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執筆契約に基づく付随義務の存否が問題となった事例
「『初動負荷』トレーニング理論事件」
平成170712日大阪地方裁判所(平成16()5130 

 原告Aと被告会社が本件執筆契約を締結し,原告Aが平成141月から平成1510月まで,被告会社の発行する週刊ゴルフダイジェスト誌に,初動負荷理論の紹介,自宅でできる簡易な初動負荷トレーニング方法の紹介・解説の記事を執筆し,被告会社が同記事を掲載して原告Aに対価を支払ったことは当事者間に争いがない。
 本件執筆契約に基づく原告A主張の付随義務の存否について検討する。
 
原告Aは,被告会社においては,その発行に係る書籍において初動負荷理論・初動負荷トレーニングに関する記事を掲載する場合に,@その提唱・実践者が原告Aであることを曖昧にするような表現をしないよう注意する義務や,A同理論・同トレーニングの内容を歪曲しないよう注意する義務を,本件執筆契約から生ずる付随義務として負うと主張する。
 
ところで,契約を締結した当事者は,その合意内容に従い,互いに契約の目的とした給付を実現する義務を負う。本件執筆契約の場合には,原告Aについては原稿を執筆する義務が,被告会社の場合にはそれを雑誌に掲載するとともに報酬を支払う義務がそれに当たる。そして,原告A及び被告会社が,このような給付義務によって実現しようとした契約利益を達成するために,給付義務の発生,履行及び消滅の全過程を通じて,互いに何らかの注意義務を信義則上負う場合があることは原告Aの主張するとおりである。
 
しかし,本件では,本件執筆契約に基づく原告Aと被告会社の執筆義務,掲載義務及び報酬支払義務は,原告Aの執筆に係る原稿が掲載された週刊ゴルフダイジェスト誌の平成1510月分までが無事発行され,原告Aに同執筆に係る報酬が支払われたことにより,いずれも履行されて消滅しており,それらの義務によって実現しようとした契約利益は実現されている。したがって,本件執筆契約に係る原稿の執筆及びその掲載を離れて,被告会社が原告A主張のような注意義務を信義則上負うとは認められない
 
もっとも,原告Aの主張は,本件執筆契約が前提とした契約利益の中には,本件執筆契約による執筆・掲載後を通じて,一般的に被告会社が原告Aが提唱し実践する初動負荷理論・初動負荷トレーニングに関してその独創性を尊重し保護することや,初動負荷理論・初動負荷トレーニングに関する原告Aの経済的利益を尊重し保護することも含まれているという趣旨であるとも解される。しかし,このような合意内容は通常の執筆契約における契約当事者の合理的意思から大きく隔たっている。一般大衆向けのゴルフ関係雑誌を発行するにすぎない被告会社が,今後の記事内容を制約することにもなりかねないこのような意思の下に本件執筆契約を締結したものとは考えられない。このことは,原告Aが請求原因で指摘する事情が仮に存したとしても同様である。したがって,原告A主張のような前提は採用できない。
 
以上より,原告Aが主張する付随義務はこれを認めることができないから,その余について判断するまでもなく,原告Aの債務不履行に基づく請求は理由がない。











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