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「素材」の収集における労力
「月刊誌『月刊ネット販売』事件@」平成220127日東京地方裁判所(平成20()32148 

 原告各図表が編集著作物といえるかについて
 
(原告図表1
 
原告図表1は,インターネットによる通信販売の実施企業について,年間販売実績(平成186月から平成195月までの間に迎えた本決算期のネット通販の数値)である「PC+携帯売上高(百万円)」,「増減率(%)」,「携帯売上高(百万円)」,「月間アクセス数(PV:万)」,「累積会員数(万人)」のほか,「決算期」及び「主要商材」を素材として選択し,「PC+携帯売上高」の順に,150社分を社名ごとにまとめて配列した図表のうち,1位から50位までの50社の掲載部分である。
 
原告図表1における素材の選択及び配列についての創作性の有無
 
…によれば,通信販売,通信教育,訪問販売の業界に限らず,特定の業界に属する個別企業や当該業界全体の売上高やその動向などの実態を把握するために,「売上高」,「増減率」,「決算期」,「主要商材」という素材を選択することは,一般的に行われており,ありふれたものと認めることができる。
 
また,…によれば,「PC+携帯売上高」,「携帯売上高」は,インターネットによる通信販売の事業を行っている企業にとって基本的な営業情報であり,インターネットによる通信販売の業界に属する個別企業や業界全体の売上高やその動向などの実態を把握するために,これらの素材を選択することは,一般的に行われており,ありふれたものと認めることができる。
 
そして,前記各証拠によれば,前記の選択した各素材について,各社の売上高に応じて順位を付して,売上高の大きいものから順に並べて配列することは,広く一般的に行われている配列であり,ありふれたものと認めることができる。
 
したがって,原告図表1における,前記の素材の選択及び配列は,いずれもありふれた一般的なものであり,これらに編集著作物としての創作性を認めることはできない
 
そして,被告図表1は,原告図表1の「前期実績」のうちの「PC+携帯売上高」及び「携帯売上高」並びに「主要商材」という素材の選択,50社分のうち上位30社分について,これらを「売上高」の大きいものから順に並べるという配列を利用したものであるから,被告図表1における原告図表1の利用は,原告図表1の編集著作物としての創作性を認めることができない部分のみを利用したものと認められる。
 
以上によれば,原告図表1についての原告の主張は,理由がない。
 
(原告図表2
 
原告図表2は,EC(電子商取引)上位150社の商品ジャンル別の売上高シェアを,「総合」,「衣料品・雑貨」,「化粧品・健食」,「食品」,「PC・家電製品」,「書籍・CD・DVD」,「通教」,「家具」,「その他」という商品ジャンルに分類するという素材の選択をして,全体の割合に応じて円グラフとして配列したものである。
 
原告図表2における素材の選択及び配列についての創作性の有無
 
…によれば,「衣料品・雑貨」,「化粧品・健食」,「PC・家電製品」,「書籍・CD・DVD」のように,これらの複数の商品を同一の商品ジャンルとして分類することは,一般的に行われており,ありふれたものと認められ,また,電子商取引において販売商品を分類するに当たり,「総合」,「衣料品・雑貨」,「化粧品・健食」,「食品」,「PC・家電製品」,「書籍・CD・DVD」,「通教」,「家具」という商品ジャンルの分類という素材の選択は,広く一般的に行われているものと認めることができる。
 また,…によれば,「上位150社」を素材として選択したことは,原告図表1に記載されたデータを含む…に掲載された150社分のデータをそのまま利用したものと認められるから,「上位150社」という素材の選択に,原告の個性が発揮されていると認めることはできない。かえって,…によれば,表示すべき対象企業が多数になる場合に特定の企業に対象を限定すること,特定の企業として売上高の上位企業のみを対象とすることは,一般的に行われている素材の選択であるから,原告図表2において「上位150社」を選択したことは,一般的に行われているありふれたものと認めることができる。
 
そして,…によれば,商品ジャンル別の売上高シェアを,全体の割合に応じて,円グラフにして配列することは,一覧性をもたせて分かりやすくするために,一般的に行われるありふれたものと認められるから,このような配列に,原告の個性が発揮されていると認めることもできない。
 
したがって,原告図表2における素材の選択及び配列は,いずれもありふれた一般的なものであり,これらに編集著作物としての創作性を認めることはできない
 以上によれば,原告図表2についての原告の主張は,理由がない。
 
(略)
 原告は,原告各図表が,原告が長年の実績と経験を基に相当の労力を費やして初めて取得することができるデータを,原告が独自の創意工夫を凝らして編集して作成したものであるから,編集著作物に該当すると主張する。
 
