著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示の利用許諾を認めなかった事例(4)
「日本舞踊振付著作権確認等請求事件」平成141226日福岡高等裁判所(平成11()358
 

【コメント】本件は、日本舞踊A流の創始者で、少なくともかつては家元の地位にあった被控訴人が、その長女で、いったん二代目家元の地位を継承すると公表された「控訴人a」及びかつて被控訴人からA流の名取及び師範の資格を与えられた「控訴人b」に対し、控訴人らは被控訴人にことわりなく同人が振付をした舞踊の公演をし、かつ、その際振付者を控訴人aであると表示したとして、著作権に基づく今後の上演禁止等を求めた事案です。 

 [著作権の譲渡ないし上演許諾の有無]
 
そこで,二代目家元襲名披露にともなって,従前被控訴人が有していた本件各舞踊ないしその他の舞踊についての著作権も譲渡されたか,少なくとも上演が包括的に許諾されたかについて判断する。
 
前記のとおり,被控訴人は,控訴人aの二代目家元襲名にともなってそのすべての権限を譲渡してはいない。むしろ様子を見ながら少しずつ権限を移譲していこうというのがその趣旨である。
 
してみると,著作権を譲渡することは自らはその権限を完全に失うことを意味するから,被控訴人がそこまでの意思を有していたとは到底解することはできない。
 
よって,二代目家元襲名によってはいまだ著作権は譲渡されていないと解するのが相当である。
 
次に,包括的に上演権が付与されているかであるが,本件全証拠によっても,控訴人aが二代目襲名披露公演後に被控訴人の了承なく独自で公演活動を行ったことを認めるに足りる証拠はない。また,控訴人aは,名取,師範の資格付与等A流における重要な意思決定を被控訴人と相談のうえ行っており,一人ではこれを行っていない。その儀式も両名の名で行っている。
 
控訴人aは,その理由を,母であり,A流の創始者でもある被控訴人を尊重し,同人を立てるためであったと供述する。
 
確かに,同控訴人の気持は十分に理解しうるし,その行動は穏健で,むしろ賞賛されるべき側面もある。
 
しかし,それは,裏返して言えば,被控訴人がいまだA流の組織内でそれなりの力を保持しており,反面,控訴人aは完全な権限を掌握するには至っていなかったことの証左でもある。
 
加えて,控訴人aは,平成○年○月に頭蓋骨骨腫の除去手術を受け,同○年○月にも頸椎骨骨腫の除去手術を受けたばかりで,精神的にも,肉体的にも,一人で組織を切り盛りしうるだけの充実した状態にはなかった。
 
してみると,平成○年ないし○年の段階では,舞踊の上演活動についても,控訴人aは独自にこれを行う権限までは付与されておらず,被控訴人の個別の了承が必要であったと解するほかはない。
 
以上によれば,被控訴人は,控訴人aに二代目家元を継承させると内外に公表した際に,同控訴人に本件第1,第2及び第4舞踊の著作権を譲渡していないし,包括的に上演を許諾してもいない
 (略)
 
[控訴人bに対する包括的上演実施権付与の有無]
 
控訴人bは,昭和○○年に名取の資格を,同○○年に師範の資格を授与された。
 
しかし,同控訴人は,発表会を主催する際には,必ず事前に家元に報告し,本部や他の師範等の協力を得ながらこれを行ってきた。
 
してみると,同控訴人が名取ないし師範の資格を授与された際に取得した権限は,被控訴人が著作権を有するA流の踊りをその弟子に教授すること及びそのために弟子の前でA流の舞踊を実演することにとどまっており,一般公衆の面前でこれを上演する包括的な権利までは付与されていない,これを行うためには被控訴人の個別の了承が必要であると解するのが相当である。











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