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動画投稿共有サイト運営者の侵害主体性
パンドラTV事件」平成211113日東京地方裁判所(平成20()21902/平成220908日知的財産高等裁判所(平成21()10078) 

【コメント】本件は、音楽著作物の著作権等管理事業者である原告が、動画投稿・共有サイトを運営する被告会社(株式会社)が主体となって、そのサーバに原告の管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザのパソコンに送信しているとして、@被告会社に対しては著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいてそれら行為の差止めを求めるとともに、A被告会社及び被告会社代表者A(「被告A」)に対しては不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払を求めた事案です。

 
本件で問題となった被告会社が提供するサービス(「本件サービス」)と同様のサービスを提供している動画投稿・共有サイトとしては、「YouTube」(運営者:グーグル株式会社)・「ニコニコ動画」(運営者:株式会社ニワンゴ)・「アメーバビジョン」(運営者:株式会社サイバーエージェント)・「eyeVio」(運営者:ソニー株式会社)・「Yahooビデオキャスト」(運営者:ヤフー株式会社)などがありますが、「本件サービス」の基本的な構成は、概ね、次のとおりです。

被告会社開設の本件サイトに動画ファイルをアップロードしようとするユーザは、自己のパソコンをインターネットを経由して本件サイトに接続させ、本件サイト上に指示された情報を入力して会員登録をする。動画の視聴のみを求めるユーザは会員登録をする必要はない。登録した会員にそれぞれ「チャンネル番号」が付されて「MYチャンネル」が与えられる。

会員登録を完了したユーザが本件サイトの指示に従って動画ファイルをアップロードする操作を行うと、本件サービスの専用ソフトウエア(「本件ユーザソフト」)が自動的にユーザのパソコンにダウンロードされた上で起動し、ユーザのファイルを自動的に本件サイトに適したwmv形式のファイルに変換して本件サイトのサーバ(「本件サーバ」)に送信する。本件ユーザソフトのダウンロード及びインストールは最初のアップロード時にのみ行われ、2度目以降のアップロードにおいては生じない。本件サービスにおいて、アップロードされる動画ファイルの容量及び時間の制限はない。

ユーザのパソコンから送信された動画ファイルは、本件サーバの記憶装置内に蔵置され、他のユーザからのリクエストに応じていつでも送信できる状態に置かれる。

ユーザからのリクエストがあると、本件サーバは、記憶装置内から動画ファイルを取り出して当該ユーザにストリーム送信をし、ユーザは、本件サーバから送信された動画ファイルを自己のパソコンで受信し、そのファイルをアップロードした者の「MYチャンネル」画面上に再生される動画を視聴する。

 なお、以下の判示中【】は、控訴審で、追加訂正された箇所です。
 


 侵害行為の主体について
 
前記前提となる事実のとおり,本件サーバの記録媒体に本件管理著作物を録画した動画ファイルを記録することは,上記著作物の複製及び送信可能化に該当し,上記動画ファイルをユーザからの求めに応じて本件サーバからユーザの使用するパソコンに送信することは,自動公衆送信に該当する。
 
そして,本件サーバは,被告会社が直接管理しているところの動画IDを管理するデータベースサーバと,米国のライムライト社が管理するところの動画ファイルを格納するファイルサーバとに分かれているが,被告会社は,同ファイルサーバに対する使用権原に基づき,本件サービスにおいて送受信の対象とされているファイルの所在及び内容を把握でき,必要に応じてファイルの送受信を制限したり,特定の利用者の利用自体を禁止したり,ファイルを削除する等の措置を講じることができるから,ライムライト社の管理するファイルサーバも含めて本件サーバを管理支配しているものと認められる。また,被告会社は,前記前提となる事実に認定したとおり,その定める独自のユーザインターフェイス環境においてユーザにコンテンツを提供するというコンセプトを有する本件サイトを開設しており,ただ,そのコンテンツがユーザの提供によるというにすぎないところであり,外形的には,被告会社は,少なくとも公衆送信(送信可能化を除く。)はしている。
 
もっとも,複製又は送信可能化については,後記のとおり被告会社の代表者である被告A自らが行ったものも一部あるが,それ以外のものについては外形的にはユーザが行っている。また,複製又は送信可能化される動画ファイルの選択はユーザの任意によるものであり,その結果として,公衆送信される動画ファイルも上記のようにユーザが任意に選択した範囲の中のものに限られるから,公衆送信されるべき動画ファイルの設定それ自体には被告会社は直接には関与していないことになる。したがって,複製及び送信可能化のみならず,公衆送信についても,侵害主体を論じる必要がある。
 
この点,著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。
 
以上の観点に従い,これを検討する。

◆本件サービスの内容・性質

 
(「動画配信サイトとの対比」について)
 