しかしながら,原告は,原告が編集著作物と主張する原告各図表に凝らしたとする「素材の選択又は配列」についての「独自の創意工夫」の具体的な内容について,主張立証するものでなく,前記において認定したとおり,原告各図表と同様の素材を選択し,原告各図表と同様の配列をした図表は,従前から数多く存在していることが認められる。そうすると,当該データの収集に相当の労力を要したり困難性が認められるか否かはさておくとしても,原告各図表自体は,いずれもありふれた一般的な素材を選択し,一般的な配列をしたものにすぎないといわざるを得ず,これらが編集著作物であると認めることはできない。
 
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
 
なお,原告は,原告各図表で使用したデータが,収集に相当な労力を伴うものであり,たやすく収集できるものではない旨るる主張するところ,仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得ず,原告の前記主張は,失当である。

【参考】「月刊誌『月刊ネット販売』事件A」平成220617日東京地方裁判所(平成21()27691/平成230322日知的財産高等裁判所(平成22()10059
 
別の事件(@の事件では、被告は被告書籍の販売元、Aの事件では、被告は被告書籍の著者)ではありますが、上記後半に関連した部分について、参考までに掲載しておきます。 


 (原審)
 原告は,各原告図表に著作物性が認められないとしても,各原告図表は原告が築き上げてきた信用と実績を元にして,膨大な費用をかけて通販新聞社と共同でアンケートを実施するなどして作成した原告の財産であるから,被告が本件書籍に各被告図表を掲載した行為は,原告の財産を侵害する不法行為に該当する旨主張する。
 
しかしながら,各原告図表が著作物として保護されるものではないことは前記認定のとおりであり,原告において,各原告図表の素材や配列方法を独占し得るものではない。
 
また,各被告図表は,各原告図表全体の体裁をそのままに写したものではなく,また,各原告図表が掲載された「月刊ネット販売」を出典元として明記した上で本件書籍に掲載されており,各原告図表の利用方法としても相当性を欠くものであるとはいえない。
 
したがって,被告が本件書籍に各被告図表を掲載した行為が違法な行為であるということはできず,原告の上記主張は理由がない。

(控訴審)
 当裁判所も,各原告図表は編集著作物(著作権法121項)に該当するとは認められないから,本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は各原告図表に係る控訴人の著作権(複製権)の侵害行為は当たらず,また,原告の財産を侵害する違法な行為であるということもできない…と判断する。この点に関する当事者双方の主張に対する当裁判所の判断は,下記のとおり付加・訂正するほかは,原判決…記載のとおりである。
 (略)
 なお,控訴人は,通信販売中,パソコン及び携帯とに限定した項目を中心として,横列(「増減率(%)」,「携帯売上高(百万円)」,「月刊アクセス数(PV:万)」,「累積会員数」,「決算期」,「主要商材」)を有機的に結び付けた図表は類例がなく,控訴人の創作性の表れであると主張する。
 しかし,通信販売中,パソコン及び携帯とに限定した項目を中心とした図表がこれまで存在しなかったとしても,インターネットによる通信販売を実施する企業において,「PC+携帯」の売上高(パソコン及び携帯電話を経由した売上高)や「携帯」の売上高(携帯電話を経由した売上高)が基本的な営業情報であることに照らせば,「PC+携帯」(パソコン及び携帯電話を経由した売上高)や「携帯」の売上高(携帯電話を経由した売上高)という項目を図表の中心として選定することは,特段の創意工夫なくなしうるありふれた発想に基づくものというべきであって,創作性があるとは認めがたい。控訴人の上記主張は採用することができない。
 (略)
 なお,控訴人は,各メディアの各図表は各特徴を有しているところ,それらの図表は控訴人の分類とは異なっており,この特徴こそが各作成者の創作性であるなどと主張する。
 しかし,控訴人作成に係る原告図表2と同一の分類が存在しなかったとしても,「衣料品・雑貨」,「化粧品・健食」,「PC・家電製品」,「書籍・CD・DVD」のように,通信販売の対象商品を上記のように分類することはありふれた発想であり,創作性があるとは認めがたい。控訴人の上記主張は採用することができない。
 
(略)
 
なお,カタログ通販事業者あるいはネット販売専業者の販売実績中の携帯電話による売上げを取り上げた項目選定は他に類例がないとしても,携帯電話がインターネットを利用する際に用いる主要な道具であり,通信販売を実施する企業において,携帯電話を経由した売上高,あるいはそれの電子商取引における割合(携帯通販占有率)が基本的な営業情報であることに照らせば,これらの項目を取り上げることは,特段の創意工夫なくなしうるありふれた発想というべきであって,創作性があるとは認めがたい











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