳述記載もある。)。また、本件覚書を見ると、「ソフトウェア使用権に関する覚書」と表題が付され、その内容として、@原告は被告に対し、本件プログラムの使用権を譲渡し(群馬県、長野県、新潟県、栃木県における非独占的な使用権)、平成6630日までに、システム設計書、プログラム仕様書等の物品を引き渡すこと、A被告は原告に対し、使用料の対価として金1600万円(消費税別途)を支払う旨が記載され、契約書の乙欄には、「ソリューションビジネス第一本部 関東信越販売部 部長 【D】」とワープロで印刷され、職印らしき印影が顕出されている。
 
本件覚書については、【C】の氏名が「【D】」と誤記され、【C】の当時の所属部署の所在地が群馬県高崎市であるにもかかわらず「東京都港区」と誤記され、いずれも訂正されていない。原告代表者は、本件覚書の原本は、紛失したとして、提出していない。
 
被告のソリューションビジネス第一本部関東信越販売部部長の【C】は、本件契約の交渉に関与したこともなく、また著作物使用許諾契約を締結する権限を与えられていなかった。
 以上認定した事実を基礎として、被告が原告との間で、本件契約を締結したか否かについて判断する。以下のとおりの理由により、被告が本件契約を締結する意思表示をしたと認めることはできない。
 
本件覚書においては、被告のソリューションビジネス第一本部関東信越販売部部長の【C】が被告を代理して契約を締結した旨の体裁が採られているが、同人は、本件契約の交渉に関与したこともなく、被告を代理して著作物使用許諾契約を締結する権限も与えられていないこと、【C】の氏名が「【D】」と誤記されていること、【C】の当時の所属部署の所在地は群馬県高崎市であったにもかかわらず、「東京都港区」と誤記されていること、原告代表者は、本件覚書の原本は、紛失したとして、提出していないこと等、原告がその主張の根拠としている本件覚書は、契約書の形式及び体裁において、極めて不自然な点が多い
 
平成66月ころ、原告と被告との間では、既に、ソフトウェアの注文書を発行した上、原告がこれに応じて納品及び保守サポート等の作業を行うという取引が円滑に行われていたこと、原告の個々の業務に対する対価は、個別的に合意されていたこと等の経緯に照らすならば、同年6月ころに、被告が、群馬県等の特定の地域において、本件プログラムに関する非独占的な使用権を得る地位を確保し、その対価として1600万円もの高額の支払を約束することは、通常考えられない等、本件覚書には、その内容において不自然な点が多い
 
以上のとおり、被告が本件契約を締結する旨の意思表示をしたことを認めることはできず、したがって原告の主張は理由がない。

【控訴審】

 主位的請求(本件契約に基づく使用許諾料請求)について
 
当裁判所も、控訴人の主位的請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決…のとおりであるから、これを引用する。
 
控訴人は、控訴人、被控訴人間の本件覚書には不自然な点が多いことのみを理由として本件契約の成立を否定した原判決は誤りである旨主張する。しかし、本件覚書の被控訴人側の名義人であるソリューションビジネス第一本部関東信越販売部部長Dが著作物使用許諾契約を締結する権限を与えられていなかったこと、「D」の名や同人の所属部署の所在地が誤記されていること、本件覚書の原本は紛失したとして提出されていないこと、被控訴人は、従前から、本件プログラムが使用されているC-PACの仕入れについては、ユーザーから注文を受ける都度控訴人に納入準備作業を依頼し、これを仕入れるという取扱いで特段の問題もなく推移しており、本件覚書に定める群馬県等の地域を限定した非独占的な使用権を得るために1600万円を投資すべき必然性があったとは考えられないこと等の上記引用に係る原判決認定の事実に照らせば、本件覚書の真正な成立を認めることはできないというべきであるから、これに基づく本件契約の成立も認められない
 
付言するに、本件覚書の第7条には、「使用権の対価の支払時期は、甲乙協議により定めるものとする」と記載されているところ、当該協議が成立したとの主張立証はない上、この定めが、何らかの期限を含意するものとして被控訴人を拘束する趣旨であったことを認めるに足りる証拠もなく、かえって、控訴人代表者Eの陳述書には、被控訴人から本件契約の実施の無期限延期を通告された際、延期はできないとの申入れをしたが、上記条項があったことから、それ以上の申入れ等はしなかった旨の記載がある。したがって、仮に、本件覚書に基づく契約が成立していたとしても、同契約に基づく使用料請求を認める余地はない。











相談してみる

ホームに戻る