本件サービスの構成は,前記前提となる事実のとおりであり,本件サービスは,被告会社において独自に定めたユーザインターフェイス環境の下,個人単位の放送局とのコンセプトに基づき「放送局」を擬した「MYチャンネル」を割り当てられた登録会員が,動画ファイルをこのチャンネル上にアップロードし,このチャンネル上でストリーミング形式で再生される動画を広く一般の第三者の視聴に供するというものであり,かつ,それを専らの目的とするものである。【したがって,サイト管理者が,配信内容を自ら決定する動画配信サイトと比較すると,コンテンツの選択については,専らユーザーに委ねられていて,控訴人会社が選択する余地は少ないものの,ユーザの投稿により提供されたコンテンツである「動画」を本件サイトを通じて不特定多数の視聴に供するという点では,動画配信サイトと同様の機能を有するということができる。】
 
(「著作権侵害発生の蓋然性」について)
 
上記前提となる事実のとおり,本件サービスにおいては自動的にファイル変換を行う専用の本件ユーザソフトが準備されており,ユーザがアップロードしようとする動画ファイルは自動的にwmv形式のファイルに変換されて本件サーバに送信され,本件サイトに動画ファイルをアップロードするに当たっても,また,動画ファイルを視聴するに当たっても,ユーザはそのファイル形式を意識する必要がない。また,アップロード,視聴等の本件サービスの利用はすべて無料であり,動画ファイルの容量・時間に制限がない。さらに,本件サービスには,動画ファイル単位での検索ツールが提供されている。
 
したがって,ユーザは,既知のキーワード(すなわち世間一般に知られているもの)で検索することによってこれに該当する容量・時間とも制限のない動画ファイルを無料で簡単に視聴することができる。
 
上記前提となる事実のとおり,会員登録に当たって入力が要求される特定事項は,eメール・アドレス,パスワード,ニックネーム,生年月日及び性別である。また,会員規約第34項には,「ユーザー掲示物に関連して,当社は,ユーザが当該掲示物の公表の際に使用したペンネーム,ハンドルネーム,その他の識別表示を公表できるものとします。ユーザは,こうした識別表示と,ユーザ掲示物の内容とが組み合わさることにより,あるいはユーザ掲示物の内容そのものにより,ユーザの身元等が一般に知られる可能性のあることを認識し,そうした個人情報の開示に関して,あらかじめここに同意します。」とある。
 
したがって,本件サービスにおいては,会員登録に当たって本名を特定する必要がない上,入力された生年月日や性別の真偽を確認していないのであるから,本件サイトへの動画ファイルの投稿は,本来的に匿名でされ得ることを当然の前提としているということができる。
 
上記前提事実のとおり,本件サーバへ動画ファイルが送信されると,「アップロードした動画は著作権を侵害していませんか。著作権を侵害する映像の掲載は法律で固く禁じられています。以上の事をご理解いただきました上で,登録完了ボタンをクリックして下さい。クリックすれば登録は完了です。」との登録完了ボタンが表示されるほか,その際,画面下に赤字で,「《動画・映像に関する注意点》※アップロードした動画に対して,著作権及び法的責任は登録される方の責任となります。※著作権侵害の可能性がある動画・映像を発見しましたら,警告なしに削除いたします。〈例:テレビ,放送局やプロダクション製作物に関する動画・映像〉」との表示がされる。また,会員規約第4条には,「ユーザーは,ユーザー掲示物に関して,自己の責任と費用により,本(約款)規約において当社に付与された権利を行使する上で必要かつ十分な権利クリアランスを行うものとします。こうした権利クリアランスとしては,被写体の同意取得,撮影された他人の著作物についての使用許諾,映像中に露出された個人情報に関する同意取得,収録された音楽に関する使用許諾などが主なものですが,これらは例示にすぎません。当社は,これらの権利クリアランスに関して問題があると思われるユーザー掲示物を発見した場合には,事後的に,これを削除するようユーザーに求め,あるいは自ら削除をすることがありますが,そうした活動は当社の義務として行われるものではなく,あくまでこれら権利クリアランスを行う責任は,ユーザー自身にあります。」とある。
 
【特に,控訴人会社は,ユーザが本件サーバに動画を投稿する際に表示される警告文書において,「例:テレビ,放送局やプロダクション制作物に関する動画・映像」を「警告なしに削除」される対象となる著作権侵害の可能性がある動画・映像として例示しているのであるし,会員規則第4条において,ユーザの責任と費用によって行われるとされる権利クリアランスの対象として,「収録された音楽に関する使用許諾」を例示しているのであるから,本件サービスにおいて,収録された音楽に関する使用許諾を得ない動画の投稿が,著作権侵害に当たることは,十分認識していたものということができる。】
 
したがって,本件サイトの上記記載及び会員規約の内容からすると,本件サービスにおいて著作権を侵害する動画ファイルが送信される可能性が高いことは,被告会社自身認識していたことが推認される。
 
(「構成の特徴」について)
 
上記前提となる事実のとおり,本件サイトに送信された動画ファイルが分類されるカテゴリーは,「ムービー」,「アニメ」,「お笑い」,「スポーツ」,「ゲーム」,「旅行」,「思い出」,「携帯ムービー」,「ニュース」,「音楽」,「趣味」,「ネットアイドル」,「暮らし」,「ダンス」,「その他」,「タレント」,「韓流スター」,「動物」,「鉄道」,「車・バイク」,「スカイスポーツ」,「マリンスポーツ」,「ウィンタースポーツ」,「社会問題」及び「エクストリーム」である。
 
