著作権重要判例要旨[トップに戻る]







脚本家と講談師の共同著作者性が問題となった事例
「講談用脚本『はだしのゲン』上演差止事件」
平成140828日東京地方裁判所(平成13()5685 

【コメント】本件は、原告が、講談用各脚本「はだしのゲンパート1」(「本件著作物1」)、「はだしのゲンパート2」(「本件著作物2」)及び「新釈四谷怪談」(「本件著作物3」)を創作し、著作権を取得したと主張して、被告(講談師)に対し、本件各著作物の上演の差止め等を求めた事案です。
 
なお、原告と被告とは、昭和602月に婚姻しましたが、平成74月、調停により離婚しています。 


 被告は,原告とともに,「はだしのゲン」の中で,原爆投下直後までの時期のゲンを中心とした場面に限定するという方針を立てたこと,前記A及びEのエピソードについては,特に,被告が原告に対して,選択するように意見を述べたことから,原告が単独で第1稿を創作したのではない旨主張し,被告陳述書には,これに沿う記載が存在する。また,被告は,原告が執筆した脚本について,被告が実演に当たり語りにくい部分,説明不足で分かりにくい部分,講談用の語りとしては不自然な部分を,原告とともに推敲し,講談用に演じやすい言い回しに修正したので,原告が単独で本件著作物1を創作したのではない旨主張し,被告陳述書には,これに沿う記載もある。
 
しかし,上記陳述書を除いて,これに沿う他の証拠は存在せず,被告の上記主張を採用することはできない。
 かえって,被告は,平成6年以前から,原告の許諾を受けた上で,本件著作物1をはじめとする本件各著作物の上演を行っていたこと,平成76月には,原告との間で,本件上演許諾合意を締結したこと,被告は,「女医レニヤの物語」を執筆したが,その著書の中でも,本件著作物1及び2について,原告が執筆したと記述していること,被告が,本件著作物1及び2について,自ら創作したと主張したのは,原告から本件訴訟を提起された後に至ってからであること等の事実に照らすと,被告の前記主張を採用することはできない。
 
のみならず,被告が主張するような関与があったとしても,原告が,原作を脚色した創作性の程度に比較すると,被告の関与は,アイデアの提供や助言や上演をする上での工夫にすぎず,それにより,共同で創作したと評価することはできない
 
上記認定した事実によれば,本件著作物1の第1稿は,原告が単独で創作したと認めることができる。そして,初演時脚本は,第1稿を講談としての上演にふさわしいように,若干の修正を加えたものであり,さらに,本件著作物1は,初演時脚本の言い回しの一部を修正削除したものであり,いずれも,第1稿と実質的に同一であると解される。
 
そうすると,被告が,本件著作物1に基づいて上演することは,原告が第1稿,初演時脚本及び原告著作物1について有する著作権を侵害することになる。
 
(略)
 
なお,付言する。
 
本件著作物1及び2は,被告が上演する講談の中で代表的な位置を占める。
 
ところで,本件著作物1及び2は,原告が,Nの原作「はだしのゲン」及び「はだしのゲンはピカドンを忘れない」に依拠して,そのエピソード及び場面の設定を選択,再構成し,原文の一部を生かしたり,新たな文章を書き加えたりして,創作した二次的著作物である。前記の経過から明かなように,本件著作物1及び2について原告が有する各著作権の範囲及び内容は,必ずしも広範なものではなく,二次的著作物である本件著作物1及び2において創作された表現をそのまま利用する場合及び直接感得できる程度に改変したものを利用する場合に限られる。仮に,被告が,二次的著作物を直接感得できる程度に改変するのではなく,専らNが著作した原作に依拠して,新たな講談用の脚本を作成した上で,これを上演するとすれば,当該行為は,本件著作物1及び2について有する原告の著作権に抵触することはない。したがって,上記のような試みをすることにより,被告の講談師としての活動が制約される不利益を回避することができると解される。











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