著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(14)-解約の有効性が問題となった事例-
「講談用脚本『はだしのゲン』上演差止事件」平成140828日東京地方裁判所(平成13()5685 

【コメント】本件は、原告が、講談用各脚本「はだしのゲンパート1」(「本件著作物1」)、「はだしのゲンパート2」(「本件著作物2」)及び「新釈四谷怪談」(「本件著作物3」)を創作し、著作権を取得したと主張して、被告(講談師)に対し、本件各著作物の上演の差止め等を求めた事案です。

 
本件では、次のような認定事実がありました。

昭和602月、原告と被告は婚姻したが、その後、原・被告間の夫婦関係は悪化するようになり、平成74月、原告と被告は、調停により離婚した。

平成76月、原告及び被告の間で、本件各著作物の上演について協議をし、原告が著作権を有する『はだしのゲン』『新釈四谷怪談』について、原告は、被告がそれを上演その他実演することを許諾すること、及び、被告が上演した場合は、毎年11日から同年末日までの間の上演日時、場所、主催者を翌年1月末日限り原告に書面で報告することなどの許諾条件が確認された。しかし、最終段階で、原告が、許諾の期間を1年間とし、期間満了3か月前までに原告から別段の意思表示がない場合は、更に1年間期間を更新するとの修正案を提案しため、明確な合意を形成することはできなかった。もっとも、被告は、原告から、平成12108日、上演許諾に関する解約通知を受けるまでの間、本件各著作物を上演し、毎年11日から同年末日までの間の上演日時、場所、主催者を翌年1月末日限り原告に書面で報告し、本件著作物1及び2については、上演1回につき1000円、本件著作物3については、上演1回につき500円を支払い、原告もこれを受領していた経緯がある。そうすると、原告と被告との間で、本件各著作物の上演許諾に関して交渉がされていた平成76月ころ、少なくとも、期間の定めのない本件上演許諾合意(原告の修正提案前の内容)が成立したと認められる

被告は、平成12年ころ、同11年分の上演に係る許諾料の支払を怠るようになった。また,平成128月号婦人公論に、被告が原告やその父母を中傷する内容を発言したインタビュー記事が掲載されたりした。

原告は、本件各著作物1及び2について、創作した当時有していた反戦反核の思想信条を変更したため、思想信条を異にする被告に上演させたくないと考えている。また、原告は、本件著作物3について、原作「四谷怪談」及び「お岩」に対して特別な思い入れを持っており、被告に上演させたくないとの心情を有している。

原告は、被告に対し、平成12106日付け書面及び同月19日付け書面で、本件上演許諾合意を解約し、各著作物の上演禁止を求めた。 


 原告,被告間に成立した本件上演許諾合意についての解約の意思表示は有効か、原告が本件上演許諾合意を解約する旨の意思表示をすることは権利濫用に当たるか、について
 
(略)
 
以上認定した事実を基礎にして判断する。
 
原,被告間に成立した本件上演許諾合意は,いつでも解約の申入れをすることができると解すべきであること,被告は,平成11年分の上演に係る許諾料の支払について,その履行を怠っていること,原告は,本件著作物1及び2を創作した当時に有していた著作意図や思想信条を変え,現在同著作物の上演を好んでいないこと,本件著作物3についても,被告との関係の悪化から,思い入れの深い同著作物を被告に上演させたくないとの心情を有していること,原告と被告は離婚していること等の一連の経緯に照らすと,原告が被告に対してした解約の意思表示が効力を有しないとすべき理由はない。また,本件訴訟において,原告が被告に対して本件各著作物の上演の差止めを求めることが権利の濫用に当たるとする理由もない











相談してみる

ホームに戻る