【上記カテゴリーの中には,「旅行」,「思い出」,「携帯ムービー」,「暮らし」,「動物」,「鉄道」など,一般に自主制作された動画がアップロードされることが多いと想定される分野が含まれる(もっとも,自主制作された動画においても,本件管理著作物がいわゆるBGMとして使用されている可能性は否定できない。実際,後記記載のとおり,被控訴人X自身も,旅行映像にBGMとして市販の音源を加えた動画を,自らのチャンネルで公開している。)。他方,「ムービー」,「アニメ」,「音楽」,「ゲーム」など,自主制作が発達している現況を考慮しても,一般のユーザによる自主制作の動画及び楽曲のみで構成されているとは想定し難い分類や,「タレント」,「韓流スター」のように,放送物等の複製や編集を伴わない自主制作物では,一般の興味を引くものとは解し難く,投稿される動画における著作権侵害の蓋然性が高いものと推測される分類も存在する。】
 
上記前提となる事実のとおり,本件サービスでは,アップロードするファイルの容量・時間には制限がないところ,本件サイトにアップロードされた動画ファイルのうち少なくとも約30%は10分を超える動画であること,下記のとおり本件管理著作物が複製されたことが確認できた20613件の動画ファイルについてみても,90分を超えるものが100件以上存在し,最長はタイトルを「[映画]『グリーンマイル』」とする動画で,その長さは約188分に及んでいることが認められる。また,既存の劇場用映画,テレビ番組,アニメの全編,中には国内で劇場公開中の映画の全編を複製した動画までもがかなりの数アップロードされていたことが認められる。さらに,上記20613件の動画ファイルのタイトル名を見ると,そのほとんどが放送番組,DVD,映画などのタイトル名と同一である。上記事実に加えて,被告らから格別具体的な主張,立証がないことにかんがみると,本件サイトにおいて自主制作した動画が占める割合は,正確な数字は不明であるとしても,少ないものと推認される。
 
【また,テレビ局や映画配給会社,音楽著作権管理団体である被控訴人は,本件サイトに投稿される各動画について,使用許諾を与えていない。】
 
したがって,本件サイトには,既存の劇場用映画,テレビ番組,アニメ等,著作権を侵害する動画が,現に多数存在していることが明らかである。
 
上記のとおり,ユーザは被告会社に対する関係でも匿名とすることが可能である上,被告会社とユーザとはメール以外での連絡手段はなく,また,上記前提事実のとおり,本件サービスではだれでも会員となることができ,被告会社において法令違反等を理由に退会処理(利用規約16)をしたとしても,メールアドレスを別なものとすれば,同一人が再び入会することは容易であるから,被告会社は,著作権侵害を繰り返すユーザに対する再発防止のための実効的手段は何ら有していないものと認められる。
 
上記に認定したところによれば,本件サービスは,本件サイトへの動画ファイルの投稿が匿名でされ得ることを前提とし,既存の劇場用映画,テレビ番組,アニメ等の著作権を侵害する動画を投稿しても,投稿者がその責任を問われにくいシステムとなっていることから,視聴者の誘因力の高いコンテンツがそのことを理由に集積され,多くの者がこれを互いに見せ合えば,相乗効果としてコンテンツが更に集積され,それら本来は有償のコンテンツを無償で時間制限なく取得できることを可能にするものであり,そのことに対する格別の抑止力もないものである。
 
したがって,本件サービスは,上記のような本件サービスの内容・性質及び構成の特徴等から,利用者に著作権侵害又は著作隣接権侵害に対する強い誘因力を働かせるものであり,著作権又は著作隣接権を侵害する事態を生じさせる蓋然性の極めて高いサービスであるといえ,そのことは被告会社も認識していたものと認められる。

 
[被告らの主張について]

 
(「動画配信サイトとの対比」につき)
 
被告らは,被告会社には動画ファイルを選択する決定権がなく,本件サービスを動画配信サイトと同視することはできない旨を主張するが,「ムービー」,「アニメ」,「音楽」,「ゲーム」など一般のユーザの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難い分類や,「タレント」,「韓流スター」のように【投稿される動画における著作権侵害の蓋然性が高いものと推測される】分類を決めた点で,既に内容についての一定範囲の選択をしているといえる上に,被告会社が個別の動画ファイルについての選択をしなくても会員が上記分類に対応した動画の選択をするのであり,被告会社は,その選択権をただ単に会員に委ねたというにすぎない。【ユーザの投稿により提供されたコンテンツである「動画」を不特定多数の視聴に供するという点では,動画配信サイトと同様の機能を有するということができる。】
 
被告らの上記主張は,採用することができない。
 
(「著作権侵害の蓋然性」につき)
 
