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学術的文章の侵害性が問題となった事例(2)
「歯科学‘BBO理論’論文事件」平成140726日東京地方裁判所(平成13()19546 

 原告は,被告論文の対照表の部分につき,被告論文は本件論文を複製又は翻案したもので,被告論文を掲載した本件書籍の発行,販売は,本件論文の著作権及び著作者人格権を侵害するものであると主張しているところ,複製又は翻案が認められるためには,本件論文の表現上の創作性を有する部分が被告論文と実質的に同一であるか又は被告論文から本件論文の表現上の創作性を有する部分の表現上の本質的な特徴を直接感得することができなければならないと解される。
 
そこで,以下,対照表に従って,本件論文及び被告論文について上記の点を判断する。
 
文章の部分について
 
[照表1-1,2について]
 
本件論文と被告論文とが共通する部分は,「人間は直立して生活している」,「人間は直立二足歩行を行う」という部分であるが,人間が直立して生活していること及び直立二足歩行を行うことは自明の事柄であるから,そのような点が共通しているからといって,被告論文が本件論文を複製又は翻案したということはできない。
 
[対照表2について]
 
弁論の全趣旨によると,「咬合」は噛み合わせを意味し,「生理的」は一般的な形容詞であると認められるところ,「生理的咬合」は,これらを組み合わせた言葉であり,単語として1語に過ぎないことからすると,この言葉のみでは創作性が認められないから,そのような点が共通しているからといって,被告論文が本件論文を複製又は翻案したということはできない。
 
[対照表3について]
 
…によると,「咬合平面」とは下顎中切歯端と左右第二臼歯遠心頬側咬頭を含む平面を指す歯科学用語,「カンペル平面」とは外耳道下縁と鼻翼下点を含む平面を指す歯科学用語であり,歯列が正常な場合には,「咬合平面」は「カンペル平面」と平行になることが歯科学では一般に知られていたものと認められるから,そのような点が共通しているからといって,被告論文が本件論文を複製又は翻案したということはできない。
 
[対照表4について]
 
前半は,本件論文が「下顎体は筋肉によって吊り下げられている」と記載しているのに対して,被告論文では「下顎体は頭蓋骨より筋肉や腱によってぶら下がっているだけ」と記載しており,それぞれ繋がっているものにつき,「筋肉」と「筋肉や腱」,繋がっている状態につき,「吊り下げられている」と「ぶら下がっている」というように異なっている。後半では,本件論文が「常に地球の引力の影響を受けており」「ある一定の水準を保ちながら運動している」と記載しているのに対し,被告論文は「重力の法則に従い,絶えずそのバランスを一定に保とうとして動き」と記載している。以上のような違いがあることからすると,被告論文が本件論文を複製又は翻案したということはできない。
 
(略)
 
[対照表9について]
 
本件論文の「人間の体は,力学的なバランスの上に成り立っている。そのバランスが崩れれば当然様々な症状が歪みという形で現れる。」の部分と被告論文の「生体は…そのバランスが許容範囲を超えた時に,様々な体調不良となって現れます。」及び「身体がバランスを変えて対応しますので,その人の許容範囲であればさほど問題にはなりません。…身体と咬合のバランスが許容範囲を超えたときに身体の症状として現れることがあります。」の部分について意味内容が類似しているが,それぞれ対応する用語及び表現が「人間の体」(本件論文)と「生体」,「身体」(被告論文),「そのバランスが崩れれば」(本件論文)と「そのバランスが許容範囲を超えたときに,」,「身体と咬合のバランスが許容範囲を超えたときに」(被告論文),「様々な症状が歪みという形で現れる。」(本件論文)と「様々な体調不良となって現れます。」,「身体の症状として現れることがあります。」(被告論文)と異なっており,その余の部分についても共通している点があるとは認められないから,被告論文が本件論文を複製又は翻案したということはできない。
 
(略)
 
以上検討したように,被告論文の対照表の部分すべてにつき,被告論文は本件論文を複製又は翻案したものであるとは認められない。
 
なお,原告は,被告論文は本件論文と理論構成が同じであるとも主張するが,そもそも,学問上の理論それ自体は,著作権の保護の対象となるものではないし,上記で認定したとおり,表現が異なっているから,被告論文は本件論文を複製又は翻案したものであるとは認められない。











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