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表現行為に対する差止の可否
「ダスキン取締役会議事録等ネット公開事件平成171025日大阪高等裁判所(平成17()1300 

 1審原告ダスキンの名誉,情報プライバシー(人格権)の毀損に基づく差止請求の当否について
 
一般的に,表現行為によって,差止請求権を根拠付ける物権的な性質を有する人格権としての名誉,情報プライバシーが侵害されたとき又は侵害されるおそれがあるときに,表現行為の差止めが認められる場合があることは否定し得ない。
 
しかし,表現の自由の重要性に鑑みると,表現行為の差止めが認められるためには,単に当該表現行為によって人格権が侵害されるというだけでは足りず,当該表現行為によって,被害者が,事後の金銭賠償によっては回復が不可能か,著しく困難になる程度の重大な損害を被るおそれのあることが必要というべきである。
 
本件において,1審被告が1審被告サイトで本件文書1ないし11を公開したことによって,1審原告ダスキンは,前記のとおり信用を毀損されたものである。
 
しかし,本件文書1ないし111審被告サイトでの公開も一種の表現行為といえるから,表現の自由の重要性に鑑み,その差止めの可否は慎重に判断されるべきであるところ,1審原告ダスキンは,法的に保護されるべき利益としての信用を毀損されたものとは認められるが,その性質,内容,公開の態様及びそれによって1審原告ダスキンが被った信用毀損の程度等,とりわけ,本件文書1ないし11は,本件謄写許可申請事件において提出された1審原告ダスキンの代理人弁護士名義の意見書及び1審原告ダスキンの取締役会議事録であり,その文書の内容自体に1審原告ダスキンの社会的評価を低下させるような格別の表現がなされているものではなく,単に,本来当然には公表されるべきでない文書が1審原告ダスキンの意に反して公表されたという意味においてその信用を低下させるにとどまるものであること,また,1審被告による本件文書1ないし11の公開によって1審原告ダスキンの被った損害は,後記のとおり,金銭に換算することができ,その換算の結果等の事情に鑑みれば,1審原告ダスキンの被った損害は,事後の金銭賠償によっても回復し得る程度のものであると認められ,その性質上,これを差し止めなければ事後の金銭賠償によっては回復が不可能か,著しく困難になる程度の重大な損害を被るおそれがあるとは認め難い。他に,1審原告ダスキンが1審被告の本件文書1ないし11の公開により,事後の金銭賠償によっては回復が不可能か,著しく困難になる程度の重大な損害を被ったことを認めるに足りる証拠はなく,そのおそれがあることを認めるに足りる証拠もない。
 
したがって,1審原告ダスキンは,人格権としての名誉,情報プライバシーが毀損されたことに基づいて,1審被告による1審被告サイトでの本件文書1ないし11の公開(公衆送信)の差止めを求めることはできないものというべきである。
 
この点に関し,1審原告らは,差止請求が認められるために,当該表現行為によって,被害者が,事後の金銭賠償によっては回復が不可能か,著しく困難になる程度の重大な損害を被るおそれのあることが必要だとすれば,取締役会議事録の流出を事前にくい止める手段がないことになる旨主張するが,表現の自由は,民主主義の存立基盤をなすものとして極めて重要な位置を占めること,事後的救済といっても,実際には,損害賠償義務が認められ得ること自体によって事前にも一定の抑止効果を期待し得ること等を考慮すると,上記のような制約もやむを得ない制約というべきである。











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