被告らは,本件サービスの匿名性と権利侵害とに関連性はない旨を主張するが,人は無責任の状態になれば無責任な行動に流れやすく,本件サービスにおいては本名を明らかにする必要がなく匿名性を有していることが,不特定多数のユーザによる違法なアップロードを誘発している面は否定できない。
 
また,被告らは,特定のカテゴリーが当然に他者の著作物の利用を前提とすることはない旨を主張するが,前述したとおり「ムービー」,「アニメ」,「音楽」,「ゲーム」などのカテゴリーは,一般のユーザの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難く,また,「タレント」,「韓流スター」のカテゴリーは,【投稿される動画における著作権侵害の蓋然性が高いものと推測される】のであって,このようなカテゴリーを採用したことがユーザによる他者の著作物の利用を誘発しているということができる。
 
さらに,被告らは,ユーザによるコピーガードの解除,エンコード等の加工行為がなければ権利侵害は発生しない旨を主張するが,権利侵害動画のアップロードについてユーザの権利侵害行為が前提とされる場合があるとしても,そのことを理由に著作権又は著作隣接権を侵害する事態を生じさせる蓋然性の極めて高い本件サービスを不特定多数のユーザに提供し,後に詳細に認定するように本件サイト上に多数の著作権侵害動画が存在する事態を生じさせた被告らの責任は否定し得ない。
 
被告らの上記主張は,採用することができない。
 
なお,被告らは,おしなべて,本件サービスが他社のサービスと異ならない旨の主張を各箇所でするが,他社のサービスが適法であることは所与の前提ではないから,その主張は前提において失当というほかない。この点については,以下の被告の主張に対する判断についても同様であるから,再言しない。
 
(「構成の特徴」につき)
 
被告は,本件サイトの動画の再生時間は短く,また,画質等が劣るなどしているから既存のビジネスとは競合せず,権利者の経済的損失をほとんど見いだしにくい旨を主張する。
 
しかしながら,少なくとも約30%の動画が10分を超え,90分を超えるものが100件以上存在することは上記認定のとおりであるから,再生時間が短いとはいい難い。【著作物における創作性を有する部分が感得できる以上,再生時間の長短や,画質の優劣は,著作権侵害であるとの結論を左右するものではない。】 また,本件サイトの視聴は無償なのであるから,多少画質等が劣るとしても,既存ビジネスと競合することは明らかで,権利者の経済的損失は十分に認められる。
 
被告らの上記主張は,採用することができない。
 
(「黙示の許諾」につき)
 
被告らは,投稿動画についての多くの権利者が黙示に許諾し,あるいは積極的にこれを利用している旨を主張する。
 
しかしながら,一部の権利者が投稿サイトと提携をしようとしていることは認められるが,投稿サイトに権利者が明示の許諾を与えて当該著作物について適法に利用ができるようにしたという当然のことが帰結されるにすぎない。2006年(平成18年)83日付けITmediaウェブニュース記事には,「スター・ウォーズ」ファンが作成したパロディ動画などがYouTubeから削除されたことに対し,Lucasfilmが再掲載を要請した旨のニュースが記載されているが,同記事のみで,権利者の多くが黙示に許諾しあるいは積極的にこれを利用しているとの事実を認めることはできず,ほかに被告ら主張の上記事実を認めるに足りる証拠はない。
 
【そもそも,被控訴人が,本件管理著作物について,控訴人らに対し,使用許諾をしていないことは,当事者間に争いがない。また,控訴人会社は,動画の投稿者に対し,権利クリアランスとして,「収録された音楽に関する使用許諾」を求めていることからも明らかなとおり,音楽の利用には権利者の使用許諾が必要であることは当然認識していたものというべきである。そして,我が国における多くの楽曲の著作権が,被控訴人によって管理されていること,被控訴人は,使用許諾を得ない楽曲の利用に対し,訴訟の提起を含めた厳正な対応を行っていることは,音楽の利用を伴う事業を行う業界関係者においては,周知であったといってよい。実際,被控訴人は,平成19627日,控訴人会社に対し,本件管理著作物について,利用許諾契約締結を求める通知を送付しているのであるから,本件管理著作物について,黙示の許諾が認められないことも,十分認識していたものというべきである。もちろん,控訴人らが指摘するとおり,本件サービスにおいても,著作権者から黙認された動画も相当数存在するかもしれないが,本件管理著作物について,被控訴人の許諾を得ていない以上,それ以外の著作物について黙示の許諾が認められる余地があることをもって,適法とされるものでもない。】
 
被告らの上記主張は,採用することができない。

◆複製及び公衆送信における管理支配

 (「物理的ないし電気的な観点」について)
 
上記のとおり,被告会社は,本件サーバを管理支配し,公衆送信行為をしている。
 
(「システムの設計及びツールの提供」について)
 
