著作権重要判例要旨[トップに戻る]







磁気テープの磁性体配列パターンの著作物性が問題となった事例
「磁気テープ配列パターン事件」
平成120331日東京地方裁判所(平成11()13048 

【コメント】「本件磁気テープ」(フィルム表面は光沢があり、黒色を呈しているが、肉眼では何らの模様も見られない。)は、電子顕微鏡を使用すると、その磁性体の配置を見ることができますが、本件磁気テープの磁性体の配置を撮影した電子顕微鏡写真は証拠として提出されませんでした。そのため、磁性体の具体的な配置状況が全く不明な状況で、次のように判示しました。 

 本件磁気テープにおける磁性体の配列によって形成される模様が、「美術の著作物」に当たるか否かについて検討する(なお、本件において、原告は、美術の著作物に該当することのみを主張しているので、その点に限って判断する。)。
 
著作権法211号は、「著作物」について、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と規定する。
 
右規定の「美術」について、厳密に定義付けることは困難であるが、「空間や物の形状、模様又は色彩のすべて又は一部を創出し又は利用することによって、人の視覚を通じて、美的価値を表現する技術又は活動」を指すということができる。また、「著作物」として保護されるためには、思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である(ただし、この創作性に関しては、当該作品が独創性の発揮されたものである必要はなく、作成者の何らかの個性の表現されたものでありさえすれば足りる)。したがって、本件磁気テープが「美術の著作物」として保護されるためには、右のような各要素を備えたもの、すなわち、「思想又は感情を創作的に表現したものであり、かつ、空間や物の形状、模様又は色彩のすべて又は一部を創出し又は利用することによる人の視覚を通じた美的価値を表現したもの」であることが必要である。
 (略)
 
右認定のとおり、本件磁気テープについて、磁性体の配置によって形成される具体的な模様は、一切明らかにされていない(原告は、その主張においても、本件磁気テープにおける具体的な形状がどのようなものであるかを明らかにしていない。)。具体的な模様が明らかでない以上、本件磁気テープにおける磁性体の配置が「物の形状、模様又は色彩を創作又は利用して行う、人の視覚を通じた美的価値の表現」に当たると認定することはできず、本件磁気テープが美術の著作物に当たるとすることはできない。したがって、原告の主張は理由がない。
 
右のとおり、本件磁気テープの磁性体の配置によって形成される具体的な模様は明らかでないので、本件磁気テープが美術の著作物であると認めることはできないが、原告は、磁性体が「長手方向」と「斜め方向」の交互に配列されていることを前提に、右抽象的なパターン(個々の製品における具体的な模様と離れて)が採られていることを理由に、本件磁気テープは「美術の著作物」に当たると主張しているようにも理解されるので、念のため、この点について検討する。
 
…によれば、以下の事実が認められる。すなわち、
@ 本件磁気テープにおける磁性体は、「斜め(あるいは横)方向から徐々に垂直方向に向きを変え、反転するように横(あるいは斜め)方向に移行する」配列方法や「徐々に移行するような」配列方法が採用されている。結果として、本件磁気テープのどの製品にも、共通する特有のパターンが形成される。
A 右のような配列方法を採用したのは、製作工程を容易化できること、偽造や変造を防止するセキュリティ機能が優れていること、読取装置により正確に磁場の変化を読み取ることができること等、専ら技術的な理由に基づいたものであって、美的な観点から採用されたものではない。「横」「斜」「横・斜」「斜・横」の配列は、専ら、記録しようとした信号が何か(「0」か「1」か)によって必然的に決まり、他の要素(例えば美的効果)を考慮して、配列が決定されるということはない。本件磁気テープの需要者等が、磁性体の配列により形成される模様の美しさを考慮して取引をすることもないし、もとより、磁性体の配列模様を鑑賞することもない。
 
右認定した事実によれば、磁性体の右配列パターンによって、製作者のいかなる思想、感情も表現されていると解することはできない(右配列パターンは、産業上利用されるための磁性体配列に関する技術思想やアイデアにすぎない。)ので、本件磁気テープには「創作性」はなく、また、磁性体の配列パターンを、「物の形状、模様又は色彩を創出し又は利用して行う、人の視覚を通じた美的価値の表現」と解することもできないので、本件磁気テープは「美術」に当たらない。結局、本件磁気テープにおける磁性体が「長手方向」と「斜め方向」の交互に配列されているという抽象的なパターンを形成している点に着目したとしてもなお、本件磁気テープが「美術の著作物」に該当するとはいえない











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