前記前提となる事実のとおり,本件サイトにアップロードするためには本件サービスの会員となって登録を受ける必要があり,ユーザは被告会社の定めた会員規約の下にある。本件サーバにアップロードするに当たっては,被告会社が準備した専用の本件ユーザソフトを使用しなければならず,動画ファイルは,同ソフトウェアによってユーザのパソコン内にwmv形式のファイルにエンコードされて複製され,その後,本件サーバに送信される。アップロードのための投稿フォームは被告会社において定められた所定の形式であって,それ以外の選択肢はない。さらに,本件サイトにおけるユーザインターフェイスは被告会社の定めた独自の形式であり,本件サイトの動画ファイルを視聴する方法も被告会社において定めた所定の方法であり,それ以外の選択肢はない。また,被告会社は,本件サービスにおいて検索ツールを準備しており,ユーザが検索する場合には,通常,これら検察ツールを使用するほかない。
 
したがって,インターネット環境に接続でき,wmv形式のファイルが再生できるパソコンがあれば,だれでも本件サイトを利用することができるが,汎用的なのはこの限度であり,本件サービスを利用するに当たっての手順は,被告会社の提供する上記システムの設計に従うほかなく,ユーザが個別に利用条件や設定を変えることはできない。
 
(「動画内容に関する積極的関与」について)
 
<「動画ファイルの視聴の推奨措置」につき>
 
被告会社は,投稿された動画の中から,時事性を考慮して,一定の動画ファイルを選択し,本件サイトのメインページ中央列にある「ISSUEin channel」と題するコーナーにおいて,そのサムネイル画像及びその動画内容の説明文章を表示し,これらを紹介している。これら動画ファイルにユーザが付した説明文章の内容が分量的に不足する場合には,被告会社が自ら説明文章を追記している。
 
また,被告会社は,「テーマインサイド」においては時事性のあるテーマに沿った動画ファイルを,「ピックアップチャンネル」においては新規登録ユーザのチャンネルから特定のものを選択し,メインページにリンクを張っている。
 
したがって,被告会社は,ある程度動画の内容を認識した上で,一定の基準で選定した動画ファイル又はその動画を含むチャンネルにより多くのアクセスがあるようにユーザを誘導しており,一定の内容の動画ファイルの視聴をユーザに対して推奨している。
 
<「動画ファイルのアップロード禁止措置」につき>
 
本件サービスにおいては,いわゆるアダルト動画のアップロードは禁止されており,被告会社は,アダルト動画のアップロードが行われた場合には当該動画を削除している。
 
そうすると,あらかじめどの動画がアダルト動画であるかが分からない以上(タイトルがアダルト動画らしいものであっても中身は違うかも知れないから,タイトルだけでは判断できない。),アダルト動画であるか否かについて動画の内容をチェックしているということは,すなわち,被告会社が本件サイトの動画全般を日常的に監視しており,かつ,その能力も有していることにほかならない。
 
<「被告Aの積極的な発信」につき>
 
被告Aは,「社長のch(o_,)ニ ヤニ ヤ」と題する自らのチャンネルにおいて,平成20424日時点で,少なくとも24件につき,本件管理著作物を複製した動画ファイルを自ら作成してアップロードし,又はシェア動画としており,その中には旅行映像にBGMとして市販の音源を加えたものがあった。さらに,本件訴訟係属中の平成201023日時点でも,少なくとも72件の動画ファイルを自ら作成してアップロードし,又はシェア動画としており,そのうち16件のシェア動画については,本件管理著作物を複製した動画ファイルであった。
 
したがって,被告会社の代表者である被告Aは,自ら本件サービスに関与し,その具体的内容を認識していながら本件管理著作物を複製した動画ファイルの公衆送信に関与していたことになる。
 
上記認定によれば,被告会社は,動画ファイルが記録されかつ公衆送信を行う機器である本件サーバを管理支配し,専用のソフトウェア(本件ユーザソフト)をユーザに配布し,自らの設定した方式にユーザを従わせ,一定の動画ファイルの視聴を推奨し,また,一定の動画ファイルを削除するなどしてその内容にも関与し,かつ,被告会社の代表者である被告Aは,自らも動画ファイルをアップロードし,これを公衆送信しているのであるから,被告らは,本件サービスを管理支配しているものということができる。

 [被告らの主張について]

 
(「物理的ないし電気的な観点」につき)
 
被告らは,被告会社は本件サーバを物理的には管理しておらず,サーバに指示を与えたユーザこそ主体とみるべき旨を主張する。
 
しかしながら,本件サーバの物理的な所在や所有関係は,電気通信回線を通じて利用するというその性質からみて公衆送信の主体を考える上ではほとんど関連性のないことである。また,ユーザによる動画ファイルの複製及び送信可能化行為も,専ら被告会社の配布した専用の本件ユーザソフトによって行われるのであり,【自ら動画を選択して投稿する点で,】ユーザが主体性を有することは否定できないとしても,【ユーザが投稿した動画を公衆送信する手段である】サーバを管理支配する者の主体性もこれと併存し得るのであり,ユーザの主体性が直ちにサーバの管理支配者である被告らの主体性を否定するものではない。
 
被告らの上記主張は,採用することができない。
 
(「システムの設計及びツールの提供」につき)
 
被告らは,本件サービスに投稿できる動画のファイル形式の中に,市販のDVDのデータ保存形式として用いられているvobファイルは含まれていないこと,市販のDVD動画をアップロードしようとする際には,コピーガードを外すプログラムとエンコードのためのツールを必要とするが,そのようなプログラムもツールも供給していないことなどを理由に挙げ,本件サービスは,ユーザの意図的な行為の介在なしに市販のDVDやデジタルテレビ録画物などの動画をそのまま投稿できるようにはなっておらず,あくまでユーザのオリジナルコンテンツが投稿されるに必要なサービスの提供がされているにすぎない旨を主張する。
 
しかしながら,本件サービスにおいて,既存の劇場用映画,テレビ番組,アニメの全編,中には国内で劇場公開中の映画の全編を複製した動画までもがかなりの数アップロードされていたこと,「ムービー」,「アニメ」,「音楽」,「ゲーム」など一般のユーザーの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難いカテゴリーや,「タレント」,「韓流スター」のように【投稿される動画における著作権侵害の蓋然性が高いものと推測される】カテゴリーを採用し,他者の著作物の利用を誘発しやすくしていることは上記のとおりであり,著作権侵害の発生のためにユーザの意図的な行為が介在しなければならない場合があるとしても,本件サービスがユーザを被告会社の意図するところに従って誘導している面は否定できない。
 
【しかも,控訴人らは,動画投稿サービスにおいては,著作権を侵害する動画が投稿されることを前提として,当該サービスの社会的意義を強調しているのであるから,本件サービスにおいても,著作権を侵害する動画が投稿されていることを当然に認識していたものというべきであり,実際,既存の劇場用映画や劇場公開中の映画が丸ごと投稿されていることについて,権利者から警告を受けるなどしていたものである。そうすると,当該動画を投稿したユーザが,コピーガードを外すなどの「意図的な行為」を行う動機の一つとして,本件サービスに対する投稿目的が含まれるものということができる。その意味で,本件サービスが著作権侵害を誘引しているものということが可能である。】
 
被告らの上記主張は,採用することができない。
 
(「動画内容に関する積極的関与」につき)
 
被告らは,「テーマインサイド」は,ヒットワードランキングから一つのキーワードを選出してそれに関連する動画を掲げるもので,世間に注目を集めているものを紹介するだけのものである旨を主張するが,同主張自体,被告らが本件サービスにアップロードされている動画の内容を具体的に認識した上でその内容を基準として一定の動画を選定し,その動画の視聴をユーザに推奨している事実を認めるものであり,被告らが本件サービスから公衆送信する動画について被告会社の関与を否定するものではない。また,被告らは,「ピックアップチャンネル」は,新規登録ユーザを「順番に」紹介しているだけである旨を主張し,同コーナーでは自動的に表示されるかのような主張をしているが,そのようなコーナーに「ピックアップ」と名付けることは不自然というほかなく,被告らによる一定の選択行為が介在しているものと推認するのが合理的である。【仮に,新規登録ユーザを順番に紹介しているのであれば,「ピックアップチャンネル」に掲載された日付と各ユーザに対して個別に採番されたチャンネル番号との間に関連性が認められるはずであるが,被控訴人の調査によると,平成2126日に掲載されているチャンネル番号は,いずれも平成19年以前に登録されたチャンネルであったものである。
 
しかも,控訴人らは,「ISSUE in channel」のコーナーにおいて,ユーザが記載した説明文に加筆した上で,本件管理著作物を含む動画を掲載しているのである。】
 
被告らは,アダルト動画は例外的な扱いを受けているだけであり,それ以外のものを推奨しているものではない旨を主張するが,いずれにしても被告会社が動画の内容に踏み込んだ監視を行っていることを否定するものではない。
 
また,被告らは,被告Aが行っているのは社長個人としての行為であって,被告会社の行為ではない旨を主張する。しかしながら,被告Aのチャンネルの名称はそもそも「社長の…」と題するものであり,同チャンネル内には,「社長ニュース」,「会社関係」などのカテゴリーがあり,実際に,被告会社の警察への対応のポリシーに関する発言,被告会社の原告からの削除要求に対する対応に関する発言,被告会社と原告とのやり取りなどが記載されている。したがって,このチャンネルは,利用者に,被告会社代表者による被告代表者としての立場から設定されているチャンネルと受け止められるものであり,このチャンネルの記載は,被告会社代表者の職務としてされたものとみるのが相当である。
 
被告らの上記主張は,いずれも採用することができない。

◆被告会社の受ける利益の状況

 
本件サービスには,バナー広告や検索連動型広告が置かれており,被告会社はこれにより広告収入を得ているところ,これらの広告収入は,本件サービスにアクセスするユーザ数の増加に伴い増加する関係にあることは公知の事実である。そして,ユーザ数の増加は本件サービスにおける動画ファイルの数量,質に従うものであるから,少なくとも,投稿された動画ファイル数が増加すれば,それだけ被告会社は多くの利益を受けることになる。
 
したがって,本件サービスにおいて複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)される動画ファイル数と被告会社の利益額とに相関関係を認めることができる。
 
(略)
 
被告会社が,本件サービスにおいて,著作権侵害の防止を回避するための措置として導入しているのは,動画ファイルのアップロード時に警告を出すことのみである。
 
一方,著作権侵害を回避する措置としては,少なくとも,@権利侵害ファイルと確認された動画ファイルのハッシュ値(ファイルのデータを一方向性関数により加工して得た数値)を採取しておき,アップロードの際にこれと照合し,同一ハッシュ値をもつ場合にはファイルのアップロードを排除する方法,A楽曲の音の波形の特徴を選択的に抽出して数値化したオーディオ・フィンガープリントを準備しておき,アップロードの際にこれと照合し,権利侵害楽曲である場合にはファイルのアップロードを排除する方法,Bあらかじめ指定された所定の要件を満たす権利者が動画の削除申請をすると自動的に動画が削除されるプログラムを配布する方法などが実用化されていることが認められ,同種サービスを提供する他社においては既に採用されている。また,端的に,事前又は事後に権利侵害の有無を有人で監視する方法もあり,これを行っている他社サービスも存在する。
 
ところが,被告会社は,原告から包括許諾契約の締結と権利侵害防止措置を求められたことに対し,【当初は】権利侵害防止措置は資金的,人的に被告会社では不可能であると回答するのみであり,何らの具体的な対策を提示しなかった。
 
【控訴人らは,原審において,被控訴人との間で和解が成立することを条件に,権利侵害動画の投稿を防止するため,@ハッシュ値を利用した権利侵害動画の判定の導入,A権利者に対する削除ツールの提供,B権利侵害動画の目視チェックを実施することを提案し,当審において,同@及びAについては,既に導入済みであると主張する。
 
しかしながら,控訴人会社が,同@及びAを導入済みである点について,これを認めるに足りる的確な証拠はなく,被控訴人も,テレビ局などの権利者から,控訴人会社から削除ツールの提供を受けたとの情報を得ていない。】
 
以上に認定したところからすると,本件サイトは,本件管理著作物の複製の有無に限定したとしても,「音楽」,「アニメ」及び「ムービー」のカテゴリーについては4分の3以上,全カテゴリーについても約半分が,本件管理著作物の著作権を侵害する動画ファイルで占められていたことになる。
 
また,削除措置については,被告会社にはユーザの意思にかかわらず自らの判断で動画ファイルを削除する権限があり,著作権を侵害する疑いのある動画ファイルをユーザの意思に反して削除したとしても,本件サービスの利用は無償であって削除によるユーザの経済的損失が生じることはほとんど想定し得ないにもかかわらず,被告会社は,権利者から権利侵害であることの明白な動画ファイルの削除要求があっても,これら動画ファイルを直ちに削除することはせず,会員同士の視聴は可能な状態にどとめたり,また,原告から包括許諾契約の締結と権利侵害防止措置を求められた際にも,権利侵害防止措置は資金的,人的に被告会社では不可能であると回答し,何らの具体的な対策を提示しないなど,権利侵害の防止・解消について消極的な姿勢に終始していたということができる。さらに,権利者から著作権を侵害する動画ファイルをアップロードしたユーザの登録情報の開示要求があっても,ユーザにメールアドレスの変更を勧めるなどして,権利侵害をしたユーザに対する責任追及を困難にさせる対応すら行っている。したがって,被告会社の削除措置は,著作権侵害の拡大防止のために十分な機能を果たしていたとは認め難い。
 
映画,音楽などの著作物を複製又は送信可能化する者は,著作権侵害を確信的に行っているものであるから,警告だけというような回避措置のみではほとんど有効性を期待できないところ,被告会社は,他に有効な措置を採ろうとした形跡が認められない。
 
(略)
 
【控訴人らの当審における補充主張について
 
控訴人らは,我が国に流通する音楽著作物の約99%を管理する圧倒的支配力及び交渉力を有するのみならず,著作権等管理事業法の適用を受ける点で公的側面を有する団体である被控訴人による権利行使には,平等な取扱いという制約が法律上当然に予定されており,本件サービスと同様のサービスを提供している事業者に対しては,適法な事業と認めて許諾契約を締結しながら,控訴人会社に対しては,明らかに不当な条件を提示し,契約を拒んだなどと主張する。
 
しかしながら,被控訴人は,他事業者に対しても,包括的利用許諾契約締結前の侵害分に関する損害賠償及び権利侵害防止措置の導入を前提とした上で,契約締結に至っており,本件管理著作物に係る著作権侵害に関しては,同契約締結によって,むしろ当該動画投稿サービスにおける利用が適法とされるものというべきである。また,被控訴人が,「ニコニコ動画」を運営する事業者に対して送付した利用許諾契約締結を求める平成19627日付け文書は,控訴人会社に対して送付された同日付け文書と同一内容であり,その後の交渉経過をみても,要求されている権利侵害防止措置は,控訴人会社に対して要請されたものと同様である。控訴人らは,控訴人Xしか担当者がいない控訴人会社の乏しい人的,物的資源においては,到底対応不可能な措置を被控訴人から求められたことに対する不満を主張しているようであるが,前記のとおり,著作権侵害の蓋然性の高いサービスを運営している以上,権利者から利用許諾契約締結の前提として,実効性のある著作権侵害防止措置を求められることはむしろ当然であって,控訴人会社が対応不可能であることをもって,権利者の要請が不当と断じることは明らかに相当ではない
 
また,控訴人らは,視聴者の大きな支持を受け,表現の自由及び著作権の目的である文化の発展に資するものであり,社会内にも受容されている動画投稿サービスに対しては,権利者も,プロモーション的価値を利用しようとするなど,権利行使することなく,黙示的に許諾を与えているものと解すべきであって,被控訴人による「教条的」権利行使は不当であるなどと主張する。
 
この点について,確かに控訴人らが主張するとおり,権利者がいわゆるMAD作品を擁護したり,動画投稿サービスと提携することもあるほか,我が国においては,いわゆる同人活動が活発であり,よほど極端ではない限り,権利者が黙認することもあるようである。
 
しかしながら,著作権侵害に対し,どのように対応するかは,各権利者の意思に委ねられているものであって,権利者の中に,権利侵害に気付きながら,権利行使しない者が一定割合存在することをもって,控訴人らが,被控訴人の権利行使を不当であると主張することは,明らかに相当ではない。実際,テレビ局などの権利者は,控訴人らが強調する動画投稿サービスにおけるプロモーション効果を利用することなく,削除要請などの措置を講じており,だからこそ,他の動画投稿サービスの事業者は,権利者との提携などを開始しているものということができる。
 
また,動画投稿サービスは,控訴人ら主張のとおり,自主制作動画を公開する場所を提供し,ユーザ同士の交流の機会を与えるなどの意義を有していることも否定できないが,本件サービスにおける侵害率などからすると,本来であれば無料では視聴できない著作物を,無料で容易に視聴できる側面を有している点にこそ,意義を見出す視聴者も多いものと推測される。そして,劇場公開中の映画を含め,多数の映画やテレビ番組が丸ごと投稿されているような状況においては,本件サービスが適法な利用を前提としているとする控訴人らの主張は,控訴人らの主観的認識ないし期待を述べているにすぎず,客観的には著作権侵害の蓋然性が高いサービスであるというほかない。著作権侵害を理由として責任を追及されている者が,当該侵害行為による文化の発展を理由に,著作権侵害行為の正当性を主張することは,明らかに相当ではない。
 
以上からすると,控訴人らの主張はいずれも失当である。】

◆結論

 
【以上からすると,本件サービスにおいて,著作権を侵害する動画を本件サーバに投稿する行為を実際に行っているのは,ユーザであって,控訴人らではない。したがって,ユーザが本件サービスに投稿する動画の中に,本件管理著作物が利用されている場合には,ユーザが当該動画を本件サーバに投稿する行為は,ユーザによる本件管理著作物の複製権侵害に該当することはいうまでもないところである。
 
しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。
 
しかるところ,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と,約5割に達しているものであり,このような著作権侵害の蓋然性は,動画投稿サイトの実態それ自体や控訴人会社によるアダルト動画の排除を通じて,控訴人会社において,当然に予想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていない
 
そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。
 
しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。
 
したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。
 
よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。
 
また,本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上,公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。
 
以上からすると,本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて,控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして,控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。
 
なお,控訴人らは,被控訴人が著作権を侵害したと主張した動画ファイルを控訴人会社においてすべて削除したから差止めの対象が存在しない旨を主張するが,本件差止め請求は,将来生ずべき被控訴人の管理著作物の利用の差止めを求めるものであって,現存する侵害ファイルの削除を求めているものではない。日々刻々と侵害が生じその対象の特定できない事情のある本件においては,著作物による差止め対象の特定も許されると解されるし,その対象となるファイルの範囲を本件サイト全体にわたるものとすることも相当というべきであり,控訴人らの上記主張は失当というほかない。
 
また,控訴人らは,著作物による差止め対象の特定は,包括的な差止めを認めるものであり,黙示の許諾のあるファイル,自作のファイルなど,多数の適法なファイルを実質的に削除させるのと同様の結論を導くことになり,動画投稿サイトが有する表現の自由及び著作権法の目的たる文化の発展にとっては萎縮効果が高いなどと主張する。
 
しかしながら,前記のとおり,本件管理著作物に対する黙示の許諾はあり得ず,自作のファイルにおいて,本件管理著作物を利用許諾なく利用していなければ,本件管理著作物の著作権侵害とはならないのであるから,差止めの対象は,本件管理著作物を利用許諾なく利用した動画ファイルを対象とするものに限定されるものであって,多数の適法なファイルが実質的に削除を余儀なくされるものでもない。控訴人らの上記主張は採用できない。】











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